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『遠い星の話』  作者: 五木史人
4章
66/251

6話 デューカ、泣く。

それでも、それなのに、

銃撃は、デューカの左腕を吹き飛ばした。



「ぬわー!」



デューカは叫んだ。



吹き飛んだのは、一点ものの高価な左腕を、


さらに自分で、1000年以上試行錯誤を繰り返しながら、


チューニングをしたお気に入りの左腕だ。



それは人間時代を超える最高の腕と言っても良い、


素晴らしい腕だったのに・・・



泣ける、非情に泣ける。



この程度の銃撃は、何度もくぐりぬけて来たのに・・・


ソフィーがいないと、運にも見放されるらしい。



運に見放されたデューカは路地の突っ走った。


再び装甲騎兵が放った銃撃が、


足に当たりデューカは、路地に倒れこんだ。



「なんでやねん!」


自分の不運に嘆いた。


しかし・・・しかし!


倒れこんだすぐ目の前に、


鎖が「ガチャン」と音を立てて投げ込まれた。



「そいつに捕まれ!」


誰かが、電子音で叫んだ。あえて加工しているのだろう。

大昔のテクノ音楽を思い出した。


経験上、あえてこんな加工をしている奴が、

まともであった試がない。



しかし・・・躊躇ったのは、一瞬。



デューカは、残った右手でその鎖を掴んだ。



路地の先でバイクのモーター音が響き渡り、


路地裏の先にいるであろうバイクが、


西部劇の様に鎖に捕まったデューカを引きずった。


鎖を離せば背後に装甲騎兵、


引きずられれば地面との摩擦で機体はぼろぼろ。



「誰か知らないが、もうちょっとましな助け方があるだろうが!」



それでも、デューカは鎖を必死に捕まえ、


そして地面を引きずられた。



長年連れ添ったデューカの機体が、


一つそして一つ、剥がれ落ちて行った。



想いでの詰まった機体の破片が、


路地裏にゴミのように散らばっているのが、


ちらりと見えた。



「うう・・・」



泣けた。





『首都郊外・森林地帯』



森林をそよぐ冷たい風は、


とても清らかで気落ちの良い風だった。




「あの人類に似た生命体がいない以上、

首都に向かっても仕方ない。」



ソフィーの声は、清らかな夜空に馴染んだ。



「如何いたします?」


青い視野レンズの参謀の声も、清らかな夜空に馴染んだ。



民衆に慟哭を引き起こす、


恐怖のアローン参謀兵の声なのに・・・



ソフィーと一緒にいると、周囲の存在は、


ソフィー寄りの存在へと、少しずつシフトする。



例えそれが命のない機械だとしても。



「命のない機械だとしても・・・」


ソフィーは、じっと夜空を眺めながら呟いた。



自分で呟いて置きながら、居た堪れなくなった。


その言葉から、逃避するように、

ソフィーは人類の事を考えた。


そして、参謀に告げた。


「私は人類を追って宇宙へ行きたい。」



私は、まだ命のある人類に会いたい。





つづく





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