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『遠い星の話』  作者: 五木史人
11章 ファンファーレが鳴る中
207/251

5話 1つの生き様の終焉

シュガーコートが走って来るのが見えた。

その明らかに安っぽい姿と動きに、緊張していた沙羅の表情は、安堵に変わった。


>上々だ。


「玩具みたいで可愛い!」

知佳は言った。


>それは褒め言葉なのか?

>ものは良い様か。

>とりあえず、シュガーコートの玩具みたいなナリは、役に立った。


沙羅と知佳の注目を集めたシュガーコートは、愛想の良い表情で言った。

「Ψ↑%!★仝♯♪」


>あっ、こいつまで壊れた?

>ポンコツめ


シュガーコートは言葉が成立してないにも関わらず、喋り続けた。


>どーするんだよ?

>チームあゆみの戦力が25%ダウンだ。


遠巻きに見つめる、機械猫たちが苦笑しているのが解った。

あゆみはバイカルに視線を飛ばした。

バイカルは『任せろ!』と視線を返した。

知佳に撫でられデレデレのバイカルは、顔を近づけている知佳に何かを囁いた。


「あっ玩具の虎ちゃんが喋った!?」


バイカルの表情に、シュガーコートと同じ玩具扱いされた事で、少し落ち込んだ。

でも、知佳の

「喋るなんて凄いで」

の言葉に再びデレデレに逆戻りした。



そんなバイカルと見ていると、あゆみの思考回路に1つの思考が上がってきた。


あゆみはずっと猫になりたかった。

野良ではなく飼い猫に、そしていっぱい甘えたかった。

だからそこ機械猫になった。


一時期、アンドロイドの飼い猫として暮らした事もあったが、違うと感じて、その場所から逃げ出した。


そして今、人類の少女に抱きしめられている。


>これだ、この感覚を5000年待ってたんだ!

>俺たち人類の飼い猫にならないか?


バイカルと視線が遭った。

声は出ないが、意思は通じるはずだと確信した。


『悪くないな』


>5000年に及ぶ、俺たちのハードボイルドな生き様を終えられる?


『俺は終えても良い』

そう言うと、バイカルは人類の少女に甘えた。


>そっか。


『迷ってるのか?』


あゆみの思考回路上に、5000年及ぶハードボイルドな記憶が、走馬燈のようによみがえった。


あゆみは、人類滅亡の年にバイカルに出会った。

動物園出身の箱入り白虎は、人類滅亡と自身の機械化に戸惑って、白虎なのにオロオロしていた。そんなバイカルに、ハードボイルドな生き様を教え込んだ。


『お前が嫌なら、俺は今まで通りに生きていくが、どうする?』


>どうするって!?

>こんないい匂いがする人類と離れられる訳ないだろ?


『同意。じゃあ、そう言う事で』


>じゃあ、そう言う事で


こうして機械猫のあゆみとバイカルの、5000年に及ぶハードボイルド人生は終わった。


>にゃあ

あゆみは思考回路の中で、鳴いて見た。

>良い響きだ。




つづく

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