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追放された『泥水』錬金術師、隣国で精霊スープ屋台を開く。国王もハマる「悟りの味」と大繁盛! 一方、俺を捨てた祖国は水が消え泥を啜る地獄絵図、今さら戻れと言われても絶対帰りません!

CWAVE の第一・第三日曜 21:30-22:00

「みちこの寄り道くまもと話」投稿テーマが「おつまみ」と言うことで、投稿原稿書いてるつもりがこんなストーリになりました。

ラジオで読んでいただくことが目的でもなく、自身の不思議な感覚といただいた「おつまみ」を組み合わせてみました。

ご丁寧にみちこさんが意見までいただいた。

御指摘いただくとは思ってもいませんでした。3遍のストーリを一つにまとめ、記念にアップしておくつもりなのが始まりです。

第6章 精霊の残り湯は悟りの味 ~「泥水」と呼ばれたスープの真実~


 隣国、商業都市ガラド。

 活気あふれる中央広場の一角に、異様な熱気を孕んだ長蛇の列ができていた。

 最後尾の看板には『待ち時間:四時間』と書かれているが、誰一人として帰ろうとはしない。彼らの目は血走り、口元からは涎が垂れ、禁断症状にも似た渇望が滲み出ている。


「早く……俺に『悟り』をくれぇぇ!」

「三日並んだんだ! 今日こそは極上の『泥』を啜らせろ!」


 狂気じみた客たちの視線の先にあるのは、ボロボロの屋台が一軒。

 屋号はない。ただ、漂ってくる香ばしくも複雑怪奇な匂いが、道行く人々の脳髄を直接揺さぶっていた。


 屋台の主である俺、錬金術師リュカは、額の汗をぬぐいながら巨大な寸胴鍋をかき混ぜていた。

 鍋の中身は、お世辞にも美しいとは言えない。

 茶色く濁り、底が見えないほど濃厚なおりが舞う、まさに泥水のような液体だ。


 だが、その湯気の中には、黄金色に輝くテニスボールほどの物体が、プカプカと気持ちよさそうに浮いている。

 フワフワの毛並みを持つ謎の生物――伝説の精霊である『毛玉』様だ。


「へい、お待たせしました。『特製・悟りスープ』一丁」


 俺が木製のお玉で茶色い液体を掬い、器に注ぐ。

 客の男は、まるで聖杯を受け取るかのように震える手でそれを受け取った。


「こ、これが噂の……いただきます!」


 男が勢いよくスープを呷る。

 その瞬間、男の全身がビクンと跳ね、白目を剥いて天を仰いだ。


「あぁぁぁ……! 身体中の毒素が抜けていくぅぅ……! 借金の悩みも、腰痛も、妻の浮気も、宇宙の真理の前では塵に等しい……!」


 男の背中から、どす黒いモヤのようなものがシュウウウと立ち昇る。負の感情だ。

 鍋の上に浮かんでいた毛玉が、その気配に反応して『パクリ』と虚空を齧った。


『ウマイ。コノ男、ナカナカノ絶望ヲ抱エテオル。コクガアッテ、良イ』


 脳内に直接響く念話。

 毛玉は満足げに身をよじり、チャプンとスープの中に潜った。


「ありがとうございます! 明日からまた生きていけます!」

 男は涙を流しながら、代金として金貨を置いていった。相場の十倍だ。


 俺はため息をつきつつ、次の客を呼ぶ。

 これが俺の日常だ。

 かつて祖国で「泥水しか作れない無能」と罵られ、追放された俺は、今や隣国で最も予約の取れないスープ屋の店主となっていた。


          ◇


 昼のピークが過ぎた頃、護衛の騎士を引き連れた一人の紳士が現れた。

 この国の国王、フェルディナンド陛下だ。彼もお忍びで通う常連の一人である。


「やあ、リュカ殿。今日も精が出ますな」

「陛下。いらっしゃいませ」

「いつもの『特濃』を頼めるかな? 最近、隣国からの難民対応で頭が痛くてね」


 陛下は苦笑しながら椅子に座った。

 俺は鍋の底の方、特にドロリと濁った部分を丁寧に掬い上げる。

