念話と情報
「もしもし。 シマジロウだけど今ちょっと大丈夫かぁ? 」
なんだろう…何かあったのかなぁ?
「はい。 大丈夫ですよ。 どうかしましたか?」
「あぁ。 ラカ君がもぅ旅に出ていると思ってな。 ギルドの依頼で見たんだが、 黒の組織と言う危なそうなのがいる事を知らせたかったんだよ。 ラカ君なら心配なさそうだと思うが、 心配でな」
ギルド依頼にも黒の組織の事、 何かしら情報が上がっているだろうなぁ。
今度ギルドに行った時に聞いてみよう。
「大丈夫ですけど、 黒の組織にはまだ僕達は、 手を出さない方がいいと思いますよ。
僕も死にそうになりましたし…」
黒の組織の事を思い出すだけで、 青い炎使いを思い出してしまう。
「ラカ君‼︎ もしかして倒したのか?」
「倒してないですよ。 強い魔法使いに殺されそうになりました。 運良く生き延びれましたが、 今の僕がもう一度戦えば、 必ず殺されますね」
「ラカ君でも倒せないなら、 今のプレイヤーでは倒す事はほぼ不可能に近いか…
この情報を掲示板に上げてもいいか?
血気盛んなプレイヤーが、 下手に手を出して殺されるのを防ぎたい。
勿論ラカ君の名前は出さない」
僕からしたら、 青い炎の奴は僕の手で殺してやりたい。
しかし情報が何処まであるのか分からないし、相手の顔も分からない。
探し出せるかも分からないけど、 他の人に取られたくない。
掲示板に上がれば、黒の組織に挑む者も少なくなるだろう。
「僕の情報を出さなければ掲示板に上げてもいいですよ。
話が少し変わりますが、街を出て分かった事がありました。
HPと怪我は別々な事。 HPを回復しても、 怪我は治らないって事ですね。
怪我の痛みを感じたらHPが減りました」
「あぁ。それは既に掲示板に上がっていた。 ゴブリンと戦闘して腕を骨折した者がいてな。 その者はパーティーで行動していたらしいが、回復役にヒーラーを連れて行ったんだと。 骨折した者を回復魔法で治そうとしたがHPは回復したらしいのだ。 しかし腕の骨折は治らず、 慌てて走って、 街まで逃げたみたいなのだが、その者のHPが減少していたみたいだ。 原因は走って逃げる時、腕に負荷が掛かり、激痛に襲われていたらしい。
そんな事があって掲示板で話し合いが行われ、治療魔法と回復魔法が別々なのが分かった。
治療魔法は怪我を治せ、 回復魔法はHPを回復すると言う事が判明した」
掲示板を碌に見ていないから、 知らなかったのか。
プレイヤーが多い分、情報が回るのが早いのか。
キチンと情報収集をしなくてはな。
でも、 掲示板を見る癖がないので、 忘れていそうだ…
「そうですか。 やはり情報は力ですね。
あっ、教えて欲しい事があるのですが、 デバフを受けた時は表示とかあるのでしょうか?」
「あぁ。 デバフ表示はあるらしいぞ。
実際に俺は見た事ないがHPの左上に表示されるらしい」
状態無効を持っているから表示等があれば見る事はないだろう。
「やっぱりあるんですね。
僕は火傷をしたんですが、表示らしき物はなかったので、火傷はデバフでは無く、 怪我になるんですね。
ではデバフとは何なんでしょうね?」
これは知っとかなければいけないな。
「火傷はデバフじゃないのか… まぁ確かに怪我っちゃ怪我だわな。
デバフの種類かぁ… 俺は色んなゲームをしてきたが、 デバフってのは、 麻痺、毒、幻覚、誘惑、睡眠、とかじゃないか?
他にもあるだろうが、 この世界でそれがデバフだ‼︎っとも思わないが…
まだまだ分からない事だらけだな」
やっぱりまだまだ不明な点が多いな。
「そうだ。 ラカ君は色々知らなさそうな部分が多いから、一応色々分かった事を話すよ」
やっぱり僕は無知なんだよね。 否定出来ないなぁ。
「ステータスの防御力ってあるだろ?
