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第一話

 21XX年、謎の生物『アクマ』の存在が確認された。

 最初は数体のみ確認されていたが、アクマはその数を増やし、今では地球の3割がアクマによって支配されている。

 アクマには種類が3つある。

 獣の形をしたモノ、又は人型だが知性のない魔物クラス。

 人型で知性の発達した魔人クラス。

 そして、それらアクマの頂点である魔王クラス。


 魔物クラスの数は測定不能。魔人クラスは数十体。魔王クラスは2体確認されている。


 とどまることを知らないアクマは、今なお人類を、地球の生物を滅ぼそうとしている。

 そして、数十年前に対アクマ部隊が設立された。

 名前は『アンジェラチルドレン』。10代、20代の若者で構成された部隊だ。

 なぜ子供だけなのか。それにはわけがある。

 

 最先端の科学技術の結晶。アンジェラチルドレンの武器であるアハトに決まった形はない。

 血液中に特殊な薬品を注入すると、その人に最も適した武器が具現化する。

 そしてその薬品の効果が出るのが、10代20代。しかもその中でも限られた一部なのだ。


 アハトを手にしたアンジェラチルドレンにより、人類は逆転とまでは言えないが、その戦況を拮抗させるまでに至った。



『勝て。すべてがほしければ』――第27代アンジェラチルドレン隊長、天宮空




「ショウくーん、帰ろー!」

「今行くー!」


 本日最後の授業が終わったことをチャイムが告げる。

 帰り支度をしていると、隣のクラスから幼馴染の天野晴がやってきた。

 いそいでカバンを閉め、背中にかるってハルのもとへ行く。


「待たせた」

「ううん。じゃあいこ」


 ハルとは幼稚園からの仲で、家が隣同士だ。

 普通なら隣同士とはいえ疎遠になるらしいが、腐れ縁と言うべきか、なぜか俺とハルは高校生となった今も一緒にいる。

 ……いや、正確にいえば、中学の時は一緒ではなかった。


 中学に上がる時、ハルは引っ越したのだ。

 それから3年間はハルとは会うこともなく生活していたが、中学を卒業し、俺もある事情で引っ越すことになった。

 その引っ越した先がハルの家の隣。そして通う高校がまさかのハルと同じだったのだ。

 もはや呪いとさえ思える縁に驚きながら、こうしてハルと一緒に登下校をしている。

 

