15話 機械の猫はご機嫌らしい
『サマルカンドへ至る道』
サマルカンド市街を目前に、ソフィーが表情を曇らせた。
「ソフィー大丈夫か?」
内務省の装甲車の中でデューカは不安げな表情を浮かべた。
「心の奥で・・・何かが動いてる。何かが凄い勢いで回転している。
何これ?何かのエネルギー源?」
ソフィーは自らの思考回路の深層を探った。
装甲車を運転しながらデューカは、心配そうにソフィーを見つめた。
「おいおい早くしろよ!」と言う言葉を押さえたコーリーは、チラッとバックミラーを見た。
「おい!デューカ、アローン兵の車が着いて来てないぞ!」
デューカも慌てて背後を見ると、アローン兵が運転する装甲車が、遥か後方で動きを止めていた。
「ソフィーどうする?」
しかし、ソフィーは放心状態のまま、呟いていた。
「これは私の心の奥?それとも参謀の心の奥?それともアローン兵の心の奥?」
「心の奥って・・・」
高価な機密兵器を放置し続けるのは危険極まりない。
しかし、デューカには、アローン兵を動かす手段などなかった。
デューカは、リモコンの電池が切れた時のエアコンを思い出した。
リモコンに新しい電池を入れて、「ピッ」としたくて仕方なかった。
そしたら、アローン兵も動き出してくれるのではないかと夢想した。
「こう言う時、リモコンが欲しいな」
そう言ったのは、コーリーだった。
こいつと同じことを考えていたなんて!
デューカは自分の夢想を悔やんだ。
『渓谷・B地点』
この星には、愛玩用の猫ロボットと言う物も存在はしている。
そして、違法ではあるが、その猫ロボットに思考回路を移すことも可能だ。
その機械の猫が、ロボットなのかアンドロイドなのかは解らないが、魔改造を繰り返されたその機体は、かなり高額な金を掛けていた。
機械の猫は、天に聳えるような大樹の枝の上から渓谷を見下ろし、尻尾を振った。
遠い昔生きていた動物の猫と同じように、感情が尻尾に伝わる仕組みらしい。
猫は、興味津々なものを見た時、尻尾を大きく振る。
余程楽しいのか、その機械の猫の尻尾も大きく振れていた。
その大樹の下でソフィーの参謀は、ハミルに告げた。
「降伏勧告に応じて頂けませんか?」
「良く冗談を言う、機械め!」
「残念です」
大樹の枝の上で、機械の猫の尻尾がさらに大きく揺れた。
つづく