2話 機械たちの胸騒ぎ・・・
『評議会議長室』
「議長、タタール発電所が反乱分子の襲撃を受けています。」
慌てた内務次官の声が、議長室に響いた。
内務次官・・・優秀な官僚だが、それ以上ではない。
表面上の事しか知らされない官僚が、
どういう反応をするのかを知るには適切な人事だ。
議長の元には、別ルートで表にはでない情報が上がってくる。
殆どが偽情報だが、その中から真実を見極める力が、
自身の権力を維持していると言う自負が、議長にはあった。
「議長、鎮圧のご命令を」
議長は、首を振って「今は動くな」と制した。
「しかし、首都の電量の60パーセントはあの発電所から、
送られてきています。
それが止まれば首都機能に重大な障害が発生します。」
うんざりするほどの正論だ。
敵が拠点を攻撃した。だからその拠点へ増援を送る。
そんな事、敵の予想範囲。
それは敵の罠に飛び込んでいくような物だ。
「60パーセントしか送られてきていない。
鎮圧に派遣した部隊が、逆に首都を襲うとも限らん。
宇宙港での特殊機械兵の反乱原因が掴めぬ以上、今は動けん。」
「しかし・・・・。」
内務次官は怯えた表情した。
この程度の反乱で、
これほどの表情を示すのは可笑しなことなのだが、
胸騒ぎがするのだ。
論理的ではない意味不明な胸騒ぎが・・・
『胸騒ぎ』と言う単語が正しい表現なのかは解らないが、
それ以外、表現のしようがなかった。
その不可解な胸騒ぎが、この惑星の支配階級全体に広がっていた。
議長は、不安げな内務次官に向かって、
「心配するな、
あの発電所で反乱分子は一網打尽に、粉々にしてくれる。
発電所など後で幾らでも作れる。
発電所の警備兵には悪いが・・・
彼らには敵を引き付けるだけ引き付けさせて、
後は反乱分子ごと発電所を自爆させる。
反乱分子の全てとはいかんが、主力部隊の壊滅ぐらいは出来る。」
「そう言う事なら・・・・」
「特殊機械兵の反乱原因の調査を急がせろ。」
内務次官が退室すると議長は呟いた。
「厄介な・・・・。」
怯えが、部下の正常な行動を阻害する。
その負がいずれ自身の権力を脅かす、
その前に手を打たねば・・・
つづく