13話 私のソフィーちゃん
『首都・評議会議長室』
「人類に似た生命体が、
我が星の人類の生き残りだと言う噂を、ご存知ですか?」
議長の秘書長官は、議長に訪ねた。
「『創造主人類の奇跡の復活』か・・・
教会が5000年言い続けた、根拠のない教義。
その噂、どっかのアホが、もしくは教会自身が、流した噂かも知れん。
小賢しい事をする。無知な民衆を騙し続けた結果がこの騒ぎだ。」
議長はそう言うとモニター画面に目をやった。
報道局が、サマルカンドで起きた大規模な民衆の蜂起を伝えていた。
「宇宙の広大さを考えれば、奴らが、
この惑星に辿り付けた事は、奇跡と言えんでもないが・・・。」
「宇宙の広大さを考えればですか・・・。」
モニター画面の中で、装甲騎兵が群集を蹴散らし始めた。
「生ぬるいな。やはり、自意識が在ると、
この種の任務は邪魔になるらしい。やれやれ・・」
議長はわざとらしく嘆いた。
『西都・サマルカンド』
鉱物資源企業団公社ビル最上階の総裁室で、
総裁が騒いでいた。
コーリーの目の前の総裁は、
直径1メートルくらいのテニスボールだった。
かなり高額な機体だ。
その姿で、総裁室を跳ね回るのは、かなりウザい。
総裁室のスタッフは慣れているのか、何の反応も示さなかった。
コーリーは、巨大なラケットで、
総裁を思いっきり打ちたい衝動を覚えた。
しかし、その衝動に従えば、
コーリーの5000年の計が、無駄になるのは明らかだ。
もし打ったら総裁はどんな反応をするのだろう・・・
「どう言う事だ?コーリーお前の仕業か?
街の騒ぎを煽ったのは?」
「いいえ、報道通り、下町で装甲騎兵と民衆のトラブルが、
原因と思われます。」
「何故、抑えられなかった。」
「我々も万能ではありません」
・・・限られた資金で出来ることなど、限られている。
総裁がそのテニスボールになる為の金を回してくれれば、
これくらいの仕事は、すぐにでもしてやるが、
この総裁に取って、テニスボールになるのも、
反乱を起こすのも、同じ様な娯楽の一種なのかも知れない
嘆かわしい・・・
嘆かわしい総裁は勢い良く跳ねると、
高い天井に跳ね返って帰ってきた。そして、
「これを機に議長が動き出す。
ソフィーはどうした?まだ、接触は出来んのか?
私のソフィーちゃんは、まだ会いに来ないのか!」
・・・お前のソフィーちゃんじゃねーし、
むしろ私のソフィーちゃんやし・・・
そんな事を思いつつもコーリーは、冷静に返答した。
「まだ、連絡はございません。」
「丸腰で議長と戦えと言うか?私のソフィーちゃんは・・・」
・・・だから私のソフィーちゃんだっつーの!
コーリーは思考回路上で、
その大きなテニスボールを、スマッシュした。
コーリーの思考回路上で、
思いっきりスマッシュを打たれたテニスボールの総裁は、
意外と嬉しそうだった。
「コーリーくん、いいね!
良いスマッシュだよ!コーリーくん!」
コーリーの思考回路上で、総裁は楽しく弾んでいた。
つづく
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