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危険なお姉さん

 村を探す予定がなぜかエラい所に来てしまった。





 話は昼間まで遡る。

 ヤギを実食し終え、満足感に浸りながら気持ちよく草原を歩いていた訳だが、いかんせん見渡すかぎりの大草原である。

 最初はのどかで平和な風景だと自然を楽しむ余裕もあったんだが、ずっと同じ景色が続いてはさすがに飽きてくる。


 そろそろ人恋しくなって来た頃だし、

 なんとかして未だ見ぬ異世界のハニー達にいち早く邂逅すべく頭を捻ってみた。



・オーラは欲望に忠実に動く

・伸び縮み可能

・特にMP消費などの疲労感は無い



 この3点から導き出された俺の考えとしては…、



 まず自分の周囲を円形にオーラで包んでみる。

 せっかくのプリティな美少年が魔窟パワーで禍々しく歪んでいるがそんな事は気にしてられない。


 次にグルグルと回る回転運動をイメージ。

 これには意外と手こずった。

 回転と欲望が上手く結びつかないのだ。

 仕方がないから前世で身近なものだった回転寿司のレールを想像する。

 あれにキレイなお姉ちゃんが乗ってくるくると回ってくるイメージだ。

 花びら大回転。よし!回転は至高!なんかイメージ出来てきたぞ。


 最初はボウリングのボールが転がるように自分の周囲のオーラが回転して進むようなものを考えていたのだが、試行錯誤の果てにオーラをいじくり回して出来上がったのは、身体全体は丸くオーラに包まれているのに腰まわりから下のみが凄い勢いで横回転をするというかなり不思議なモノになった。

 アレだね、コマだね。ベーゴマだね。あんな感じ。せっかく妄想をひねり出して出来た移動手段だ。これを使わない手はない。




 勢いよく下半身のオーラを回転させ、いざ出陣!


 花びら大回転が効いたのか予想以上に勢いが着いたみたいでエラい事になっている。




 ブオォオオン・・と静かで重い低音を響かせながら、もんのすげえ回転により摩擦抵抗がほぼ無くなった下半身が結構なスピードで地面を滑って行く。ゲームとかでは馬車や飛空艇など様々な乗り物や移動手段があるが、自分の下半身を高速回転させて進む主人公はかなり斬新なんではないのだろうか。




 そして更に想像の斜め上を行く事態が発生する。



 回転は留まる事を知らない。

結論から言おう。俺は今空を飛んでいる。

 

 


 あまりにもスピードに乗りすぎた下半身はベーゴマから竜巻へと形を変えた。

 オーラの先端がびゅんびゅんと風を切り、颯爽と草原を駆けている中、ちょうど丘のようにこんもりと盛り上がった地形の上を通り抜ける際に勢いがあったためか、ジャンプ台の要領で跳ね上がりそのまま着地する事なく飛び上がってしまった。


 空系の移動手段は物語も終盤に差し掛かった頃にようやく登場するものであろう。こんな序盤からいいんか?本当にいいんか?いいんだろうなきっと。魔窟オーラを手にした時点でほぼバランス崩壊してるしね。

 疲れないし、足をくねくねヒネるだけで方向転換や高度やスピードの調整も出来るみたい。

 便利過ぎるな魔窟パワー。



 


 おー、飛んでる飛んでる。呑気に考えながらまったりと飛んでいたのだが、しばらく飛んでいた所で遠くの方に何やら人だかりが見えてきた。


 いきなり空からこんにちはでは相手方も驚いてしまうだろうし、それに何より魔窟オーラを見られたら危険だ。

 前世ならR指定間違いない。それ位なんというか毒々しい感じなんだよね今の俺。いや、ビジュアルはサイコーなんだけど危ない人って思われるの嫌だし。

 もし俺が歩いてて空から下半身竜巻化した人外が降りてきたら逃げ出さない自信は無いし。おションションがプッシャーしてまうよ。

 見つかって悪目立ちしてしまう前に一旦地上に戻ろう。

 器用に下半身を捻り無事に目立つことなく着地を成功させて、歩きながら前方にいた人だかりに向かって行く。









 ・・・結論。人だかりは危ない集団だった。


 目視出来る辺りまで近づくと、その異様さに魔窟な俺も思わずビビって立ち尽くしてしまう。










 人間を何人か集めて、パーツごとにバラバラにして無理矢理もう一度組み立てる。小さな子どもが作った出来の悪いプラモデルのような形と言えば可愛く聞こえるかもしれないが…、

  

 何人分かの足を連結させ、異様に長く歪んだ形の足が6本。

 ただでさえ凶悪なフォルムが、足の繋ぎ目に埋め込まれた顔や、ムカデの様に足を胴体としてそこから這い出てきたように別々の方向に生える無数の指で余計におぞましさを増している。

 その長い6本の足の付け根、胴にあたる部分にはいくつも肥大した心臓が埋め込まれ、そこからチューブのように伸びた管が足にある恍惚とした表情の顔に繋がっている。そのまた上に視線を送ると、またもや6本の無理に繋ぎ合わせた異様に長い腕が生えていて、腕の途中には乳房や性器のようなものも見て取れる。

 そんな化け物の集団が、まるで蜘蛛のようにカサカサとこちらに近づいてくる。しかもなんか動き早いし。

 まぁ要するに最悪にグロいって奴だ。

 

 ん?先頭の奴だけなんかおかしい。他の奴らは首から上の顔にあたる部分は存在せずクリーチャー丸出し。その他もろもろも色々丸出しなのだが、そいつだけは首から上に人間が座れるような台座が付けられ、その上に乗った人間?が悪意丸出しの濁った笑顔でこちらを見つめている。なんだこのバ○オハザード。ファンタジーと思って油断していたらサバイバル・ホラーでしたなんて落ちはいらんぞ。

 


 

「ククク・・、可愛い坊やだねぇ。なんで一人でこんな所を歩いているのかな?」




 丸出しゾンビの司令塔か何かか?

