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「泥水」と罵られ追放された宮廷錬金術師、実は国の要石でした~伝説の精霊(毛玉)がついてきて、隣国の「悟りのスープ屋」始めて、国王陛下も常連に。一方、故郷の城は水が腐って阿鼻叫喚〜

CWAVE の第一・第三日曜 21:30-22:00

「みちこの寄り道くまもと話」投稿テーマが「おつまみ」と言うことで、投稿原稿書いてるつもりがこんなストーリになりました。

ラジオで読んでいただくことが目的でもなく、自身の不思議な感覚といただいた「おつまみ」を組み合わせてみました。

ご丁寧にみちこさんが意見までいただいた。

御指摘いただくとは思ってもいませんでした。3遍のストーリを一つにまとめ、記念にアップしておくつもりなのが始まりです。


第2章 絶望を食む黄金の毛玉と、心洗われる泥水スープ


 国境付近の森。

 夜の帳が静かに下り、世界は漆黒の闇に包まれていた。

 聞こえるのはパチパチと焚き火が爆ぜる音と、遠くで鳴く夜鳥の声だけ。冷たい風が木々を揺らし、カサカサと乾いた音を立てて通り過ぎていく。


 俺、リュカは枯れた切り株に腰を下ろし、冷めかけたブリキのマグカップを両手で包んでいた。

 中身は、城からこっそり持ち出した、俺が作った最後のスープだ。


 ――君の作ったスープは泥水だ。


 昼間、玉座の間で投げつけられた罵声が、まだ耳の奥で反響している。

 新しく即位した若い国王の、あの蔑むような視線。周囲の貴族たちの忍び笑い。

「錬金術師を名乗りながら、出てくるのは野暮ったい野菜の煮込みだけ。派手な爆発もなければ、金を精製することもできない。君はただの無能だ、リュカ」

 そう言い放たれ、俺は国外追放を言い渡された。


「はぁ……」


 深いため息をつくと、白く濁った呼気が焚き火の煙と混じり合った。

 やっぱり、俺の技術が低かったのだろうか。

 父の代から宮廷に仕え、ただひたすらに「人々の心身を整える」ための錬金術を研鑽してきたつもりだった。

 派手さはない。でも、毎日飲んでも飽きない、明日への活力が静かに湧いてくるようなスープを目指していた。

 だが、その結果がこれだ。十年も働いて、手元に残ったのはこの一杯の残りのスープと、着の身着のままの薄汚れた服だけ。


「……寂しいな」


 ふと漏れた言葉が、夜の森に吸い込まれて消える。

 孤独だ。

 圧倒的な無力感と、将来への不安が押し寄せてくる。この先、どうやって生きていけばいい? 隣国まで辿り着けるだろうか? そもそも、俺なんかが生きていて意味があるのか?


 胸の奥にどす黒い感情が渦巻く。

 まるでタールのように粘着質な自己嫌悪が、心臓を鷲掴みにしているようだった。

 俺はマグカップを口元へ運ぼうとした。せめて腹を満たして、この惨めさを誤魔化そうとして。


 その時だった。

 マグカップから立ち上る湯気が、奇妙な動きをしたのは。


 ゆらり。

 風もないのに、湯気が一本の糸のように真っ直ぐ天へ伸びる。

 かと思えば、その糸が螺旋を描き、黄金色に輝き始めたのだ。

 最初は蛍火のような淡い光だった。だが、それは瞬く間に凝縮し、確かな「質量」を持ち始めた。


「……え?」


 俺の目の前で、光り輝く湯気がポンッと弾ける。

 現れたのは、ソフトボール大の「毛玉」だった。


 フワフワの、黄金色の毛むくじゃら。

 目も口も鼻もない。ただ、見るからに温かそうな毛並みをした球体が、重力を無視して宙に浮いている。

 そいつは俺の持っているマグカップの上でプルプルと震え、まるで匂いを嗅ぐように俺の顔のすぐ前にすり寄ってきた。


『……』


 声は聞こえない。耳で聞く音は何もない。

 だが、俺の脳内に直接、何かが触れる感触があった。柔らかく、しかし絶対的な存在感を伴って、イメージが流れ込んでくる。


 ――ズズズッ。


 そいつが何かを啜った音がした。

 だが、マグカップの中身は減っていない。

 減ったのは、俺の心の中にあったものだ。


「あっ……」


 さっきまで胸を塞いでいた「自己否定」。

 過去を悔やむ「後悔」。

 未来を恐れる「孤独」。

 それらのドロドロとした負の感情が、まるで極上のスープのように、その毛玉に向かって吸い込まれていくのが見えた(いや、感じた)。


 毛玉の毛並みが、より一層鮮やかな金色に輝きを増す。

 まるで、俺の不幸が最高の栄養分であるかのように。


「お前……食べてるのか? 俺の不安を、絶望を」


 俺が問いかけると、毛玉がプルンと愛らしく震えた。

 肯定だ。

 直後、啜られた虚無感を埋め合わせるように、強烈な奔流が脳を揺さぶった。


 ドォォォォン……!

 頭の中に鐘の音が響く。いや、それは鐘の音ではない。もっと根源的な振動だ。


 《大地の鼓動》。

 深く根を張る巨木が吸い上げる、滋養に満ちた水脈のイメージ。

 《循環する清らかな水》。

 雲となり、雨となり、川となり、海へと還る壮大な命のサイクル。

 そして、それら全ての一部である自分。


 《全ては些細なことであるという、絶対的な安心感》。


 視界が白く染まるほどの幸福感が、脊髄を駆け上がった。

 それは快楽ではない。「平穏」の極致だ。

 宮廷を追い出されたこと? 些末なことだ。

 明日食べるものがないこと? 世界が巡ればなんとかなる。

 無能だと罵られたこと? 他者の評価など、風に舞う木の葉と同じだ。


 まるで、高い山の頂で澄み切った風に吹かれているような、あるいは深海で静寂に抱かれているような、完全なる静謐。


「あ……ああ……」

ストーリーはどうでしたか?私の創作はまだまだ続くよ。

少しでも楽しんでいただけて、良い暇つぶしになっていたら嬉しいです!


実は、もっとみんなと作品についてお喋りしたくて、ミクチャで平日17時から19時くらいで配信をしてます。ただし、創作優先&リアル優先で、おやすみあり イベント目的じゃないからアイテムいらないよ

感想を聞かせてもらったり、創作の裏話をしたり……そんな双方向のやりとりができるのを楽しみにしています。

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