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『遠い星の話』  作者: 五木史人
2章 退化する世界の中で・・・
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13話 誰が人類を滅ぼしたのか?

ニナの問いに、ソフィーが答えた。



「陸軍の動きがおかしいのは、碧依文書のせいかも知れない」


「碧依文書?」


「コーリーから概要だけ聞いただけだから、詳しい事は解らないけど、


教会の外部とは遮断されたサイトで見つかったファイルのコピーに


惑星政府がこの星の人類を滅ぼした証拠が書かれているらしい。


それを陸軍将校にばら撒いたらしい」



「!」



サムエルとニナは、驚いて動きを止めた。



「惑星政府が人類を滅ぼしたって!?マジで!?」



デューカは予想以上に真剣な眼差しでソフィーを見た。



「コーリーの事だから、証拠を偽造した可能性もあるけど・・・。」



「偽造ね。コーリーならやりかねないよね」


ニナは、ホッと緊張を解いた。




「でもさ・・人類滅亡って、不可解な事が多すぎるんだよな」


サムエルは、指でテーブルをとんとんと静かに叩きながら、言った。



デューカとニナの視線がサムエルに集まった。


ソフィーの視線は、何気にテーブルを叩く指を追っていた。


それに気づいたサムエルは指は動きを止めた。


ソフィーが視線を逸らすと、サムエルの指はまた動き出した。


するとソフィーの視線は、またその指を追った。



サムエルは考えた。お前は猫か!


しかし、この指の動きを止めるべきか?


動かし続けるべきか?


相手は、ソフィーだ。この反乱の美しきリーダー。



陰影のある美しい横顔は、


既製品のアンドロイドとは思えない造りだ。その表情のせいか、


未だ何を考えているのか不明な所が多いリーダー。



コーリーなんかより、リーダーとしての器はある。


「こいつの為なら死んでも良い」と思わせる器だ。


そのソフィーがなぜ、俺の指を追う?お前は猫か!


アホのデューカなら、からかってやるところだが・・・



もしかしたら、何か深い考えがあって・・・


俺の指の動きから、俺の深層心理を探っているのか?



まさか・・・



「しかし、よくもあんな胡散臭いコーリーに乗せられたよね、俺たち・・・」


とデューカは、人類滅亡・・・の話題を逸らした。


それにニナも話を合わせた。


「異常な興奮状態だったからな、しょうがなくない?」


「まあね・・・って言うかさ、サムエル、お前、何ぼーっとしてんだよ!」



デューカの言葉に、サムエルは指の動きを止めた。


止められたと言うべきか!


サムエルは、チラッとソフィーの表情を覗いた。


綺麗な顔をしている・・・それ以上は何も読み取れない。



「おい!サムエル!何アホみたい顔してんだよ!」



アホのデューカに言われたくはないが・・・



「勝つ見込みがないんだったら、ここから逃げる手立てを考えろよ!


サムエルお前頭いいんだろう!」


「逃げるって、どこに逃げるんだよ?今から工場長に


『僕達、発電所爆破して、陸軍に追われていますけど、


また雇ってください。てへ♪』


って頼むのか?、もう、俺達に逃げる場所なんてないんだ。」



「サムエル君・・・そんな時に『テヘ♪』は、ダメだよ。ねえソフィー」



「そうね『テヘ♪』はダメだね。


そんな時は、『これを・・・工場長も好きだね。へへへ』じゃなきゃ」



「ソフィー、悪い子!」



「いや、そんなレベルじゃないから、もう・・」





その言葉の後、テント内に静かな沈黙が訪れた。



デューカは、 テント内にいるアンドロイドたちを見渡した。

アンドロイドたちは沈み込んだ表情で、


じっと作戦地図を見下ろしていた。



その表情に、歴史書に描かれていた人類の様な、


誇りや勇気、不屈の精神は感じられなかった。



アンドロイドと呼ばれる人型ロボット。



「所詮、人に似せて作られた機械に過ぎない・・・」


サムエルの言葉に、デューカは



「少なくともここにいるメンバーは、


この星に降り立った人類に似た生命体を見て、


何かを感じたからこそ、ここにいるはずなのに・・・。


これじゃあ、今までと変わらないじゃないか?」


「デューカ・・・俺達は所詮機械だ。人間にはなれん。


もし最初から機械だったら、こうも人間を意識することはなかった。


人間の記憶を持たない新機種が羨ましいよ」




「人の記憶が、機械の心を苦しめる。」


ソフィーは、呟くように言った。





つづく


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