 錬金術における『分離と抽出』の技術を応用し、旨味成分が凝縮された一番濃い部分を提供するのだ。


「どうぞ」

「おお……この香り、たまらん」


 国王陛下は、庶民が見れば卒倒しそうなほど下品な音を立てて、茶色い液体を啜った。

 ほう、と至福の吐息が漏れる。


「素晴らしい。脳のしわ一本一本にまで染み渡るようだ。イライラが嘘のように消えていく」


 陛下の背中から出たストレスの黒い煙を、再び毛玉がパクパクと食べる。

 毛玉にとって、王族の抱える高尚な悩み(ストレス)は高級フレンチのような味わいらしい。


「そういえばリュカ殿。君を追放した祖国の噂を聞いたかね?」


 スープを飲み干し、穏やかな賢者モードに入った陛下が口を開いた。


「いえ。興味がありませんので」

「そうか。まあ、君にとっては痛快な話だろうがね。あそこは今、地獄だよ」


 陛下が語るところによると、俺がいなくなってから数日で、祖国の水源という水源が腐り果てたらしい。

 井戸水はヘドロに変わり、川は干上がり、作物は全滅。

 さらに恐ろしいのは、人々の精神崩壊だ。

 この毛玉――大地の精霊が放つ『浄化の波動』がなくなったことで、国民全員が些細なことで激怒し、争い合う修羅の国と化したそうだ。


「君を『泥水野郎』と罵ったあの若き新国王も、今では渇きに耐えきれず、本当に道端の泥水を啜っているらしいよ。『あの茶色いスープを……あれこそが至高の霊薬だったのだ……』と、うわ言のように呟きながらね」


 陛下は肩をすくめた。

 皮肉な話だ。

 俺が宮廷で作っていた時、彼は見た目の悪さだけでそれを捨てた。その中身こそが、国を支える守護神の恵みだったとも知らずに。


「おかげで我が国には、優秀な人材や商人が雪崩れ込んできている。全てはリュカ殿、君と君の相棒のおかげだ」

「もったいないお言葉です」

「どうだね? 改めて宮廷錬金術師として迎えたいのだが。もちろん、給金は言い値で」

「お気持ちは嬉しいですが、俺は今の生活が気に入っています。この小さな屋台で、目の前の客の顔を見ながらスープを作る。それが性に合っているんです」


 俺が断ると、陛下は残念そうにしつつも、満足げに頷いた。


「欲のないところも君らしい。……では、おかわりを貰えるか? 今度はもっと、こう、ドロドロしたやつを頼む」

「承知しました」


          ◇


 夕方になり、スープが完売して店じまいをした後。

 俺は屋台の裏で、寸胴鍋の後片付けをしていた。


 鍋の中には、ほんの少しだけ残った茶色い液体と、満足して眠っている毛玉がいる。


『……ムニャ。今日の人間どもの負の感情、なかなかデリシャスであった……』


 寝言を漏らす毛玉を、俺は優しく鍋から取り出し、清潔なタオルの上に置いた。

 そして、空になった寸胴鍋を見つめる。


 鍋の底には、ヘドロのような茶色い沈殿物がびっしりと張り付いていた。

 俺はホースで水をかけ、タワシでゴシゴシとその汚れをこすり落とす。


「ふぅ……今日もすごい量だな」

ストーリーはどうでしたか?私の創作はまだまだ続くよ。

少しでも楽しんでいただけて、良い暇つぶしになっていたら嬉しいです!


実は、もっとみんなと作品についてお喋りしたくて、ミクチャで平日17時から19時くらいで配信をしてます。ただし、創作優先&リアル優先で、おやすみあり イベント目的じゃないからアイテムいらないよ

感想を聞かせてもらったり、創作の裏話をしたり……そんな双方向のやりとりができるのを楽しみにしています。


**ミクチャID:18283637**


ぜひ検索して覗きにきてくださいね。

それでは、また次のストーリーでお会いしましょう!

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