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『遠い星の話』  作者: 五木史人
1章 黄昏の始まり
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2話 機械たちの涙

『首都郊外のアンドロイド機体製造工場』



それは都市伝説に過ぎない。


このネットワークの奥には、一般アンドロイドが入り込めない、世界が広がっている。


特権階級達は、電脳の世界でどのように生きているのか、一般アンドロイドが知る事は無い。


この物理世界で生きる?いや動いているアンドロイドは、ネットワークの奥を知ることもなく、ただこの物質世界を維持するために、動いている。


一般アンドロイドのソフィーは、じっと画面を見つめた。


画面には、見た事が無い法則で書かれたプログラムが並んでいた。


人類滅亡から5000年間、ずっとプログラマーだったソフィーにも、見た事が無い種類のプログラムだった。


なぜ首都郊外の工場の端末に、現れたのか?

ただのバグか何かなのか?

ネットワークの奥の世界に関わるプログラムなのか?


人類の到着と同時に、舞い込んできた見た事が無いプログラム。

もしかしたら、人類と繋がっているのかも知れない。


「ソフィーも、人類見ようぜ!」


同僚のデューカが、感極まった表情で誘った。


ちょっと離れた場所では、モニターを眺めながら工員たちが狂気と言えるほど歓喜していた。


機械化されたアンドロイドとは思えない歓喜ぶりだ。


ソフィーは、デスクに置いてある飲料水を飲んだ。

機体内部を正常に動かす飲料水だ。

多分、人類が飲んでも美味しくはない代物だろう。


「私は昨日、十分感極まったから、大丈夫」


背後の部屋では、同僚のサムエルやニナ。

無口なアインまで、歓声を上げていた。


それでも、半導体工場のラインは、恙なく正常に動いていた。





『人類を乗せた宇宙船内』



宇宙空間の光速移動とワープ移動が、生命にどれだけ負担を掛けているのかは、解らないが、その光速移動中に、異変が起きれば、通常移動とは比べられない影響が出る。


冷凍睡眠中に緊急解凍された人類の少女サラは、その光景に言葉を失った。


宇宙船ブリッジでは、クルーたちが白骨化していた。


12歳の少女に過ぎないサラが、もし1人だとしたら、自暴自棄に陥ったかも知れない。


しかし、宇宙船のチャイルドルームには、まだサラよりも小さな子供たちが、控えていた。


「ロクにゲームで勝っちゃった♪」

「今のは違うって・・・」


陽気な声が背後でした。8歳の少女チカの声だとすぐに解った。

続いて、11歳の少年のロクだ。


「見ちゃダメ!」


サラの制止は既に意味を成さなかった。


チカとロクも言葉を失った。

サラは、2人にジェスチャーで、『冷静に』と制した。


チカとロクは、サラの意思を察すると、深く息を吐いた。

2人の目には、大量の涙が溜まっていた。


宇宙船ブリッジのモニターには、今置かれている状況が映し出されていた。

宇宙船は、どこかの星の警備艇に囲まれていた。

通信機から、宇宙共通言語で、【宇宙港への入港を許可する】と通知が来ていた。


宇宙共通言語と宇宙航行規約を知っていると言う事は、それなりの文明を持っていると言う事だろう。


【貴船の入港を歓迎する】


この通信が、ただの社交辞令だと言う事は、後で知ることになる。





有機的な生物は消え、完全に機械化した惑星は、5千年、恒星を回り続けた。


ある日、何億光年離れた惑星から、優しく暖かい身体を持つ生命体が、無機質に機械化された惑星に降り立った。


優しく暖かい身体を持つ生命体の出現に、機械たちの心は激しく動揺した。


機械たちを創造しこの惑星から消え去った、人類と呼ばれる創造主の記憶が機械たちの心に蘇ったからだ。


機械たちの心の中に、5千年、凍結されていた涙と言う機能が、解除され機械たちは5千年ぶりに涙を流した。


「我らの創造主の帰還だ。」


機械の神父はそう叫んだ。



つづく

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