18話 誇り高きチンチラ
管制室の廊下で、兵士の足音が聞こえた。
機械ネズミのアルバムは、ドキドキしながら、待機していた。
秘密結社員とは言え、機械ネズミだ。
軍との接触は、大体人型アンドロイドがやることになっている。
機械ネズミのアルバムは、ずっとネズミサイズの小さな地下秘密基地で、情報の管理をしていた。
こういう表の世界での活動は、苦手にしている。
まして秘密警察関係となると、ハードルが高い。
あゆみとバイカルに着いて来たら、『じゃあついでに管制室の司令官してね』
と、サイン本部から通達が来たのだ。
「じゃあついでに?って何だよ!適当なサイン本部め!」
まだ宇宙港では、ファンファーレが鳴り響いていた。
「あいつら、いつまでやってるんだ?兵士たちの歓声も聞こえるし」
管制室のドアが開き、管制司令官(仮)のシュガーコートと、二機のアンドロイドが入ってきた。明らかに軍仕様アンドロイドだ。目つきが鋭い。
指揮官クラスのアンドロイドと、副官クラスのアンドロイドだ。
>各所の偽装は問題ないはず。
機械ネズミは、管制室のモニターを確認した。
怪しい所は見受けられない。
>大丈夫だ。
「こちらが管制室になります」
管制司令官(仮)のシュガーコートが、二機の軍仕様アンドロイドに告げた。
「あら可愛いらしいネズミがいる」
副官らしきアンドロイドが、そう言うと機械ネズミに近づいて来た。
軍では珍しい女型アンドロイドだ。
身体の曲線が美しい。
それなりにお値段のする機体だ。
管制司令官(仮)のシュガーコートは、答えた。
「こちらは、わたくしのペットの機械ハムスターです」
>安物のシュガーコートに、ペットとか言われるとなんかムカつく。
>それに俺はハムスターじゃないし!俺は誇り高きチンチラやし。
「抱っこしても良い?」
「どうぞ」
「可愛い」
機械ネズミは、軍仕様のアンドロイドに抱きかかえられた。
指揮官クラスのアンドロイドと、視線が合ったが、疑われている様子はない。
>こいつは秘密警察ではないな。
指揮官クラスは、秘密警察の監視対象になる事はあっても、秘密警察自体のパターンは少ないと言うのが、サイン本部の見解だ。
どちらかと言うと、この副官タイプが怪しい。
>今は優しく抱きしめられてはいるが、ばれたらそのままグシャってされそうだ。
誇り高きチンチラのアルバムさんは、偽装がばれないか、モニターで確認をしたかかったが、怪しまれるので、堪えた。
つづく