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『遠い星の話』  作者: 五木史人
4章
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19話 気楽な微笑

『西都・サマルカンド』



内務省サマルカンド公安局の、


評議会議長直通回線が通じることは、


ここ何十年もなかった事だ。


「鉱物資源企業団公社ビルを占拠せよ。」



評議会議長の感情を抑えた言葉が流れてきた。


あえて感情を抑えた寒気を誘う声質だ。



その声に、反論を唱えるのは、恐怖を感じるが、


内務省特殊部隊隊長ハミルは、


「議員の反発が予想されます。」


と返答した。



形式上でも、この程度の意見は言っておかないと、


無能なイエスマンと思われかねない。


その加減は難しい。



サマルカンドの議員は、もちろん公社の代理人たちだ。


この惑星で、もっとも評議会議長と対立している勢力だ。



鉱物資源公社は、


この太陽系全域に広がる利権を持っている勢力だけに、


中々手強い。



議長は、ハミルの返答に「最もだが」的な雰囲気を出した後、



「民衆のデモ隊を、公社ビルに誘導し、


デモ隊を追うか形で特殊部隊を公社ビルに突入させろ。


デモ隊鎮圧の大儀があれば、議員にも言い訳が出来る。


報道局のカメラクルーを手配した。


映像証拠があれば、さすがの議員は何も言えん。


健闘を祈る。」



回線はきられ公安局に安堵の雰囲気が流れた。



議長に健闘を祈られた以上、


それなりの結果を出さなければならない。

そう言った圧力のある言葉だ。


ストレスで思考エラーが出そうだ。



「サマルカンド州全域の、状況を出せるか?」



ハミルの問いに、オペレーターが


「はい」

と心地よい返事を返した。思考回路に染み渡る癒しの声質だ。



公安局の大型モニターには、


サマルカンド州全域の民衆蜂起状況が、映し出された。


装甲騎兵の働きにより、


サマルカンド州の民主蜂起は鎮圧されつつあり、


戒厳令を布かれた大型モニターに映るサマルカンド州全域の、


大部分は沈静化しているように見えた。



「隊長!任務は順調に進んでおります!」


優秀すぎる装甲騎兵たちは、満足した表情で伝えてきた。



「タイミングの悪い・・・もう少し早めに言ってくれれば、


折角鎮圧したと言うのに・・・。」


ハミルは小さく呟いた。



鉱物資源公社占拠の大義名分は、


優秀な装甲騎兵によって消されてしまった。



「戒厳令を解除、州全域の装甲騎兵を引き上げさせろ。」



出来過ぎる部下を持つのも問題だ。



ハミルは、自らの机の直通回線を取ると、

「Cー0058(デモ隊を煽れるか?)」

と暗号コードを呟いた。



「イエス」



こちらは、かなりのイエスマンだ。


ハミルは、議長とは違いイエスマンが大好きだ。


優秀過ぎず、だからと言って無能ではないイエスマン。



「R-57(公社本社ビル)」



サミルは呟くように言うと、回線を切った。




『地下鉄遺跡・地上』



地上の荒野に、2機のアンドロイドが黄昏ているように、

佇んでいた。


ソフィーにとって、デューカ以外と、

こうやって2人きりになるのは久しぶりだ。

しかし、相手はただの機械のアンドロイド。

でも今は信頼しつつある存在だ。



「確かサマルカンドには宇宙港が在ったよね。


鉱物資源企業団公社なら、


宇宙船の1つや2つ手配出来るでしょう。」



「はい。しかし、


鉱物資源企業団公社の宇宙船は大部分が、


貨物輸送船でございます。

大気圏で待ち構える空軍の宇宙船を突破するのは、


至難の業と考えます。」


「その時は、その時で、考えましょう。」


「不確定要素が多すぎます。」



ソフィーの参謀は、不安げに答えた。


ソフィーにそう聞こえただけかもしれないが。


ソフィーが参謀の思考回路を探ると、


参謀の思考回路内のアルゴリズム(問題を解決するための手順)に、


空白が目立っていた。



「アルゴリズムの空白は嫌い?」


「好ましい状況とは思えません。」


「そんなんじゃ、気楽には生きられないよ。」


ソフィーは言うと『気楽な微笑』を参謀の思考回路に送った。


参謀の思考回路が微かに迷った。


「生きる」と言う単語が、上手く処理出来なかった為だ。



「私は、生きているのですか?」



ソフィーは、そう言う参謀の横顔をチラっとだけ見た。





つづく




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