9話 男子が1名いるのに?
「じゅ」って音がしてそうな感じで、宇宙船は海中に入った。
高熱を帯びた船体が、冷やされていく気がした。
先程まで炎に満ちていたブリッジのスクリーンが、海水へと変った。
「とりあえず助かった見たいね」
沙羅の言葉に、錬は安堵した。
「皆さんが、助かって何よりです」
参謀兵は冷たい声なりに喜んでいる様に思えた。
参謀兵はさらに続けた、
「我々の予測では、この宇宙船は1分前に高温によって爆発していました」
「・・・」
「・・・」
「ねえ沙羅ちゃん、彼、なんか聞き捨てならない事を言ってるけど!」
「その予測が出てるのに、火山を爆発させたの?」
「予測は予測です。一々予測を信じていては滅びます。ここは戦場です」
「死に対する認識の違いかな。それもまた一興」
水着に着替えた知佳は言った。
「知佳!着替えるの早!」
「舞台ではこの位常識よ。さあ沙羅ちゃんのも持って来たよ」
「わたしはいいよ」
「そうだよ。海に入れるか解らないんだし」
「2人とも~これは気分の問題よ」
知佳が今、来ているのがリボンの着いた真っ赤なビキニ。
そして沙羅に進めているのが、花柄の水着に花柄のパレオ。
「きっとお上品に着こなすに違いない!」と錬は口にはしなかった。
「錬は全裸でいいよね」
「ダメだよ」
知佳に薦められ沙羅が着替えようとした。
「ここで着替えるの?男子が1名いるのに?男子として意識してない?」錬は焦った。色々迷った錬は、
「沙羅ちゃん、奥で着替えた方が・・・一応ここブリッジだし」
沙羅は一目錬と視線を交わした後、
「そうだね」
と奥の部屋へ行った。
沙羅と知佳がいなくなったブリッジで、錬は1人スクリーンを見つめた。
海の中はとてつもなく美しかった。
「穢れの知らない世界です」
参謀兵がそれらしいことを言った。
見た事がない魚が泳いでいたが、魚は魚だった。
生態系はそれほど違いなないのだろう。
何か爬虫類的な物が映った。
「鰐?!」
「そのようですね」
その鰐は宇宙船より大きく、呑み込んでもおかしくない大きさだった。
鰐の目がギョロリと動き、宇宙船を観察していた。
つづく