2話 この惑星の主として・・・
「そりゃね、サイン内には『いずれ人類が帰還する!』って予言はあったさ。
でもさ~そんな予言本気にする奴なんて、あんましいないし、いつ帰還するかも解らないしさ、なあ」
あゆみはバイカルに同意を求め、バイカルは頷いた。
「わたしたちが帰還する予言?」
沙羅の問いに、あゆみはにやりとした。
そして、あゆみとバイカルは、カスタネットを取り出しならし始めた。
猫は自由。
なぜこの間でカスタネットをするのか不明だったが、沙羅は待った。
それはまるで動く玩具の人形のように単調な動きだった。
「何がしたいんだろう?」と沙羅と錬と参謀兵は視線を交わしたが、待つことで同意した。
意外だったのが、ビフィズス菌生命体が憑依した知佳が、そのカスタネットを凝視していた事だ。
機械猫たちは満足したのか、あゆみは動きを止め、
「正確な情報ではないが、サイン♪コサイン♪タンジェント♪は、5000年前の3姉妹のコードネームで、その1人がAIプログラマーだったと言われている」
「1人?人類って事?」
「コードネーム・サインは、3姉妹の長女だと言われている。
そして最初のエージェントは、彼女の猫の玩具だったらしい。さらに次女のコードネーム・コサインが、この惑星ヌードルで何かをしていたらしい」
「えっ?」
ビフィズス菌生命体が憑依している知佳は驚き、すかさずあゆみが
「あら~ビフィズス菌生命体とやら~もしかして知らなかった?」
「それは初めて聞いたな・・・これだから人類は面白い」
「当時の人類文明は、あらゆる分野で今より優れていた。個人的な意見だが、あんたらビフィズス菌生命体を創世したのは、コードネーム・コサインだと思う」
あゆみの言葉に、知佳はじっと動きを止め、考え込んだ。
「そんな事はないはず・・・我々は太古の昔から存在していたはずだ・・」
「ある惑星の生態系を他の惑星の知的生命体が関与することは、良くあることだぜ」
「そんな事はないはず・・・我々は太古の昔からこの惑星の主として・・・」
「ちなみにコードネーム・コサインは、カスタネットが好きだった」
宇宙船の外を飛ぶ龍のようなビフィズス菌生命体が、まるで狼狽えている様に飛行していた。
「そんなに狼狽するなよ。楽しく行こうぜ」
あゆみとバイカルだけが、陽気な顔をして、カスタネットを鳴らした。
つづく