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マジかよ・・まだバトルは早いぜ(確信)

「うーん…。」



 まだ眠気の残る瞼を擦りながら目を覚ます。

 やっぱり夢じゃないんだよな。


 再び鏡を目の前に今の自分の姿を確認して現状把握に努める。



 うん。とってもチャーミングだな俺。

 鏡の中で可愛さを極限まで集めたプリティな子供が下衆い顔でニヤニヤしている。

 やはり見た目は大事だ。



 だが魔法使いになったはいいが、やっぱりPCが恋しい…。

 転生?したはいいのだけれども、この部屋じめーっとしてて蒸し暑いし、昨日の夜はランプの明かりがあっただけよかったのかもしれないが、やはり蛍光灯の光が恋しい。



 現代の利便性に富む生活に慣れきった俺としては、たった一晩しか過ごしていないがここの生活はいささか過酷な気がしてやまない。



 モンスターを倒してガンガンレベルアップを図るのもいいのかもしれないが、未だこの世界での指針が見えない以上は、先んじての生活レベルの向上が数ある優先順位の上位に来ることは間違いないだろう。



 衣・食・住の住についてはとりあえず寝床があるだけなんとかなってはいるが改善の余地は十分にある。しかし何と言っても食だ。食うもの食わねば例え魔法が使えても死んでしまう。衣に関しては起きた時に来ていたこの平民っぽいダサい服で十分だろう。周り人いないし。

 俺の貴重な一張羅だ。大事にしよう。



 とりあえずは水と食料の確保が課題になるな。

 って言ってもこの世界でまともな食い物って何なんだ?まぁ考えてても仕方ない。

 まずは探索だ。一応護身用に壁にあった短剣を腰に差す。

 死活問題に貧しながらも少しワクワクしながら小屋の入り口のドアを開け放つ。

 いよいよ異世界冒険デビューの第一歩だ。




 だが、やはりと言っていいのか現実は甘くは無かった。

 出発前の高かったテンションはだだ下がりで鬱蒼と生い茂る樹木に囲まれて俺は早くもピンチに陥いる事になる。



 このキノコ食えるのかな?

 ポケットの中には何やら毒々しい色をして見るからに危なそうに傘を開いたキノコが数種類。せっかく見つけたのだからととりあえず採集したのだが実際に食す段階になったらきっと躊躇うだろう。



 30分ほど歩いて収穫された怪しげなキノコ達を地面に並べてため息をつきながらキノコ達を見ていると、ふいに何やらモヤモヤと視界がボヤけ始めた。

 お?なんだ?なんか目眩が…。



 ほんの一瞬で視界のモヤモヤは晴れたのだが、改めてキノコを見つめると先ほどまでは何も無かった空間にぼんやりと文字の様なものが浮かんでいる。





名称 ピクピクコロリ


効能 食べると笑いが止まらなくなり、全身が笑いによる筋肉痙攣により死に至る。




名称 ネタラシヌドンダケ


効能 食べると瞬時に睡魔に襲われ、そのまま起きる事のない眠りへと誘う。



名称 ファビョンズドン


効能 食べると無性に腹が立ってくる。死ぬまで怒りっぽくなる。





 …解析…効果?


 これも魔法なのか?だとしたら便利すぎるだろうこれは。

 イメージ次第でここまで出来るもんなのか?


 『解析』…下手な攻撃魔法よりよっぽど重要であろう。

 …それにしても見事にハズレばかりだな。というか危険すぎるだろ。即死は言うに及ばないが一生怒りっぽくなるってどんなファ○ョリ方だよそれ。

 ろくなキノコがないなこの辺。 



 解析魔法の利便性に驚きながらも採集したどうやっても食えそうにないキノコを見ながら肩を落としていると、そう遠くない所でガサガサと草木をかき分ける音が聞こえた。



 こちらに来てから久しく感じる事の無かった自分以外の生き物の気配を感じて、一気に身体中に緊張が走り、腰に差した短剣を手に音がした方向に身構える。

 段々と大きくなる足音と共に遂にそれは姿を表した。



 全長4メートルはあろうか。猛々しい牙と食らったら一溜りもないであろう鋭く尖った爪を生やした狼のような獣。



 や・・ヤバい。これはヤバい。見た感じ確実に勝てそうも無い。

 レベル1の俺が逆立ちしても勝てそうにないであろう貫禄と雰囲気を纏いゆっくりとこちらへ歩を進める大狼。


 とりあえずアナライズだ。デ○ルアナライズ!

