15話 人類の少女、お腹空く。
『大気圏外』
人工衛星は軌道を変え、
明らかに少女が乗る宇宙船と衝突コースを取っており、
それは素人の少女の目にも理解できた。
奥の部屋で、子ども達の叫び声が聞こえた。
少女は側にいるアローン兵に
「どうにかしてください!」
と叫んだが、アローン兵は宇宙に出て以来、
電源が切れたかのように動きを失っていた。
少女は急いで、宇宙船のコックピットに駆け込んだ。
そして、操縦席に座る何もしようとしないアローン兵に叫んだ。
「どいてください!」
アローン兵は微動だにしなかった。
少女は壊れた機械のように見えるロボットを、
無理やり退かそうと、力の限り押したが微動だにしなかった。
仕方なく少女は、アローン兵の膝の上に座った。
操縦席からは巨大な惑星が、青く輝いていた。
惑星は美しく輝いてはいるが、
人工衛星に衝突されコントロールを失えば、
巨大な惑星の重力に引きずられて、
地上への衝突は避けられない。
少女は心の奥底で、
巨大な惑星の重力に対する恐怖が迸った。
操縦席の前には、100以上のレバーやスイッチがあり、
少女を混乱させた。
「これかな?」
少女は操縦桿を握り、慎重に微かに動かした。
操縦桿は心地よく滑らかに動いた。
宇宙船もそれに合わせ微かに動く気配を感じた。
人工衛星は宇宙船の眼下を通り過ぎて行った。
「何らかの威嚇?それとも事故に見せかけて・・・。」
少女は、人工衛星と地上で起きている事を、
理解しようと頭を働かせ始めた。
そして、既に底をつきはじめた食料の事も・・・
少女たちが、冷凍保存から目覚めた時には、
操縦していた大人たちは、すでに死んでいた。
次元移動時に、何かの事故が起きたのかも知れない。
今、この状況で、冷凍睡眠に入る訳には行かない。
子供たちだけでも、冷凍睡眠させる手もあるが、
この宇宙船は、幾つかの故障個所があった。
冷凍睡眠装置も正常動く保証はなかった。
眼下に広がる青い惑星の住民には、
食料と言う概念すら無かった。
「お腹空いた・・・」
少女は、子供たちに聞こえないように、小さく呟いた。
少女を乗せた宇宙船の周囲には、
距離を保ったまま空軍の宇宙船が、
事の成り行きを見守っていた。
つづく
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