限定恋愛
私は皆からお金持ちの家に住んでいて、美人で、しなやかな、非の打ち所がない優しい人だという。
けれど、皆は知らないのだ。
私が恋愛に対して酷い独占欲の持ち主で、付き合った男性と1ヶ月続いたことがないということを。
だから、私はゲームをすることにした。
内容は“週の初めに話した人と一週間限定のお付き合いをする”というもの。勿論相手に断られたらその週はノーデーと呼んで誰とも付き合わない。
一週間で自分の全てを相手にさらけ出し、1ミリも嫌がられなかったらその人とのお付き合いを続行させる。嫌がられたら週の最後に別れの返事を告白した場所でする。
ー5年前ー
竜城 夕火『みーんなこの世から居なくなってしまえばいいのにー』
私は竜城家の養子だった。竜城家にはなかなか子供が産まれなかったらしい。それで施設に竜城夫婦がやってきて、私を養子したというわけだ。
「彼女は去年ここに来ました。実親に暴力を振るわれていました。彼女は自分の名前を付けてもらうことすらされませんでした」
施設の職員は私のことをそう説明した。私は義母に名前を付けられ、竜城としての私をくれた。だが、裸足のまま外に出るという私の癖はなかなか直らなかった。そして今も……
ー三年前ー
『お母様、昨日知らない方がいらっしゃいました』
「お名前を聞かなかった?」
『夏見さんっておっしゃってました』
「夏見…その方はどういう方だった?」
『私のことをじっと見て微笑んでいらっしゃいました』
夏見聡介と名乗ったその人は裸足に白のワンピースを着ていた私の前に再び現れた。
『お母様、この方前にも一度……』
「夏見さんはねあなたの婚約者になる人よ」
♡†††♡
「聡介!あの溝鼠とまだ付き合ってんのか!?」
《……溝鼠じゃない。夕火だ》
「虐待された子供だぞ?不幸になるに決まってる」
《私が幸せにする》
「つうか、何で急に中学生の餓鬼を婚約者にするなんて言い出したんだ」
《私は彼女に救われたんだ》
*★*★*★*★*★*★*★*★*★*
『貴方はどうして泣いているの?世界の全てに絶望でもしたの?』
私はその日最愛の人を病気で亡くした。だからその人がいた病院の近くの公園で涙を流していた。そんな私の前に真冬なのに白のワンピースだけを着た裸足の少女が立っていた。
《……ただ悔しいだけ。自分があいつに何もしてやれなかったということが》
『じゃあ、これをあげる。どこかにいる誰かにあげて?』
そう言って少女は私にボロボロのお守りをくれた。
『次は大切な誰かを守れますように!じゃ、またね!』
そう言って裸足の少女はどこかへ駆けていったのである。
★*★*★*★*★*★*★*★*★*★
それが竜城夕火だと知ったのは最近だった。彼女の容姿が気がかりだった。彼女は白のワンピース以外の物は一切付けていなかったが、彼女の首元には何かで締め付けられたような痕があり他にも誰かに意図的に付けられたような痕が様々なところに付いていたのである。その時はそんなに気にしていなかったのだが、後から思い出してみるとおかしいと気付いたのである。
私はそれから虐待について調べ始めた。虐待にあった子供が行ったという施設にも足を運びあの少女を捜したが、全く見つからなかった。まだ、役所に見つかってはいないのだろうか。いや、けれどあの辺の子供で虐待にあっている子供がいるなんて話は聞いたことはない。では、誰かに引き取られたのか?そうだったならば、それでいい。今度こそ優しい家族に出会えたのなら。
そして、運命が動き出したのである。また再会したのだ。あの少女と。私とトイレの出入り口でぶつかることによって。
『ごめんなさい!大丈夫出したか?』
《私の方こそすまない。怪我はしていないか?》
