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推しが隣人(2)


玲人の転入は瞬く間に全校生徒に知れ渡り、なんなら隣接校にまで伝わった。当然授業の合間には廊下に見学者が溢れるし、部活動の勧誘や下校時の待ち伏せの列なんかも出来上がった。それに対応する玲人もまたスマートな言動で来客を捌いた。そりゃそうだ。なんて言ったって愛佳の最推しは非の打ち所のないスーパーヒーローなんだから。一度行ったことのある握手会では最初の子から最後の子まで、全然疲れなんて見せずにウルトラハイパー神スマイルを絶やすことがなかったと聞いた。こんな、たかがひとつの高校での騒ぎくらい、なんてことない行事だろう。

(はーーー、玲人くんは『FTF』に居なくてもサイコーの推しだわ……。お呼び出しに対する対応が芸能界いちの神対応……。握手会の時も、メンバーとよそ事しないでずっとファンの方を見ていたって聞いたし、好意を寄せてくれる人には全力で応えたい人なんだろうなあ……)

だからデビュー前も、デビューした後も引退までずっと、玲人は芸能界のトップを走り続けることが出来てきたのだと思う。変な噂も一つも聞かなかったし、秋波を寄せた女性アイドルたちだって、玲人のことを叩かない。酷い醜聞を書き上げることで有名なゴシップ雑誌にだって、玲人の名前は一度も出たことがなかった。

今もチャイムが鳴って、廊下の人だかりの方から席に帰ってくる玲人は微笑みを絶やさない。こんないい人が、『普通の高校生活』を送れないわけがない。天使の輪を乗せ背中に羽の生えた後光が挿して見える玲人が、あはは、と笑って椅子に座った。

「歓迎してもらって、嬉しいなあ。この高校にはいれて良かったよ」

にこにこと笑う玲人は本当に心が広い。朝日よりも眩しい笑顔を向けられて、愛佳は固まった。

なんて!!! 今、なんて応えればいいの!!!

自分の高校を褒めてもらえたのだ。しかし愛佳にとってこの高校はさして特徴のない普通の全日制高校であって、玲人がそんなに喜んでくれるような高校とは思えないのだが……。

「そ……、そっかな……。そう言ってもらえると、在校生としては嬉しい、かな……」

ようように言えたのはそんな返事。それでも玲人は微笑みを絶やさずに愛佳の返事を聞いてくれた。

(神か……!!!)

愛佳は本日何度目になるか分からない推しの尊さに、心の中でむせび泣いた。



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