19話 進化した記憶がない
「・・・」
「どうした?」
突然しゃべるのを止めた知佳に、あゆみは聞いた。
そして、知佳の表情が変わった。
深く思慮深い表情と言って良い。
「これが人類・・・なのか?」
知佳はそう言うと、ブリッジを見回した。
操縦席に座るアローン兵の頭を撫でた。
「良くできた機械だこと」
そして、ブリッジのガラスに映っている自分を見ると、ターンして見せた。
見た事がないターンだったが、以前の知佳自身のターンより洗練されていた。
「良い身体」
知佳は沙羅の前に立ち、変貌した知佳の態度に、錬は沙羅の横に着いた。
錬に続き、参謀兵も沙羅の横に着いた。
「あなたが人類のボスかな?」
「えーと、ボスとかでは・・」
「ふふ、綺麗な顔をしているね」
「はあ」
「好感を持ったよ」
「はあ」
変貌した知佳は、錬と参謀兵を一瞥した後、
「ようこそ、人類の皆さん。我々はビフィズス菌」
「ビフィズス菌?」
錬の問いに、変貌した知佳は、
「以後お見知りおきを」
と告げた。
ブリッジのスクリーンには、さっきの赤い巨大な生き物が、映っていた。
あまりの大きさに、どのような形態をしているのかさえ、解らなかった。
赤い生き物とすれ違うように、金色の何かも映っていた。
巨大な錦鯉を想像させたが、これも巨大過ぎて形態がどうなっているのか、解らなかった。
「知的生命体に進化したビフィズス菌でしょうか?」
参謀兵の問いに、変貌した知佳は、
「う~ん、進化した記憶がないから、そこは微妙ね」
つづく