『大丈夫です』
《君は……君、前にこの公園に来たことはないか》
『あります。私、昔この近くに住んでいたので』
《私は、君に昔元気を貰ったんだ。》
『私が?ですか?』
《ああ。だから、今度お礼がしたい。名前を教えてくれないか?》
『クスッ…レディに名前を聞くときは自分の方からではなくて?公園の泣き虫お兄さん』
《!!覚えててくれたのか?》
『いえ、何となくそんな感じかなって思っただけです』
《…私は夏見聡介だ》
『私は竜城夕火です』
《竜城?あの竜城グループの?》
『?はい、たぶん』
《竜城グループには結構私の会社もお世話になっている》
『そうなんですか!何だか運命みたい!』
♥★♥★♥★♥★♥★♥★♥
桐野篤「あの…どうして竜城さんが俺みたいなのとつき合ってくれるんですか?」
『桐野君と自分を卑下してしまうんだね…私じゃ、桐野君には釣り合わないかな?』
桐野篤「えっ…竜城じゃなくて俺の方が竜城さんみたいな清楚な子に合わないんじゃないかって……」
『私は、誰かのために頑張ってる桐野君が好きだよ』
桐野篤「あ、ありがとう…」
『桐野君は私のこと好いてくれる?』
桐野篤「もちろんっ」
紫夏奈「篤っ、あたしねっ…ずっと前から篤のこと好きなのっ」
俺はずっと片思いしていた子に告られた。嬉しかった。けど、おれは今竜城さんと付き合ってるのだ。二股なんて出来ないし、かと言って竜城さんを振るなんてことも出来ない。
桐野篤「ご、ごめん…俺いま付き合ってる人いるから」
紫夏奈「竜城さんでしょ?知ってるよ。けど、竜城さんって誰でも良いから自分だけを見てくれる人を探してるって女子の間では有名だよ?」
竜城さんが、男子からは人気があるのに女子とほとんど一緒にいないのは女子が彼女のことを毛嫌いしていたからだということを今日初めて理解した。けど、それは彼女が恋愛に関して“寂しさ”を抱えてるせいだと同時に理解する。
女子は自分の好きな男が取られるのではないかと気が気ではないがために、彼女の本当の気持ちに気付くことが出来ない。
桐野篤「夏もそんな風に考えてたんだ。幻滅した」
紫夏奈「なっ…ち、違うよ。これは噂で聞いたことで……」
桐野篤「けど、自分も思うところがあるんだろ?」
紫夏奈「違うって…あたしはただ…篤が好きなだけで…」
桐野篤「じゃあ、嫉妬か」
紫夏奈「カアァア…」
桐野篤「夏達が竜城さんのことをとやかく言う資格はないから」
そう言ったら、夏奈は涙をこぼしながら何処かへ行ってしまった。
『桐野君って、格好いいこと言ってくれるんだね。私、嬉しかったよ』
彼女がそんなことを言ったから何のことか尋ねるとさっきの告白を盗み見してたらしい。それは、彼女が“気になる”故にしてしまうことで、俺はそんなことをしてしまうと最初に告白を受けたときに気にしなくて良いと言っていた。
桐野篤「夏のこと知ってる?」
『うん、名前と顔とクラスだけだけどね』
ここは、初等部・中等部・高等部のエスカレーター式の学校だ。俺たちは中等部の二課生だ。初等部から、俺はいるが、彼女は中等部から入ったらしい。
そして、彼女は自分より年上、+同じ学年の生徒全員の顔と学年、クラスを覚えてるらしい。何故、下の学年は覚えてないのかと聞くと、キリがないから無理だと言われた。確かにそうだ。一年ごとに次々入ってくる人間を覚えれるわけ無い。
『明日、あいてる?』
短編で出していますが、少しずつ編集する予定ですので、まだ完結というわけではありません。
話の流れからすると、連載小説の1話辺りぐらいかと。
もし、続くようならば短編を序章にして連載に続くという風にするかもしれません。まだ何にも決まってはいません。