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『遠い星の話』  作者: 五木史人
8章 5000年前からの贈り物
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9話 機械の猫の愛が止らない!

にやけるカラカル機械猫のあゆみに、白虎のバイカルはぼそぼそと何かを言った。



『あゆみ落ち着いて。交渉は最初が肝心だ。人類との約束を思い出せ』


白虎は多分、そんな事を言ったのだろう。


あゆみと白虎バイカルとは、付き合いが5000年にも及び大体解る。



5000年前に人類と交わした約束。


「5000年も前の約束だろ。それにしても、本当に帰って来るとは(笑)」


白虎バイカルも背中で笑った。



『約束は希望。それがなければやってられない』


白虎は多分、そんな事を言った。



自己中な機械の猫のくせ、5000年も律儀に覚えていたのは奇跡だろう。



管制室のスクリーンには、占拠された人類の宇宙船が映し出されていた。



カラカル機械猫のあゆみが、宇宙港に呼ばれたのは、人類との交渉を任されたからだ。なのに機械の猫たちが勝手に宇宙船を占拠してしまっていた。



「どういうつもりだよ」


カラカル機械猫のあゆみは、白虎バイカルに愚痴った。


白虎バイカルは首を傾げた。



「これだから猫は、自分勝手だって言われるんだ!」


この太陽系の機械猫たちにとって人類は重要なカードのはずだ。



管制室のメインカメラに、人類の沙羅と知佳が映し出された。


情報ではあの娘が交渉相手らしい。



カラカル機械猫のあゆみは交渉手段を考えながら、じっと見つめた。


画面の中で知佳が新体操のこん棒を投げたりしながら、踊っていた。



くるくる回るこん棒と可愛く踊る人類の少女に、あゆみの心は踊った。



くるくる回るこん棒。


可愛く踊る人類の少女。


くるくる回るこん棒。


可愛く踊る人類の少女。



それが猫心を刺激しすぎたのかも知れない。


「可愛い、そして楽しい!そして、めっちゃ愛おしいー」


機械の猫のあゆみは絶叫した。



『ちょっと待て』


白虎が振り向くとすでに、カラカル機械猫のあゆみは管制室から飛び出し走り去っていた。



「可愛く楽しい人類よ!これが人類愛と言うのであれば!


ぼくの愛を受け取ってください!もうぼくの愛は止められない!」



あゆみは、狭い機械猫専用通路を駆け抜けた。



     


     ☆彡 





宇宙には色んな生命体がいる。


人類を含め、哺乳類に爬虫類は昆虫類、機械生命体に金属生命体にプラズマ生命体。


霊体オンリーなんてのもいる。



銀河連邦に登録されているだけで、12000種類はいるらしい。



そして、初めて出会った異種との初交渉が大切なのは、銀河連邦内では常識だ。



もちろん、宇宙時代を生きている14歳の沙羅も12歳の知佳も知っていた。


今、人類にとって機械猫が、重要な交渉相手である事は間違いない。



「猫ちゃん出ておいで♪」


箱の中に潜りこんだまま出てこない機械の猫に、沙羅は声を掛けた。


でも、これから起こる事は、必然だったのかも知れない。



何もない壁に穴が突然開き、機械の塊が雄叫びを上げながら飛び出してきた。



「沙羅ちゃん!危ない!」



宇宙船に乗って以来、戦闘民族として目覚めつつあった知佳は、持っていた新体操用のこん棒で、機械の塊を撃ちかえした。


芯を捕らえたその打撃は、機械の塊を大きく吹き飛ばした。



「にぎゃああああああああ!」


予想外の出来事に、機械の塊は絶叫した。




つづく






人類たち



【沙羅】この惑星に漂流してきた人類の少女14歳。錬の兄が好き♪

【錬】ゲーム好きな人類の少年13歳。

【知佳】躍るのが好きな12歳の少女


【あゆみ】元人間のカラカルの機械猫。自称エースパイロット。

【白虎のバイカル】人見知りの激しい虎型アンドロイド。宇宙港管制官。




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