3話 ソフィーの香りに誘われて♪
高価で装甲の厚く重い装甲騎兵が、
なりふり構わず撃ちまくってせいで、
鍾乳洞内は、爆音に満ちた。
その大音響の中、デューカは呟いた。
「ソフィーの匂いがする。
それも、人間だった頃のソフィーの匂いが・・・・」
そんなものすでに存在しないものなのに・・・
さっきの衝撃で、ハード的にもソフト的にも、
思考回路がやられたらしい。
論理的に物事を考えることができなくなってる。
思考回路内で、
人工知能修復プログラムが最優先で動き始め、
通常モードの思考が、さらに鈍くなった。
通常の5%未満しか、意識維持に使えない状態だと、
意識の統一性に支障が出始め、
時系列に関する記憶があやふやになっていった。
「・・・何、ボーとしてるの?デューカくん」
デューカの目の前で、人間時代のソフィーが言った。
幻覚かも知れない・・・
意識のどこかでは、そんなことを思ったが、
それ以上を考える思考領域は、今のデューカにはなかった。
「行くよ、デューカくん」
「ソフィー?待って・・ソフィーなんで人間に戻ってんの?
あっ・・・俺、今までアンドロイドになった夢見てたのかも(笑)
そんなに笑うなよ、ソフィー・・・
俺、夢の中でアンドロイドになって、ちょっと賢くなってたんだぜ。
ほんとだってば!ちょっと高めの思考回路を買ったんだ♪
最初はびっくりしたぜ!これが知能の高さなのかって!
だから、そんなに笑うなって!
しかし、なんで俺こんな洞窟の中にいるんだ?
やっべなんかロボットが、撃ち捲ってる。映画かよ!
えっ、あっちに走れ?」
デューカは、ソフィーの後姿を追った。
「そんなに慌てんなよ。
あれは、なんかのアトラクションだって、
ソフィー、意外と怖がりだな」
人工知能修復プログラムが、仮想OSを立ち上げ、
通常モードの思考が多少回復した。
「・・・」
我に返ったデューカは、今の現実を確認した。
「しあわせ・・だったかも・・・」
デューカは、追撃してくる装甲騎兵を避け、
鍾乳洞の奥へと走った。
つづく