15話 大切な場所に向かって・・・
作戦会議が終わらぬ内に、
上空を航空機が旋回する爆音が聞こえた。
「来るぞ。塹壕へ急げ!」
サムエルが叫んだ。
最近まで、工場のラインの班長だった部隊長達は、
それぞれの塹壕へ走っていった。
サムエルとニナは、ソフィーとデューカを一目見て、
「それじゃあ。」
とだけ言って部隊長たちの後を追った。
ソフィーとデューカも、テントの下に掘られた塹壕に身を隠した。
上空からは爆撃機が爆弾を投下し始めた。
爆弾が地面で爆発するたびに、地響きが伝わってきた。
「これだけの密林だ。上空からは地上が何も見えていない。
そう当たるもんじゃない。」
密林の奥で、サムエルが叫んでいた。
コーリーは惑星内に、いくつかの拠点を作っていた。
その1つがこの塹壕だ。
発電所襲撃が失敗した時の為の避難所だ。
密林の中に設置された塹壕は、
迷彩が施され、レーダーには何も映らないはず。
すべて違法な技術だ。
ソフィーがリーダーとして担がれているが、この部隊も
コーリーの組織した反政府組織の一部に過ぎない。
組織の全貌は、多少は知っているが、
詳細はコーリーのみが知っている。
情報管理の一環で、情報アクセスの権限は、
厳しく守られている。
アンドロイドは、黙秘が出来ない。
記憶装置にアクセスされたら、すべてがバレてしまう。
捕まった場合、もしくは、動きを封じられた場合などは、
自動消去システムアプリを全員が、インストールはしている。
「ソフィー、この世から消える事、恐くない?」
「恐くないと言えば、嘘になる。実際、よく解らない。
私たちに魂が在るのならば、あの世とかに行くんだろうけど、
どうなんだろうね・・・」
湿った空気の塹壕の中で、ソフィーは銃器の手入れを始めた。
「なあ、人類ってどんな奴らだと思う?」
「デューカも昔、人類だったでしょう。」
「ほとんど憶えてないんだ。なんせ何千年も前だからな。
宇宙港に降り立った人類に似た生命体ってどう思う?」
「報道では、文明のレベルは、
この惑星に比べれば野蛮だって話でしょう。」
「報道ではあまりいい意味では、言ってなかったけど、
野蛮・・・いい響きじゃない?
心の中の固められた何かを破壊するような・・・」
「野蛮・・・」
ソフィーは呟いてみた。
その言葉は、ソフィーの記憶回路の森を抜け、
どこか大切な場所に向かって駆けて行った。
つづく