あれはなぁ… 痛みに耐えらる力って言えば理解出来るかなぁ?
例えで上げれば、防御力が高い者に殴りかかるとする。 しかし防御力が高いので痛みが少ない。 痛みが少なければHPの減りが少ない。
しかし、 防御力が高い者に刃物で攻撃される。
そうしたら刃物は幾ら防御力が高い者でも切られる。
切り裂かれたら、 当然尋常じゃないぐらい激痛が襲いかかる。
その激痛が防御力が軽減し、痛みを和らいでくれる。
HPの減りは防御力が低いより高い方が少ない。
しかし、刃物で切れるって事は防御力が低い高い関係無く、刃物を通すので腕など切断出来るって事だ。
防御力が高いってのは、 痛みとHPの減少率を下げてくれるってだけだ。
そう考えると、 防御力とHPだけを馬鹿みたいに上げても、 頭や心臓を一突きで簡単に殺されてしまう。
間違えても防御力が高いからって、 調子に乗っていたら、 すぐに殺されてしまうぞ?
それと、 モンスターで、切れないのが今後出てくると思う。
それは何故切れないのかってのは、防御力が高いのでは無く、刃が通らないくらい表面が硬いだけだ。
人間の皮膚は切れやすいが、 モンスターの皮膚が硬ければ刃が通らないってだけだ。
刃物にも、良し悪しの切れ味があり、 鈍刀と名刀では切れ味が変わってくる。
例えば、 刃こぼれした包丁と、 新品の包丁では、 野菜を切る時の違いがあるのと一緒だな。
これまでの事を考えれば、 地球に居た時と似たような世界観だと言う事がわかったんだよ。
まぁ、 魔法なんて地球に存在していないからそこの部分は不明だがなッ」
この説明ではゲームで培って来た者はゲームの知識が邪魔をして、苦労するんだろう… その分、 違う分野でゲームの知識がメリットになる事もあるだろうけど。
「んー、 今までの事を纏めると、 防御力は痛覚軽減って事。
防御力やHPを幾ら上げようと、 急所でイチコロになるって事。
武器には切れ味等がある事。
モンスターには刃が通らないのが出てくるかもって事。
そして、物事はゲームであって、 ゲームではないって事だね」
まぁ纏めたらこんな感じだよね。
何か間違っているだろうか?
「あぁ。 そんな感じだ。
しかしラカ君は、何処を目指して旅しているのだ?」
「とりあえず、森で2ヶ月間ぐらい修業して、ラビホに向かってナルティアの都で何か探すつもりです」
「修業? 何かあったのか?」
シマジロウさん… 修業に食いつき過ぎですよ。
「んっとね… 実は森で迷子になりまして、 迷子になっていたら、家を見つけたんですよ。
そこで道を尋ねようとしたら、 スキルを教えてもらえるようになりました。
しかしスキル習得はかなりキツイですよ。
覚えれないかもしれないですし、 この森のグリグリズリーって熊のモンスターも怖いですし。 まぁ習得出来なくても仕方がないって考えてますのでいいのですけどね。
この事は秘密にして下さいね。
スキル習得は、その内、 掲示板に上がるでしょうから」
「まぁ掲示板には上がるだろうな。
なんのスキルを教えて貰っているのか教えて貰えないだろうか?」
「それは秘密ですね。 スキル情報を教える訳にはいきません」
「それはそうか。すまないな。
では、何かあれば又念話するよ」
「お願いします。 それでは失礼します」
念話を切り、 ついつい長話しをしてしまい、 逆上せそうになっている。
急いで五右衛門風呂を出て、身体を拭き、着替えて家に入る。
「結構長居してたじゃねぇか。
五右衛門風呂は最高だっただろ」
アロハさんがにこやかに五右衛門風呂の事を自慢してくる。
「はい。 森で五右衛門風呂は贅沢すぎます。 念話で少し話過ぎて、待たせてすみません」
頭を少し下げ
「いやいや、いいんだよ。 これから毎日入れると思ったら嬉しい限りだしなぁ。
それより早く飯を食え」
ゲッ… もしかして毎日、 五右衛門風呂の準備をしなければならないのか…
トボトボ歩き、食事をするのであった。




