5話 猫は笑いながら眠る。
その猫は、宇宙港の石の柱の影から、こちらの様子を伺っていた。
多分、生気を感じないから、機械の猫だろう。
猫のアンドロイドと言ったところだ。
まるで、おもちゃみたいだ。
追いかけようとする知佳に沙羅は、
「驚かせないようにね!」
と小声で囁いた。
「わたしも行きたい!」
とせがむ子どもたちに、沙羅は
「まだ外は危ないからここにいてね」
と小声で諭した。
そう言っているうちに、知佳は宇宙船の外へ出てしまっていた。
知佳がリボンをクルクル回しながら駆けて行くもんだから、
「知佳ちゃん、そんな事したら驚くから!」
と制止しながら、沙羅は知佳の後を追った。
ボーとしていた錬も、こちらの動きに気づき、
「ぼくも」
とついて来ようとしたので、
「錬はここにいて」
と沙羅に止められた。まだ機械の兵隊だけに任せるには危うい。
女の子だけで行くのは危ないよ・・・
と錬は言おうとしたが、知佳専用機械兵と沙羅専用機械兵が後を追っていたので、大人しく見守る事にした。
宇宙船を飛び出した知佳は、リボンを回し跳ねながら機械の猫を追った。
「にぎゃああああああああ!」
機械の猫の恐怖の叫びが回廊に響いた。
リボンがモンスターに見えたのかも知れない。
機械の猫は、宇宙港の回廊を全力で逃走した。
それを知佳は踊りながら追いかけて行った。
宇宙港の回廊の壁は、綺麗に磨かれた石で出来ていて、まるで出来立ての遺跡の中にいるかの様だった。
「沙羅ちゃん、猫がいたよ!」
回廊の奥から知佳の声が響いた。
沙羅が到着すると、機械の猫は、犬小屋ぐらいの石の箱の入り込んで、知佳を威嚇していた。だけど、優しげな沙羅を見上ると、ニコリと微笑を浮かべた。
「人を見る目のない猫、所詮機械ね」
知佳の言葉をよそに、機械の猫はご機嫌で鳴きだした。
「にゃーにゃにゃー♪」
「きっと歌っているのだろう」と知佳と沙羅はそう結論付けた。
そして歌い終えたのか、猫は静かに眠った。
「猫ちゃん眠っちゃった?」
「まじ?」
さすが猫、機械とは言え、気まぐれだ。
「この猫ちゃん、どうする?」
知佳はピョーンと跳びながら聞いた。
この機械の猫がこの遺跡の重要なカギだとは、明らかだった。
つづく
人類たち
【沙羅】この惑星に漂流してきた人類の少女14歳。錬の兄が好き♪
【錬】ゲーム好きな人類の少年13歳。
【知佳】躍るのが好きな12歳の少女
【アローン兵】太陽系最強の機械の兵隊
【機械の猫】きっと重要な何かをしってるはず。