2話 めっちゃ善良なアンドロイドは私で~す
「空軍め!勝手なことを!
反乱分子の首謀者を消してしまっては、
奴らの全貌が掴めんではないか!」
カーン少佐は、司令部塹壕で起こった爆撃の煙を、
見ながら怒鳴った。
「一体誰の命令・・・・・」
!
・・・・もし、レーゲン議長の命令なら、
これ以上の発言は控えた方が良いだろう。
政治将校に聴かれでもしたら、
消去されかねない。
カーンは、何気に周囲を見渡した。
政治将校の姿は見えなかった。
カーンは安堵した。
敵は前にだけいる訳ではない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
デューカは暗闇の中、光が降り注ぐ光景を、
見つめていた。
「死後の世界?・・・俺達機械も死後の世界があったのか?」
と思いながら、その光の輝きを眺めていると、
光の中で何かが動いた。
「天使?俺、天国に行けるの?
善良かと言うと、微妙な生き方をしてきたけど・・・
でも、そう言う事なら絶賛歓迎!!!
イエーイ天使さま~
めっちゃ善良なアンドロイドは私で~す。
天使さま~、わたくしデューカは、
ひたすら善行を心掛けて生きて参りました。
天使さまに、お会いできて光栄です」
しかし、暗闇の中に銃声が響き渡った。
「違う!敵か!俺は生きていたって訳か・・。」
素早く身を翻そうとしたが、身体のあまりのぎこちなさに、
デューカは慌てた。
必死でどうにか側にあった柱らしきものに身を隠した。
柱を見ると、乳白色をしていた。
「鍾乳洞か」
司令部塹壕の下には鍾乳洞が広がっており、
司令部直撃の爆撃により、地表が崩れ落ちたらしい。
「地下の鍾乳洞を、知らずに爆撃したのか?
それとも知ってて?まあ良い・・・」
デューカは微笑み、生の実感を感じた。
そして、自らの悪運に感謝した。
さらに生きているであろう仲間たちの、悪運にも・・・
「ソフィーは?」
デューカは薄暗い鍾乳洞に目を凝らした。
薄暗い暗闇の中、地下水を跳ねながら走り回る機械の音が、
複数聞こえた。
「ソフィーも生きているかも」
鍾乳洞の天井に開けられた穴から、
重々しい装甲騎兵が降下してきた。
デューカは機銃を取ろうとしたが、
鉄の破片が突き刺さった右手は、機銃を握ることは出来なかった。
仕方なくデューカは、鍾乳洞の奥へ逃走した。
つづく