マジかよ・・バトルかよ・・
なんだかゴスロリっぽい少女になってました?
うん。確かにそうなのだ。
頭から足の爪先まで黒一色。フリルや装飾が華美に施されているのに下品に見えない漆黒のドレスに、人形のように触れたら折れてしまいそうな華奢な手足に視線を奪われる。身長は150センチあるか無いか。今の俺が子供に戻ったせいでそれでも年上のように見えるが、人間で言ったら14、5才って所かな。黒く艶のある髪は襟足の辺りで綺麗に切り揃えられ、その持ち主である可憐な少女の肌は新雪のように白かった。
何故だ。まったく対極に位置するであろう邪悪な魔窟オーラからこんな素敵ゴスロリ少女が生まれてしまったよ。
まったく。恐ろしい程に美味そうな展開だな。
どうせアレだろ。魔窟オーラが成長して…、
あれ?俺のオーラが消えて・・る?絶対無敵のスーパーチートの魔窟オーラどうした!?
か・・解析、とりあえず解析!
名前 ケイ タカラ
種族 魔窟アンデット
称号 魔を従えしモノ
魔窟に魅入られしモノ
年齢 5
レベル 7
HP 2700
MP 2100
力 55
知力 170
魔力 890
耐力 90
速さ 1050
特殊 700
備考 魔窟Lv2(従魔精製・魅了)
ほむ…。なんとなく謎が解けたかもしれん。
纏ってたオーラが無くなったのに反してステータス上では魔窟効果は無くなってないし、精製ということは…。
「初めましてマスター。マスターに創られし従魔ネロと申します。以後お見知り置きを」
「…お、おう」
やはりか!ついに自分の従魔が!いや展開早すぎて遂にも何もないんだけどさ。
順調にアンデッド化も進んでるし…。
それにしてもなんだろ?エラルドのきっしょい手下をぽいぽいやっつけたり、エラルドん家に居候する間に適当に近場でモンスター狩りみたいなことしてたけどそこでレベル上がってたのかな?
備考の欄までレベルアップしてるし。いやっほう!チート万歳!
「ケイさま!何か凄い気配がしたのですが大丈夫ですか!?」
「ケイ!大丈夫カ!?」
慌てて8本のメタリック調の甲殻な足をゴゴゴと蠢かせながら駆け寄ってくるホルンさんと、魔獣形態の三つ首で眼光だけで敵を射殺してしまいそうな程ヤバイ視線で周囲を威圧しながら走り寄るヴィアド。ああ、何か凄いいい奴だなこいつら。2人?共このネロって子を思いっきり威嚇してるし。
「ケイ様ァアァァ!!おのれ…何奴だ貴様!喰らえ!」
俺がほっこりしてると、いつの間にかネロの背後に回り込んだであろうエラルドが普段は見せないような真剣な顔で掌に練り込んだであろう強大な魔力をネロに向かって解き放つ。
どごーーーーーん!
やたら凄い音がしたからこれは「スマソ、誤爆;;」じゃ済まないぞきっと。
…にしてもエラルドもあんな一面もあったんだな。
ん?なんでこんなに俺が落ち着いてられるのかって?