 あんまり見たくないけど。






名称   ヘルズ=フェンリル


種族     魔帝


レベル   852


力    3260

知力    920

魔力   1150

速さ   8870

特殊     15


称号  無比の奔流

    高貴なる怨嗟


特技  暴虐の矛牙

    天狼の鋭爪

    ベノムウェイブ

    疾走(常発・パッシブスキル)  





 おい…。ちょっと待て…。

 いきなり4桁のステータスだと…。その前にレベル852!?色々と設定がバグっているとしか思えないぞこれは。

 あっ、でも特殊は俺の方が上なのか。ハナコの加護も伊達じゃないのね。


 いやそんな事はどうでもいい。

 称号の無比だとか高貴とか完全にラスボスクラスの特徴です。本当にありがとうございます。持ってるスキルも名前からして凶悪さが滲み出てるし…。レベル1の俺が食らったら間違いなく即死だろうこれは。さすが魔帝さま。




 …いや、そうじゃなくて。。


  


 これはヤバい、間違いなくヤバい。

 絶対食われる…、確実に狩る者と狩られる者の構図が出来上がってるぞおい。はよ逃げんとモグモグ確定だ。



 緊張とパニックに陥り、必死に逃げようとするが身体が怯えて言う事を聞いてくれない。ガクガクと膝が笑い、鼓動が痛い程にドクドクと高鳴る。



 小屋…、無理しないであそこに留まっておけばよかった。なんでこんな得体の知れない森に出ようと思ってしまったんだ俺は…。



 目の前10メートル程に迫った大狼は獲物を品定めするように俺の一挙手一動を見極めている。少しでも動けば途端にガブリだろう。



 こんな事なら魔法使いになんてなるんじゃなかった。

 変な夢を見る事などせず、身分相応にバイトに励み、溜まったお金で趣味のゲームやネットを楽しむ。それで十分だったのだ。

 死にたくない…。死ぬのは怖い…。食われて死ぬなんて最悪だ…。



 そんな事を考えている間も大狼はゆっくりと、しかし確実にこちらに歩を進めて来ている。



 ああ…、戻りたい…。安全な、身に危険の及ばない所に…。








 瞬間、大狼がまさにこちらに向かって飛びかかろうとしたその刹那、視界が一瞬暗転したかと思うと暖かくふわりとした心地の良い感触に包まれた。

 食い殺される恐怖でパニックになりつつあったが、母親の胎内を彷彿とさせるような優しい感触に一瞬で心が鎮まり、あれだけビビっていたのが嘘のように心が落ち着いていくのを感じる。

 いや、胎内なんて覚えてないけど実際そんな感じだったからな。




「いやー、あっぶないねーキミ。危機一髪というか死んでたよ確実に」




 気付けば俺はその言葉を発したであろう人物に抱きかかえられ、さっきまで大狼がいた場所には、いつの間にかぐちゃくちゃになって絵面的にモザイク必須な魔獣帝が横たわっていた。

 激しすぎる状況の変化に俺の貧相なオツムは未だ着いてきてくれない。




「おーい、聞こえてるー?もしもーし?」




 …ん?何が起こった?

 確かに俺の目の前にはあの凶悪な大狼が目の前まで迫り今にも襲いかかってくる所だったのに…、



 逃げたい、戻りたいと必死になりすぎて頭が現実逃避を始めたのか…?

 なんで俺まだ生きてるの?というか抱えられてるよな?



 あの時の俺は頭が真っ白になって、何も考えられない位狼狽して…。

 


 も、もしかしてここが天国か?なんかいい匂いするし。

 もっとこの柔らかくて暖かいコレを感じたい。フゴッフゴッ…。

 



「あっ、コラ!どこに顔埋めてんのよキミ!というか動けるんなら返事位しなさいよ!ったく…」






 フワフワとした感触から強引に引き剥がされて、地面に投げ落とされた所でようやく我に帰り声の方を見上げると、どうやら俺が天国だと思っていた所はやはり紛れも無い天国であった。



 俺はどっちかというと女の子女の子した娘の方が好きだったんだが、目の前の存在が俺の今までの価値観をキレイさっぱり洗い流してしまう。ボーイッシュ…。これはこれで有りだな。というかこれこそ至高なのかもしれない…。




 色素の薄い黄金色の短い髪が風にサラサラと揺れ、挑戦的な笑みを浮かべた薄い唇が軽く角度を上げている。どこかヤンチャそうにもみえる真紅の両眼が子供が初めて玩具を与えられた時のように好奇心で釣り上がり、その持ち主である件のボーイッシュさんが薄く笑みをこぼしながらこちらを値踏みするように見下ろしていた。 

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