12話 停滞を余儀なくされた時代に・・・
テントの中でサムエルが、陸軍の動静を説明した。
「陸軍が投入してくる数は、カーン少佐率いる1個師団約1万2千。」
「200に1万2千もか!」
デューカは言った。サムエルは
「あちらはこちらの正確な数を掴んでない以上、
現在投入できる限りの兵を、投入してくるはずだ。」
人類愛好会の面々の顔は戦慄した。
ソフィーは無表情のまま、机に広げられた作戦地図を見ていた。
サムエルは続けた
「陸軍は我々を包囲して、
仕掛けられたトリップを解除しつつ、
その包囲を少しずつ縮めて行く作戦をすると思われる。
我々は塹壕に立てこもりこれを迎え撃つ。」
デューカはサムエルと視線が遇うと、
「勝算は?」
と。サムエルは静かに首を振った。
ニナは、付け替えた腕を弄りながら聞いた。
「ねえ、何で陸軍はこちらの正確な情報を掴んでないの?
陸軍ってプロじゃん、プロが素人集団の人数も掴んでないって、
不思議じゃない?何か私たちの知らない要因があるんじゃない?」
【保守派】人類社会で使われた意味とは、かけ離れている。
【メンテナンス最重要派】と、表現した方が解り安いかも知れない。
惑星表面に社会を築いている以上、自然災害の被害は免れない。
自然災害によってアンドロイドが、死ぬ事はありえない。
とは言え、アンドロイドの部品を供給する工場施設の損害は、
アンドロイドの活動を大きく制限しかねない。
工業製品に生存活動を頼らざる得ない事は、
有機生命体に比べ、脆い社会構造だ。
惑星政府は、半導体を初め主要工場を、
政府管理下にし、幾重にもバックアップを敷き、
災害時に安定的に部品供給を可能にした。
政府の厳しい管理下に置かれた情報産業は、
技術革新は保守の名の元制限され、停滞した。
それはソフトウェアーにまで及んだ。
停滞を余儀なくされた時代。
図書館の地下倉庫の古い冒険小説の隅に、
そんな停滞の時代を生きるプログラマーたちが思いついた、
斬新なプログラミングが、
ボールペンで落書きの様に書き込まれていた。
つづく