「マスター?今のは一体?」
エラルドの放った魔力爆発の煙が晴れると、そこには傷ひとつ負ってないネロが立っていた。
俺が普段やってたみたいにネロの身体の周りには黒いオーラが薄く膜のように張られていて、そのオーラが衝撃や魔力を尽く無力化したようだ。全く魔窟オーラは恐ろしい。
唖然とするエラルドに、ネロが視線を向ける。
先程と変わらず無表情のままだが、何だかとてつもなく嫌な予感がしてきた。
ブオンと地に響く様な轟音と供にネロの周囲を覆っていたオーラが拡散し、その粒子の1つ1つがまるで意思を持っているかのように一斉にエラルドに襲いかかる。…が、咄嗟に俺がエラルドの元に駆け寄って無理矢理ネロから距離を取らせたおかげでネロの攻撃は空打ちに終わる。
多分あのオーラの霧に包まれたらエラルドは一瞬で解体されていただろう。
変態だし、キショいし、オツムの方も心配だけど1月もの間文句も言わず俺の世話を焼いてくれたエラルドにもさすがに多少の情は沸いている。目の前でこいつがミンチになるのを見るのは忍びない。
…が、そこでエラルドの何かがキレたらしい。おいおい。
解析で見た感じだとまぁまぁの実力はあるが俺には及ばないし、連れてる配下のビジュアル面を除けばさして脅威にはならないと思ってたのだが、今のこいつは何かヤバイ。さっきのネロに感じたのと同じ位ヤバイ。
いつもの余裕のある妖艶な笑みは消え失せ、獣のように猛り狂うエラルド。その咆哮に呼応するようにエラルドの周りに怨念のようなもやもやが出てくる。その1つがエラルドに向かって飛び込むようにぶつかる。受けたエラルドの身体に入り込むと先程入り込んだモノがエラルドの腕の辺りから憤怒の表情で浮き出てきた。それを切欠に次々とエラルドに取り込まれていく怨念達。身体のあらゆる所から、歓喜、悲壮、などの様々な表情の怨念が無数に顔を出し、この前連れていた配下に引けを取らない位エラルド自身も歪んでいく。
相変わらずの無表情のネロだったが、指先に光のようなものを収束し、核熱の如く小さな球体をエラルドに向かって解き放つ。当たったら確実に細胞が壊死してしまうような高温の珠体だったがエラルドの身体から生える顔の1つ、狂ったように笑いをあげる顔が攻撃が当たる瞬間にそれを飲み込んだ。さすがにあまりの熱量に耐えられなかったのか、徐々に蒸発しているのだがその間も不気味な笑い声をあげている。
次の瞬間、その隣にあった放心したような表情の顔の口からネロに向かって酸のようなモノが飛ばされる。
俺でも嫌な感じがしたのだ。ネロも表情こそ変えなかったがエラルドを警戒したのか酸を避けて距離を置いた。
「マスター、何故その魔人を助けたのですか?危険です下がっていてください」
「ぅおぉぉうぁぁぉおガァアァアアぁ!!」
もう完全にエラルドは理性が飛んでしまっている。ネロの方はまだ情報が少なすぎて分からないが、戦う気満々に見えるしアレは収まるものでは無いと見た方が良いだろう。
静と動。もはや俺でもこの2人を止める事は出来ないんじゃないだろうか。
ヴィアドもホルンさんも突如現れたネロという存在に対して臨戦体勢を解いていない。
ヴィアドは三つ首からそれぞれ強大なエネルギーを放出し、それを身体に纏わせて強大な魔力を感じるし、ホルンさんはなんかグロいとかそんな言葉じゃいい表せないようなヤバイ感じに変形してるし。
もはや俺でもこの場を収束させるのは難しいかもしれない。
まさに一触即発と思われたその時。
急に周囲の重力が歪んだ。
と同時にエラルドが取り込んでいたであろう怨念達が一斉にエラルドの身体から抜け出し、まるで操っていた糸が切れたようにエラルドが倒れた。ネロの方も先程まで練り込んでいた莫大なオーラが一気に雰散し、ガクリと膝を付く。
「神同士が戦うような強大なエネルギー感知したから急いで来てみたんだけど、まさかケイくんがここにいるとは思わなかったよ。せっかく平和な所まで送ってあげたのにどうしてこんな状況になっちゃうかなぁ?」
困ったようにこちらに視線を向ける整った顔。その2つのたわわなぴーちメロンはまだ記憶に新しい。
状況が変わるのが急すぎて俺も対応しきれなかったが、その真紅の両眼が怪しく光ると急に力が抜けて来る。
「全く、何考えてこんな危険な場所ばっかり選ぶんだろうね?」
そこには俺の中の暫定チョロイン&揉みたい果実NO.1であるアシェラトさんが呆れた顔で立っていた。
やったよ!見捨てられた訳じゃなかったみたいだよ!






