5話 ラッキーボーイのデューカ君
デューカが意識を取り戻すと、川岸に流れ着いていた。
日は暮れ、空を眺めると、
この惑星の巨大な衛星が輝いていた。
身体に水が入っている感があった。
「しかし、何とか持ったか・・・・
さすがラッキーボーイのデューカ君」
人間だった頃は、ソフィーによく言われていたが、
アンドロイドになってからは、言ってくれなくなった。
今は誰も認めてはくれない、
自称・ラッキーボーイのアンドロイド・デューカは、
溺れているときに思考回路に浮かんだ映像と言葉を、
整理した。
『ソフィーの苦痛の表情』
『切迫され、静かに絶滅して逝った人類の肉体』
『最後の希望』
『危険な旅立ち』
デューカは、記憶の断片を組み合わせて、
全体像を探ろうとしたが肝心な部分が、
パズルの欠片の様に抜け落ちており、
全体像を掴むことが出来なかった。
ソフィーは何を苦しんでいたの?
誰が人類を切迫したの?
最後の希望って?
そして旅立ち?
頭の中に入った水が不愉快なノイズとなって、
デューカを苛立たせた。
ふと見上げると、上空を何かが飛んだ。
巨大な衛星の光に照らされた巡航ミサイルが、
首都めがけて飛んで行った。
そして、巡航ミサイルは、
首都郊外で迎撃ミサイルの直撃をくらい、
真紅の光を放って飛び散った。
デューカは巡航ミサイルの飛んできた方角、
西都サマルカンドの方角を見つめた。
「評議会を気に入らない連中が、まだこの星にいたらしい。」
デューカは微笑むと、西都サマルカンドに向かって足を進めた。
つづく