8話 あなたは誰?
「こちらハンツ、状況は?」
カーンの副官ハンツの手元の、無線から
「現在、交戦中・・・・・囲まれました・・援軍を・・・・。」
ノイズ交じりの声が聞こえた。
ハンツはカーンの判断を仰ぐように、カーンを見た。
軍将校としての正解が、軍官僚としての正解とは限らない。
現場指揮官∧中間管理職のカーンは、
側にいる政治将校の存在を感じつつ考えた。
どちらにせよ、新たな敵の正体は知るべきだろう。
・・・敵を知りたい・・・・思考回路の底から知りたい・・・
知って、敵を撃滅して破壊したい。
粉々に砕けていく哀れなアンドロイドたちを見続けたい。
そして、思考回路の奥から湧き上がる破壊願望を満たしたい。
なぜそんな願望が、湧き上がるのかは解らない。
機械なのに・・・
機械に必要のない願望のはずなのに・・・
その破壊願望ゆえに、
あの厄介な独裁者に仕えていると言っても過言ではない。
「地上にいる装甲騎兵を集めろ。援軍に向かう。」
カーンは士官達に命じた。
既に、装甲騎兵の主力は引き上げており、
地上には護衛20機ほどしか残されてはいなかった。
「少佐、副官の私に指揮をお任せください」
「ハンツ、お前は情報将校と共に残っていざという時に備えろ。
あの狭い鍾乳洞内に、それほどの兵力がいるとも思えん。
私だけで十分だ。」
副官ハンツ。副官としては有能だが、
戦闘指揮官としては不安定なところが多い。
何かの結果が欲しいのだろうが、今は・・・
カーンはハンツに見送られ、
装甲騎兵20機と共に、爆撃によって開いた鍾乳洞内に降りて行った。
☆☆☆☆☆
「南側を始め、東側北側西側塹壕全滅。
かろうじて司令部塹壕のみ、数機助かった可能性があります・・・・」
光1つ無い暗闇の中で、ぎこちない機械音の様な声が、
ソフィーの思考回路に直接響いてきた。
空軍による爆撃で、
ソフィーの頭部に付けられた視野カメラは、傷つき機能を失い、
その機体がソフィーだと気づく事は不可能なほど、
頭部は破損していた。
「私の仲間は200機もいたのに・・・。」
ソフィーは呟いた。
鍾乳洞深部へ、
カーン少佐率いる装甲騎兵20機が、
地上から侵入する音が暗闇に響いた。
無機質な機械音が
「彼ら如何いたします?」
ソフィーに聞いた。
「あなたは誰?」
ソフィーは聞いた。
つづく




