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『遠い星の話』  作者: 五木史人
10章 時の記憶
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4話 風が吹いているような音



あゆみとバイカルは、まだコタツの中で寛いでいる中、


「入港申請信号を発信してみます」


シュガーコートの声が、ブリッジに響いた。



時計の星に近づいて見たものの、入港口らしきものは見当たらなかった。



「そもそも入港口とかあるのか?」


あゆみの問いに、アルバムは、


『メンテナンス用の出入り口はあるだろう』



少なくとも針のある表には、それらしきものはなかった。



「裏に回ってみようぜ」


アルバムの声に、シュガーコートは、舵を回した。



針のない裏側は、金属で覆われていて、鏡のように輝いていた。


全体像は懐中時計を円形にした感じだ。


ただ大きさが準惑星規模だが。



綺麗にツルツルな表面に、出入り口の様な物は見つからなかった。



「何かの無線回線が送られてきました」


シュガーコートは告げると、無線のスピーカーから、何かが聞こえる。


『雑音か?』



機械猫と機械ネズミは、じっとその音に耳を澄ませた。


音としては「キューーーーー」と言う音。


風が吹いているような音。


「言葉ではないな」




「面白い!さあ皆の衆、直接乗り込んで見ようぜ!」


機械ネズミはそう言って、ペガサス号を離陸させた。



『・・・』


「・・・」



コタツの中の2匹の機械猫が動く気配を見せないので、


「おーい、お前らも行くぜ!もうコタツ籠りはお終いだ」



「あと五分」


「あのな~猫ちゃんたち」


「じゃあ多数決!後5分欲しい者!」



あゆみとバイカルは当然手を上げた。


機械猫と機械ネズミは、シュガーコートを見た。


シュガーコートも手を上げていた。



「シュガーコートさんまで~なぜ?」


機械ネズミは嘆いたが、シュガーコートは、


「良いじゃないですか、5分ぐらい。そうでもしないと機械猫さん達とは、やっていけませんよ」


「はあ」



~5分後~



あゆみとバイカルは延長しようとしたが、アルバムさんが強く睨むもんだから、諦めた。




典型的な円盤型宇宙船は、鏡のように輝く、時計の星の表面に着陸した。


機械猫と機械ネズミは、シュガーコートを残して、その準惑星の地面に降りた。



磨かれた金属で覆われ鏡のように輝く大地は、とても不思議な感覚がした。



準惑星規模の人工惑星と言えば、軍事用で要塞のような代物。


それとは対照的に、アンティークな美しさを備えた骨董品のような星だった。



『ツルツルだな』


バイカルは、滑りそうになるのを、何とか持ちこたえた。


磨かれた鏡のような大地が永遠と続いていた。


降り立ってみると、人口とは言え惑星なのだと実感した。



鏡のような地面に、機械猫と機械ネズミの乗るペガサス号が映っていた。


まるで懐中時計の表面にいる小さな生き物になった気分だ。



足踏みするとタップダンスのような金属音が響いた。


「良い音だ」


『だな』



「無線の発信源は、向こうだ」


機械ネズミの指示す方へ、あゆみとバイカルは、リズムを打ちながら歩いた。


俺らカッコいいよな!って顔をしながら。





つづく


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