 上に乗った奴が何か言ってる。

 ん?よく見るとこいつ表情がヤバすぎて気付かなかったけど結構いい女だな。妖艶なお姉さんキャラって奴だ。手に持った扇子がまたいい味出してるわ。ただいくら見た目がよくてもこんな危なそうなのは俺は嫌だなぁ。




「ん?やっぱり坊やも私のペット達が怖いの?でも安心して。すぐに坊やも私の可愛いコレクションに加えてあげるわ」




 えーと。あんま見たくないけど…とりあえず解析かな。







名前   エラルド・クレア・カイジェリーナ



種族   魔人



レベル  125



HP    670

MP    940


力     62

知力    95

魔力   251

耐力    24

速さ    56

特殊     8



称号   殺人大好き

     ヒトコロスイッチ

     サイコさん

     

備考   処女








 魔人だかなんだか分からんがステータスとかどうでもよくなる備考欄。

 処女か!処女なのか!でもサイコさんは嫌だな。

 あんなヤバそうなのに乗って完全に俺の事下に見てるから最初はちょっとビビったけど。俺より弱いし?

 とりあえず俺はグロは嫌いだ。怖いもん。処女の癖にビビらせやがって!いや、俺も童貞だけど。



 このままだとペットにされるみたいだし。

 よし、童貞こじらせた魔窟パワーでも見せてやるかね。

 解析超便利。オレサマ、アイツ、ヤッツケル。ふん雑魚いと分かればちょっと位ビジュアル怖くても俺の敵じゃないぜ。おそうじでござる!








 もわもわ…もわもわ…







 触れたら吸収だけど、あんなヤバそうなの吸収するのも嫌だし。とりあえずこれ飛び道具みたいにオーラ飛ばしたり出来ないもんかね?

…おっ、なんか出来た。






「ん?何かしらその煙みたいな魔法は?大人しくしてれば可愛がって…、ってちょっと!」





 飛び出した魔窟オーラがヴァージニア魔人さんの乗ってるグロい何かに直撃すると、

 なんということでしょう!オーラが当たった箇所がキレイサッパリ消滅してます!


 俺ポカーン。魔人さんポカーン。





「…うそ?え?嘘でしょ…?」





 ところがどっこい・・嘘じゃありませんっ・・! 現実です‥‥‥! これが現実っ・・!ざんねーん・・・!クキキキっ・・・!カイジェリーナくんの負けでーすっ・・・!!

 さすがに上手く行きすぎな感はあるのだが、これは凄い。ブラックホールが飛んで行くような感じだ。





 事態に付いていけず動けない魔人に代わり、周りのペット(ぐろい)達が襲いかかってくるのだが、もはや真空波○拳をマスターした俺の敵ではない。ゲージ無限のトレーニングモードの如く遠慮なく連射だ。

 敵も結構なスピードで近づいて来るのだが、それよりも早く俺のオーラが敵を蜂の巣にしていく。




 とうとうペットを撲滅し、奴1人になると最初の余裕はどこへやら。

 絶望に顔を染めた魔人さんがガクガクと震えながら膝を着く。おいおいこいつ漏らしてねぇか?





「ひぃっ!なんなの?なんなのよあんた・・!?只の子供みたいに見えるのに帝国を一夜で滅ぼした私のペット達をまるで意に返さない・・」




 帝国がどこにあるとかその規模とかも分からんが多分結構凄い事なんだろうなそれ。って事はそいつらを瞬殺した俺って…。




 俺が無言でいたからか、魔人さん更に怯えてるみたいだし。




「お…お願い、殺さないで。…何でもします。貴方の奴隷になります。だから命だけは…」




 ビジュアルは有りなんだが奴隷にするには少しクレイジー過ぎる気もするし。ちょっと勘弁して欲しいよね。




 更に何も言わない俺に完全にSATUGAIされると思い込んだのか、なんとこいつ俺の足元に這いつくばって足を舐め始めやがった。おいおい、さすがにそこまでは求めてないぞ俺は。




「世の中に敵なんていないと思い込んでいた私を一瞬にしてここまで追い込む圧倒的な力、そして何よりも美しいその顔、体…。もう私エラルドは貴方様の奴隷です…。貴方様が望むのであればこの体もいつでも差し出します…。どうか私を好きに使って下さい!」




 追い詰められすぎておかしくなったのかな。

 とりあえず襲いかかってくる危険はもう無いみたいだしまぁいいか。




「こんな所ではなんです、すぐに私の城に案内しますね!」




 …流れでこのクレイジーなエラルドさん家にお邪魔する事になりました。

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