「わー、アンジェラチルドレンが魔人クラスを一体討伐だって。すごいねえ」


 ハルがタブレット端末を操作しながらそう言った。

 アンジェラチルドレンの成果は逐一ネット上に挙げられる。

 そうしてアンジェラチルドレンの支持を増やそうとしているのだろう。


 と、そのとき俺の携帯が振動した。

 ポケットから取り出してみると、どうやらメールが届いたようだ。

 俺は差出人の名前を見て、メールの内容は確認せずそのままポケットの中へしまった。


「誰から?」

「じいちゃん。どうせまた、実家に戻ってこいとかそんなのだろ」


 実家とは以前暮らしていた家のことだ。

 中学までは俺と両親、そして祖父の4人で暮らしていた。

 だが、あることをきっかけに祖父を残して俺と両親はここに引っ越した。


「誰が戻るかよ……」

「え? 何か言った?」

「……いや、なんでもない」


 心に思っていたはずが、思わず口に出してしまった。

 俺は落ち着いて否定し、あることを思い出した。


「そういや……この街に迷いこんだアクマってまだ駆除されてないんだっけ?」

「うん。ここまで隠れ続けてるとなるとおそらく魔人クラスだろうって。アンジェラチルドレンの人たちも最近警備態勢を強めたみたいだよ」

「ま、犠牲者が二人も出たから焦ってるんだろうよ」

「早く倒してほしいよねー」


 アンジェラチルドレンが結成されてから、人類の悪魔に対する警戒心は薄くなった。

 俺たち一般人にはなんの力もないというのに。

 アンジェラチルドレンという組織が、ある意味で人類に危険を及ぼしていることに、誰ひとりとして気づいていなかった。


「ああ!」


 ハルが突然驚いう多様な声を上げる。


「ど、どうした」

「今日の買い出しいくの忘れてた……。ごめんショウくん、先帰ってて」


「はぁ……わかったよ。一応気をつけろよ? アクマにおそわれるかもしれないし」

「わかってるー!」


 そう言うとハルは慌てて買い出しへ走って行った。

 ……不安だ。

 アクマに襲われるとかそれ以前に、転びそうで。


「まあいいか……帰ろう」


 そうして俺は、一人で帰路に就くのだった。






「ショウー、夕飯の前に風呂入っといてねー!」

「へーい」


 夜。

 自室で携帯をいじっていて、そろそろ風呂に入ろうかとしたとき電話がかかってきた。

 相手は……


「ハル……?」


 ハルからこの時間に電話がかかるのは珍しい。

 いや、そもそももし家にいるのなら直接言ってくるから電話することはないはずだ。

 ということはおそらく買い出しの帰り……。


 なぜだろう。いやな予感がする。

 いつもならどうせ荷物持ちで呼んだのだろうとか考える癖に、帰る時のアクマの話題が頭にちらつく。


 俺は不安な気持ちのまま電話に出た。


「ハル? どうした?」

『し、ショウく……。た、たすけ』


 俺の嫌な予感は、あたってしまった。


「ハル! 今どこにいる!」

『わ、わかんないよぉ。私、必死に逃げて、それで……それで』

「わかった。電話は切るなよ。それと逃げるなら人がいそうな所へ行くんだ。その方が相手も動きづらいだろうから」

『う、うん』


 俺は必要最低限のものをポケットに突っ込み、階段を駆け降りる。


「ちょっとショウ! どこいくの!」


 母親の少し怒ったような言葉も無視して、俺は家を出る。

 

「ハル、近くに何が見える?」

『え、えと……右に学校の裏山があって、左には……煙突、たぶん銭湯があるよ』


 裏山と銭湯……?

 裏山は分かるけど銭湯なんてこのあたりにあったか?


 くそ、とにかく探すしかない。


「ハル、まだアクマは追ってきてるのか?」

『わ、わかんない。ただ、後ろを振り返りたくない……!』


 せめて近くにいるのかどうか分かればと思ったが……駄目か。

 とりあえず裏山を回るように探すか?

 時間はかかるがそれ以外に手がかりはない……。


「待ってろ、絶対助ける!」

『うん……うん……!』


 助ける。そう言って俺は通話を切った。

 たぶんだけど、ハルは泣いている。

 息も上がってるし、もう休んでしまいたいだろう。

 でも走ってる。俺が来るのを信じて。

 だったら……いくしかないだろ。


 考えろ、考えろ、考えろ。

 ハルは買い出しに行ってたんだ。

 その帰り道、アクマに遭遇して、がむしゃらに逃げた。

 そして裏山と銭湯が左右に見えるところにいる。


 ……いや、待てよ?

 煙突が見えるからって銭湯とは限らない。

 仮に銭湯だとしても、いまは廃墟と化しているなら……?


「……そう言えば」


 クラスのやつで、祖父母が銭湯を経営してたってやつがいたはず。

 今ではもうつぶれたが……確か、その場所は……


「待ってろよ……ハル……!」




 5分ほど走って、俺はある場所にたどり着いた。

 左前方に裏山。右前方に煙突。

 ハルが言っていた場所はこのあたりのはず。

 俺はもう一度ハルに電話をかける。


「ハル! 無事か!」

「し、ショウくん……!」

「近くまで来た。今どこにいる?」

「ど、どこかの公園……アクマも追ってきてないみたいだから、そこで休んでるの……」


 公園……それなら心当たりがある。

 アクマも追ってきていないようだし……。よかった、これで一安心だ。


 俺はそう思って、ハルがいる公園へと走った。

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