9話 人類の記憶を引き継ぐ者達
アレム神父は苦笑した。
構わず、コーリー博士は話を続けた。
「あの時のあなたの興奮と同じことが、
人類の記憶を引き継ぐ者達に起こった。
その興奮を権威ある神父であるあなたの叫びと演説が増幅させ、
今や、この惑星の人類の記憶を引き継ぐ者達は、
あの人類に似た優しく暖かい身体を持つ生命体の存在を、
渇望し始めた。」
コーリー博士が興奮すればするほど、
アレム神父は冷めて行った。
「しかし、残念ながら私の同僚のすばらしい演説のおかげで、
教会の大儀名分を得た評議会は数日中に、
あの人類に似た生命体の追放を全会一致に近い形で、
可決するでしょう。
既に評議会議員の大部分は、
人類の記憶を引き継がない新種の機種たち、
可決を覆すことは無いでしょう。
新種の彼らにとって人類は、創世記に登場する1種族に過ぎません。」
「評議会が人類に似た生命体を追放するのであれば、
我々は戦うまでの事」
「戦う?軍も警察も彼ら新機種が抑えているのですよ。
徒手空拳で勝てる相手ではありません。」
「我らにはサインがついてます。」
「サイン・・・反政府組織の?」
「こちらに着く寸前、発電所の爆発音を、
アレム神父もお聞きになられたでしょう。
在れこそサインの意志です。」
つづく