4話 風が吹いているような音
あゆみとバイカルは、まだコタツの中で寛いでいる中、
「入港申請信号を発信してみます」
シュガーコートの声が、ブリッジに響いた。
時計の星に近づいて見たものの、入港口らしきものは見当たらなかった。
「そもそも入港口とかあるのか?」
あゆみの問いに、アルバムは、
『メンテナンス用の出入り口はあるだろう』
少なくとも針のある表には、それらしきものはなかった。
「裏に回ってみようぜ」
アルバムの声に、シュガーコートは、舵を回した。
針のない裏側は、金属で覆われていて、鏡のように輝いていた。
全体像は懐中時計を円形にした感じだ。
ただ大きさが準惑星規模だが。
綺麗にツルツルな表面に、出入り口の様な物は見つからなかった。
「何かの無線回線が送られてきました」
シュガーコートは告げると、無線のスピーカーから、何かが聞こえる。
『雑音か?』
機械猫と機械ネズミは、じっとその音に耳を澄ませた。
音としては「キューーーーー」と言う音。
風が吹いているような音。
「言葉ではないな」
「面白い!さあ皆の衆、直接乗り込んで見ようぜ!」
機械ネズミはそう言って、ペガサス号を離陸させた。
『・・・』
「・・・」
コタツの中の2匹の機械猫が動く気配を見せないので、
「おーい、お前らも行くぜ!もうコタツ籠りはお終いだ」
「あと五分」
「あのな~猫ちゃんたち」
「じゃあ多数決!後5分欲しい者!」
あゆみとバイカルは当然手を上げた。
機械猫と機械ネズミは、シュガーコートを見た。
シュガーコートも手を上げていた。
「シュガーコートさんまで~なぜ?」
機械ネズミは嘆いたが、シュガーコートは、
「良いじゃないですか、5分ぐらい。そうでもしないと機械猫さん達とは、やっていけませんよ」
「はあ」
~5分後~
あゆみとバイカルは延長しようとしたが、アルバムさんが強く睨むもんだから、諦めた。
典型的な円盤型宇宙船は、鏡のように輝く、時計の星の表面に着陸した。
機械猫と機械ネズミは、シュガーコートを残して、その準惑星の地面に降りた。
磨かれた金属で覆われ鏡のように輝く大地は、とても不思議な感覚がした。
準惑星規模の人工惑星と言えば、軍事用で要塞のような代物。
それとは対照的に、アンティークな美しさを備えた骨董品のような星だった。
『ツルツルだな』
バイカルは、滑りそうになるのを、何とか持ちこたえた。
磨かれた鏡のような大地が永遠と続いていた。
降り立ってみると、人口とは言え惑星なのだと実感した。
鏡のような地面に、機械猫と機械ネズミの乗るペガサス号が映っていた。
まるで懐中時計の表面にいる小さな生き物になった気分だ。
足踏みするとタップダンスのような金属音が響いた。
「良い音だ」
『だな』
「無線の発信源は、向こうだ」
機械ネズミの指示す方へ、あゆみとバイカルは、リズムを打ちながら歩いた。
俺らカッコいいよな!って顔をしながら。
つづく