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五右衛門風呂

家に着くとアロハさんを見つけ、 キノコを取り出そうとするとアイテムボックスのキノコの名前が???になっている。

キノコを取り出すとアロハさんに渡そうとすると怒鳴られる。


「馬鹿野郎。 これは食用キノコじゃない。 ポイズンマッシュルームって言って、 食べれば毒を受けてしまうキノコなんだよ。

まぁ食べられないけど商人には売る事が出来るから捨てるなよ。

他に食べ物はないのか?」


ポイズンマッシュルームって言うのか… 食べられそうにないのは分かったが、 そんなに怒鳴らなくてもいいじゃないか。


次に熊のステーキ肉1つと黄色いキノコ3つを渡す。


「今日収穫出来たのがこれで全部です。

途中グリグリズリーに遭遇して倒したら陽が沈みそうなので戻ってきました」


実はキノコ採取に時間をかけ過ぎた事は言わないでおこう。


「そうか。 グリグリズリーと戦闘してたのか。 坊主1人で倒したのか? やるじゃないか。 グリグリズリーってのはここら辺じゃPTで討伐するモンスターなんだがな。

坊主のレベルはいくつだ? 」


質問された直後に気づいたが、レベルの事をすっかり忘れていた。

慌ててステータス画面を開き自分のステータスを見る。


名前 ラカ

年齢 15才

種族 妖狐

LV 20

HP 940

MP 780

力 128(+35)

防御力 130(+390)

素早さ 137(+411) (−100)

賢さ 129

運 39

Point 140


ってなっていた。


目を見開き、 自分のレベルが倍になっている事に驚愕する。 しかし素早さの最後のマイナスはなんだ?

…あっそうか足のウエイトのせいか。

こんなので−100も落ちるとかこれは呪い装備なのかと思ってしまう。


暫く考えていると、 アロハさんが不思議そうに待機している。

別にレベルを隠す必要もないので素直に答えた。


「今、 自分のステータスを見て驚いていました。 今のレベルが20になってます」


アロハさんは顎に手を当て関心している。


「ほぅ。 その年でレベル20にもなっているのか。 頑張っているなぁ。 しかしレベル20でグリグリズリーを1人で倒せるもんなのか。 余程戦闘勘が凄いのか、それとも強力なスキル持ちかって事だな」


そんなにグリグリズリーって強いのだろうか?

確かに熊なんて1人で倒すのも怖いし、 相手にもしたくない。


「ちょっと疑問に思うのですがグリグリズリーを倒すのに大体どれ位の実力がいるのですが?」


素直に教えて貰った方がいいだろう。


「あっ? そうだなぁ。 大体だが、 冒険者の5人組のパーティーで討伐するな。 平均レベルが19もあったら倒せる。 しかし油断したら全滅する位だな。

それを坊主は1人で倒したんだよ」


ちょっと待て。 そんなのあり得るのか?

確かにここの人達より僕達プレイヤーは強い。 精々2、3倍ぐらい強いってのは説明された。 って言うか、 この人は悪魔か?

パーティーで倒すモンスターを食料としてのヒントで上げるなんて。

もしかしてタイキングも強いのか?


「食料の調達でパーティーで倒すモンスターを伝えるなんて…

アロハさん、 貴方は鬼ですか?

もしかして、 タイキングも強いんですか?」


アロハさんは何が面白いのか笑い上げ


「ギャッハッハ。 普通グリグリズリーの強さを知っていると思うだろう。 情報を疎かにしている坊主が悪い。

まぁ倒せたから問題ないだろ。

タイキングとキノコは安心せい。

ちゃんと安全を見越して出している。

ただ坊主が先にグリグリズリーと遭遇すとは思っても見なかったがな」


アロハさんを睨んでいると馬鹿らしくなる。


「それではタイキングと言うのは比較的に弱いモンスターなのでしょうか?

タイキングって名前からして王様なんでしょう?」


「悪い悪い。 つい面白くて笑ってしまったわ。 タイキングって名前の由来だがなぁ…倒したら必ず鯛が取れるからタイの中での王様って勝手にギルドが着けちまった名前なのさ。 タイキングの討伐平均は冒険者のレベル15で倒せるぐらい弱い。

だから坊主がタイキングを倒してくると思って見送ったのだが、 まさかのグリグリズリーと遭遇するなん……プッハハハ」


又笑い出したよ、 この人は。


タイキングは普通に倒せそうだな。

今日はもぅ疲れた。 お風呂に入りたい。


「すみません。 お風呂って何処でしょうか?」


「お風呂は外にあるぞ。 ちょっと来い。 」


アロハさんの後ろを付いていくと、 外に鉄の大きな半球体がある。

これがもしかしてお風呂か?


