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『遠い星の話』  作者: 五木史人
7章 電光石火作戦
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3話 個であって個ではない

『サマルカンド封鎖線・宿営地』




深く椅子に座ったカーン少佐は、自我意識が引き裂かれるような感覚を覚えた。

「意識がコピーされるのではなく、分裂と言って良いでしょう」

そんなことを内務省の技官が言っていた。


「1つだった意識だからこそ、1つの集合体として、完成度が高まるのです」

とも言っていた。



プログラム上の分裂が、どのような状態なのかは不明だが、感覚として意識出来るほどの事が起きているのだろう。


カーン少佐の意思とは関係なく、分裂した意識の塊が、スレンダーな少女型アンドロイドに転送された。


そして、自分の意識の一部が引きちぎられ、感じた事がない程の喪失感が思考回路に満ちた。


転送先のスレンダーな体つきの少女のアンドロイドの動きは、なめらかでスポーツカーの様な感じがした。


すぐにでもフィギアスケートを華麗に滑れそうな勢いだ。



しかし不思議な気分がした。

個であって個ではない。複数の自分だ。


複数の少女のアンドロイドの視線が、剛直な機体のカーンに注がれた。

今はその少女の視線も自分の視線として感じている。


分裂した意識が、互いに干渉しあいネットワークを形成し始めた。


>集合的無意識とはこんな感じなのか?



思考回路の半導体が熱を帯び、幾億の演算をこなしていた。



カーンは5000年前、人として生きていた時代から、最前線で指揮を取る、剛直な男の軍人として存在してた。

その時代から常に身体は鋼の様な筋肉に包まれ、体格も平均の2倍はあった。

その彼の意識の一部は、スレンダーな身体の少女のアンドロイドの中にあった。


良いアンドロイドとはどれだけ人間時代を再現できるかに掛かっている。と言う技術者も多い。


この少女の感覚。

きっと人類時代から受け継いだ人間の少女の感覚なのだろう。


>生々しい。


剛直に男を生きてきたカーン少佐は、そう感じざる得なかった。



「サマルカンド上空の通信衛星によって、少佐とこの少女のアンドロイド群は繋がって降りますので、サマルカンド市内を出ないようお願いします」



と言う内務省技官の言葉に意識を移す事によって、カーン少佐はニヤけそうになった感情を何とか抑えることが出来た。


「もし、出たらどうなる?」


「一応プログラム上では、自動的にサマルカンド支局に戻る様設定されておりますが、それは出来るだけ避けてください。この技術の漏洩は好ましくはありません。」


「了解した・・・・」



カーンは、スレンダーな少女のアンドロイドの視線で、その内務省技官を見ながら疑問が浮かんだ。


そして


「アローン兵も、これと同じ技術を使っていると聞いたが・・・アローン兵への衛星通信傍受を止めれば、奴らの指揮系統は遮断出来るのではないか?」


と。


「現在、アローン兵は我々の関知しない通信手段を用いて、指揮系統の通信を行なっております。」


「内務省の関知しない通信手段とは?」


「現在、調査中です。」




>内務省の関知しない通信施設?民間の通信施設か?

まさかな、民間の通信施設の盗聴傍受暗号解読は、内務省情報局の得意中の得意だ。

絵文字の種類を一番知っているのは内務省情報局員と言われるぐらい。

今や軍の通信すら内務省の管理下にある・・・だとしたら、内務省の関知しない通信手段とは?

そして、その関知しない通信を使っている連中は何者?」


カーン少佐は、自らのシンクタンクに意識を繋ぎ検索したが、何も出ては来なかった。


>今の通信ですら、内務省に盗聴されたかもしれない・・・・


そんな気がして、カーンは内務省技官を見て無性にむかついた。


その思考をリセットするかのように目を一瞬閉じた。


そして、スレンダーな身体の少女のアンドロイドで椅子に座ると、そのスレンダーな足を組んでみた。


初めての少女気分だ。


【剛直なカーン】の何かが壊れて行くような気がした。


現時点では、内務省が関知しない通信施設の事は解らなかったが、乙女の心理が少しだけ解った気がした。



半導体は熱を帯び、まだ幾億の演算を繰り返していた。




つづく



いつも読んで頂き、ありがとうございます。

毎週、日曜日更新でございます。ヾ(*゜∀゜*)ノキャッキャッ♪



【カーン】陸軍所属の少佐 対竜族戦争の英雄

【内務省技官】新機種と呼ばれる人類の記憶を持たないアンドロイド

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