目覚めて迷子になる
目が覚めると辺りは暗くなっていた。
三日月の明かりが僅かに周りの情報を与えてくれる。
目に映るのは大きい木の枝。
周りを確認しようと首を動かそうとしたら
「イッタァァぁ」
今迄に味わった事の無い激痛が襲いかかり、 悲鳴をあげてしまう。
何が起きたのか理解できない。
視線を身体の方に向けると酷い火傷の身体。
HPゲージを見たら僅かに減っている。
このままの現状では拉致があかないので身体を無理やり起こす為に歯を食い縛り、 痛みに堪える。上半身が起き上がり、近くに見える幹に凭れかかる。
再びHPゲージを見たら半分まで無くなっている。
これ以上は動かそうとしたらHPが無くなりそうなので回復するのを待つ。
何故この様になったんだ?
…
……
………
あっ… 青い炎。
そうだ。 黒の組織と戦っていきなり青い炎が飛んできて逃げようとしてこのザマか…
激痛が襲いかかり歯を食いしばるが痛みが引く事はなかった。
この痛みは誰のせいだ。
誰のせいなんだ‼︎
黒の組織の青い炎を使った奴だな。
許さない‼︎ 絶対に許さない‼︎ 黒の組織にも同じ苦しみを味わらせて殺してやる。
絶対に‼︎ 絶対に青い炎を使った奴に苦しみを与えて殺してやる‼︎
少し経つとHPゲージは全快になり、 先ずは自分の状況を理解しようと身体を見る。
右半身の殆どが火傷になっている。
特に酷いのが白魔装飾の服から守られていない右腕と右足首より下の箇所だ。
2度熱傷状態で皮膚がボロボロになり真皮が見えている。
白魔装飾も焦げの跡が見受けられるが自動修復で修復状態なのだろう。 右足の初心者の靴は跡形も無い。
そこで疑問が浮かぶ。
HP自動回復は万全ではないのか?
怪我は一切治っていない所を見ると、ゲームの使用が少しだが分かったような気がする。
もしかしてHPゲージってのは生命力を表し、 それが尽きれば身体が耐えられずに死ぬんだろう。
それで痛み等が発生したらHPが減るのだろう。
僕はHPが回復すれば怪我も治るって勘違いしていたのか…。
治療魔法で治るだろうか?
呪文名は何だ?
あぁこれか…
歯を食い縛り左掌を右腕に添え
「キュアー」
掌から温かい光を放し、真皮の箇所がほんの少しづつだか皮膚が再生されていく。
「治療できてよかったぁ。」
MPバーを見たら1割ぐらい減っている。
MP消費量が凄いので、 休憩を挟みながら治療魔法を幾度も繰り返し、 酷い箇所は治る。
先ほどまでの激痛までとはいかないがまだ右半身が痛いので装備を一旦脱ぎ、怪我の場所を治療していく。
気づけば朝日が上がってきている。
治療は後は背中のみとなったが、困ってしまった…
手が… 手が… 届かない。
コレは困ったなぁ… どうしよう……
ラビホの町に治療魔法を使える人居るかなぁ……
今は諦めるしかないか……
装備を装着しようと思うがシャツと短パンがボロボロで初心者の靴に関しては片方が無い。
シャツと短パンと初心者の靴はアイテムボックスに入れる。他の装備を着用しこれで動けるようにはなったなっ。
枝から顔を覗かせ下を見ると地面が遠い。
「高いなぁ。 どんだけ飛ばされたのよ」
取り敢えず一旦枝に座り直す。
しかしここは何処らへんなんだろう?
森を北に歩いたらラビホまで着くだろうが、北がどの方向か分からない。
地球と同じ考えなら太陽は東から昇るからそれと同じと考えて良いのだろうか?
まぁ方角も分からないなら地球と同じと考えて行ってみるか。
森に進入した道を探したいけど、 黒の組織に遭遇したら不味いしなぁ…… 今のままじゃ確実に殺されるのが目に見えている。 魔法の一撃で死にそうになっているなんて話にならないなっ。
遭遇しないように行動しよう。
木の幹に両手両足を大きく広げ、力任せに降りていく。
背中の火傷がズキズキして痛い。
このまま力を抜き下に落ちたらもっと痛いので意地でも離さない。
やっとの事で地面に足をつけれた。
額には冷や汗が流れ出している。
火傷ってこんなにも厄介なんだなぁ。
魔法攻撃対策も考えないと。
それよりも今はラビホの町に向かうとしよう。
対策は落ち着いた時に考えよう。
日の出を右側にし、 そこから真っ直ぐ歩いていく。
あれからどれ位経っただろうか。
太陽は真上まで昇っていて、 何事も無く歩いていたのだか、 ガサガサと葉を動かす音がする。
音が鳴った方向を見渡し、 毛並みが紫色の狼が3匹いる。
狼は涎を垂らしながら、 グルゥゥゥと威嚇している。
襲われる前に先手必勝とばかりに、 左掌を1匹の狼に向ける。
「サンダー‼︎」
雷の魔法は狼に当たるが狼は倒れない。
他の2匹は左右に避けたので足に力を溜め、 前に飛び込む。
勢いをつけ過ぎたのか、 今までより早くスピードが出て、 転びそうになるが身体機能スキルのおかげだろうか転ぶ事は無く、狼のすぐそばまで着いてしまった。
しかし、 近づきすぎて抜刀できない。
抜刀できないのならば、 白雨の頭部分で狼の眉間を突く。
狼は後ろによろめき、 その隙に居合い抜きし、下から上に振り上げるように首元目掛けて放つ。
狼の首が跳ねあげ、 弧を描くように地面に転がる。
これで1匹は倒せた。
残りの2匹はと思うと左右から此方を目掛けて走って来ている。
「チッ面倒くさいなーもぉ‼︎」
狼2匹が同時に飛びかかり連携はいいみたいだな。
だがこんな所でやられてたまるか。
両手で白雨を強く握りしめ、 右側の狼を見て自分の攻撃範囲に入って来た瞬間に片足を少し浮かせて力一杯に振り切る。
浮いた片足を地面に力強く踏み込み、 腰を捻る。
右側の狼は顔半分を切断され左側の狼は首と身体が離れていた。
恐るべし野球のバッティングスイング。
3匹の狼は消え、 牙だけが残ったのでそれを拾い、アイテムボックスに入れ森の中を突き進む。
何時間も森をあるき遂に我慢の限界を迎えた。
「いつになったら森から出られるんだよー⁈」