10話 良い鍵は良い香りがする。
『首都警備局45号倉庫』
評議会議長レーゲンの命令により、
首都に配備されていたアローン兵(特殊機械兵)は、
全て倉庫に保管されていた。
首都警備局のアンドロイドのシンは、
鋼鉄の鍵を握り締めながら、アローン兵を見回した。
電源を切られたアローン兵は、
まるで骨董品の甲冑を纏った騎士の様に見えた。
例え凶暴な機械兵だとしても、
電力がないと骨董品と大差はない。
「古びた機械文明に終焉を♪」
シンは、地下の音楽家が作った曲を口ずさんだ。
意思や感情を持たないアローンは、
人口知能を搭載し意思と感情を持つアンドロイド兵が、
躊躇しがちな 民衆の蜂起鎮圧に対して、絶大な力を発揮した。
そのたびにいくつかの記憶装置が壊され、
再び修復されることのないその記憶は、永遠に失われる。
シンも何度か黒い装甲を纏ったアローン兵の、
残忍さを目の辺りにした事があった。
「しかーし、ゆえに美しい・・・」
シンは呟きながら、
セキュリティーシステムに自らの身分を示すIDを示して、
45号倉庫の管理室の扉を開けた。
そして、管理室のコンピューターにパスワードを打ち込んだ。
「鋼鉄の鍵、美しき骨董品。」
良い鍵は良い香りがする。
そんな事を他のアンドロイドに言っても笑われるだけだが、
それは鍵自身が放つ意思の香り・・・シンはそう信じている。
シンが握るその鍵は、厳正の奥に解放を秘めた香りがした。
表面の香りの奥に、
さらに違う香りがあることに気づいたのは、つい最近の事だ。
最近と言っても100年以上も前の事だが。
良い鍵ほど、2面性を秘めていることが多い。
もしかしたら、さらにその奥に香りを秘めているのかも知れない。
シンは、鋼鉄の鍵の香りを確かめた後、鍵穴に差し込んだ。
扉は厳正な音を響かせながら解放された。
「さあ孤独なアローン兵…ママの元へ帰りな」
数分後、45号倉庫のアローン兵に電力が送られた。
完全武装したアローン兵団が、
倉庫の警備兵と小競り合いを始めた頃、
シンは首都を脱出していた。
つづく