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『遠い星の話』  作者: 五木史人
1章 黄昏の始まり
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18話 からくり人形たちが同調し合う(笑)


「ソフィーの言った通りです」


コーリーは、面白い遊びを見つけた悪ガキの様に笑った。


ソフィーは、悪ガキをなじる表情を浮かべた。



「あなた方は私に、何をさせようと言うのか?」


「神父・・・あなたの『我らの創造主の帰還だ』と言う叫びから、


全ては始まりました。」


「私の叫びから・・・。」


「今、詳しく話している暇はありません。既に発電所制圧の準備は整いました。


今は発電所制圧のご命令を・・・。」



「何を言ってるんだ。発電所を襲えば私だって君たちだって、

即記憶消滅は免れない。」


「今さら何を言ってるのです。

あなたは既に反乱罪の罪を着せられ、その上現在逃亡中の身。

そんなあなたを教会はもう守りきれない。」


「ならばなおさらの事、これ以上教会に迷惑はかけられない。

あなた方にも言っておく、これ以上罪を重ねるな。以上だ。」



神父は街の方角へ歩き出した。

街に戻っても、彼らの言う通り、希望など無いのも事実だ。


「行っちゃいますよ~」


お気に入りの銀髪をかき分けながら、

さほど興味が無さそうな顔の、銀髪野郎はぼやいた。


「はあ」

コーリーは、本当にため息を着きたかった訳ではない。

なんとなく雰囲気で、ため息を着いてみただけだ。

さらに、困った表情などを作ってみた。

もちろん、本当に困った訳ではない。雰囲気だ。


しかし、その表情は、ソフィーと銀髪野郎にも多少伝播した。


コーリーは、自身の思考回路の中で、

この状況を嘲笑った。


機械信号のやり取りに過ぎない。

機械の私が困った表情を作り、

それに合わせて機械たちが同調する。


からくり人形たちが同調し合う(笑)


こんな事・・・人類に似た生命体が来る前は、

考えたことはなかった。

いや・・・人からアンドロイドになった当初は、

思い悩んだこともあった。

しかし、周囲がすべて機械化してしまった後では、

自分がもう人間ではない事など、気に留める事はなくなった。


惑星から、人類だけではなく生命が完全に消えた世界。

それが異常ではなく日常になった時、機械たちはそれを受け入れ、

そして機械であっても生きている事にしあわせを感じた。


「博士!どういう事ですか?

私達はアレム神父の元に集まったんじゃなかったの?」


より人間味に満ちた表情のソフィーはあきれた。

多くのアンドロイドは、その時の流行に合わせて顔立ちを変えていく。

そして、徐々に人間らしさは消えていくのは、

仕方のない事なのかも知れない。


ソフィーは、人間時代の面影をより残しているのだろう。

人ではない仮の姿とは言え、その人間臭い優しい面影は、

機械たちの心を惹きつけた。


もちろん、

からくり人形に過ぎないコーリーの記憶回路も、

惹きつけられた。


機械信号のやり取りに過ぎないのに・・・


「日が昇れば発電所制圧は不可能になる。どうするんですか?」

「発電所制圧は予定通り行なってくれ」

「本気?私達はアレム神父を信じて集まったのよ。

あなたの指示では動かない。」


アンドロイドとして、不老不死な人生を何千年と生きて来たが、

コーリーに『人望』と言うものが備わる事は無かった。

それは十分解ってはいる。

しかし、人間らしさを失わないこの美しアンドロイドに拒否られると、

心の奥にある人間だった頃の記憶が、いたく悲しむ。


「時系列に何の意味がある?アレム神父は私が説得する。

言っておくがソフィー、あなたも私も、もう後戻りは出来ない」



つづく


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