「どうだ。 立派な五右衛門風呂だろっ。

これに入ればスッキリするぞ。

まぁ自分で火を焚き、 水を入れて使うなら使わしてやる。

まぁ1番風呂は譲ってやるよ」


絶対に自分で用意したくないだけだろ。

まぁお風呂に入れないのは嫌なのでやってやるけども。


「分かりました。 薪は勝手に使って良いんですか? 後、 水は何処にあるんでしょうか?」


「薪は使った分だけ坊主に薪割りして貰うから存分に使うといい。

水はそうだなぁ… 水関係の魔法覚えているか?

覚えていないなら湖から運ぶしかないわなぁ」


はぁっ⁈ 湖から運ぶとか無理だろ‼︎

何かいい方法はないか…


「あの…薪割りは別に構わないのですが、 湖から水を運ぶのはちょっと無理があると思うんですが…」


「いけるぞ。 このポーションなどの空ビンに水を詰め込む。 これを600本でちょうどいい容量になる。 案外いけるだろ?」


「アホなんですか貴方は。 600本も水を入れるなんて時間がかかり過ぎるでしょ‼︎

貴方は風呂に入る為に毎回そんな事をしているのですか?」


600本の数字についつい突っ込みを入れてしまう。


「そりゃぁ面倒くさいけど森に住んでるんならしょうがないだろ。 他にいい方法もないし、 水魔法を持ってりゃぁ楽かもしれないが水魔法なんてない。 森の中でお風呂なんて贅沢過ぎるんだ。 楽をしたいんなら湖にでも入ったらいい。 それでも、 如何してもお風呂に入りたいから1週間1回はこの作業をしている」


アロハさんはそこまでしてでもお風呂に入りたいのか。


何か方法は……

生活魔法で水を出せたはずだよね?

もしそれが出来れば凄い楽が出来るよね?


「あのぉ、 生活魔法で水を出すとかは出来ないのでしょうか?」


「生活魔法は持っているがMP枯渇になるぞ? あの魔法は1秒間にMPを使うんで全然割に合わない。 生活する分にはいい魔法なのだがなぁ」


これなら出来るかも。

生活魔法のスキルレベルが上がれば何が出来るのだろう?


「生活魔法を極めるとどうなるんですか?」


「生活魔法を極めた者は俺は見た事ねぇなぁ。 そもそも覚えている者は主婦層やメイド等と言った家事をする者が多いはずだが、まぁあったら便利な魔法だけど、 習得している人は少ないはずだぞ。 その理由が生活魔法の習得の仕方が未だに分かっちゃいない。

だから習得者が少ないんだがな。」


極めた者を見た事ないのかぁ…

習得者も少ないっと。


「まぁ大体分かりました。

僕、生活魔法持っているので五右衛門風呂に水を出しますね」


「だから生活魔法は燃費が悪いと言っているだろうが…」


アロハさんは不思議そうにしているな。


「まぁ多分大丈夫なので、 今日はお風呂に入れると期待してください」


ラカは五右衛門風呂の端に登り、 右手を突き出す。


生活魔法をどうやって使ったっけなぁっと考えていると頭に生活魔法の使い方が思い浮かぶ。


「出でよ…水」


呪文らしからぬ言葉を言い終わると同時に右掌から水が出るわ出るわ。

まさしく右手が水道。

呪文が蛇口の栓代わりなのだろうか?



水を出し続け1時間が過ぎた。

やっと入れるぐらいの水が溜まったな。


「時間かかり過ぎ…

これから火を入れ温めるなんて、 お風呂に入れるのにどんだけ時間掛かるんだろう」


アロハさんは水を出している事に始めは感心していたが、5分も経たずに家に帰ってしまった。

1人で、ただただ水を出し続けていたのだ。


薪を集めて釜戸に放り投げる。

今度は生活魔法の火を使ってみよう。

薪を左手に持ち、右掌を近づける。


「燃え盛れ…火」


人差し指の先からライターの火力と同じぐらいの火が出る。

手がチャッカマンに変わった気がした。


薪に火を当て約2分。

やっと薪に火が灯った。

それを火が消えないように釜戸に突っ込み、燃え移るか様子を伺っていた。


火を入れてから20分、 やっとお風呂に入れる。


アロハさんに体を拭く物を貰いに行く。


「お風呂が炊きました。

今から入るので、 体を拭く物を下さい」


「本当に風呂に入れるとはな。 ほれ、 コレで拭きな。

俺はご飯の支度でもするから入ってきな」


白い布が放り投げられた。

それをキャッチし、 お風呂に向かう。



全身マッパ状態でいざ五右衛門風呂に浸かる。


「おぉ。 気持ちいい〜。

これは確かに贅沢だなぁ。

ハァァ。 2ヶ月間もここに生活する事に不安もあったが、 このお風呂でその不安も飛んで行くなぁ。

あ〜極楽。 極楽」


お風呂を堪能していると


チリチリチリーン


頭の中に響き渡る。

この音は…あっ念話かぁ。

念話に出たら、 色々な事が分かった。


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