「泥水」と罵られ追放された宮廷錬金術師、実は城の水を浄化する要石だった。彼が去った瞬間に王城の水は腐り果て阿鼻叫喚、一方の彼はついてきた精霊たちと黄金のスープ屋を始めます
CWAVE の第一・第三日曜 21:30-22:00
「みちこの寄り道くまもと話」投稿テーマが「おつまみ」と言うことで、投稿原稿書いてるつもりがこんなストーリになりました。
ラジオで読んでいただくことが目的でもなく、自身の不思議な感覚といただいた「おつまみ」を組み合わせてみました。
ご丁寧にみちこさんが意見までいただいた。
御指摘いただくとは思ってもいませんでした。3遍のストーリを一つにまとめ、記念にアップしておくつもりなのが始まりです。
##第1章 黄金の湯気と、王城の渇き
俺が歩き出すと同時だった。
天井の高い厨房の梁の隙間から、何千、何万という微細な光の粒子が、雪のように舞い降りてきた。
それは埃のようにも見えたが、もっと温かく、明確な「意志」を持った光だった。
光の粒は、まるで磁石に吸い寄せられる砂鉄のように、俺の持つマグカップから立ち上る湯気の後を追尾し始めた。
さらに、厨房の水道の蛇口から、ポタ……ポタ……と雫が落ちる音が止まる。
常に満たされていた洗い場の水桶の水位が、音もなく下がり始めていた。
まるで、水そのものが俺の後を追おうとしているかのように。
俺は廊下を歩く。
すれ違う衛兵たちが、俺を見てギョッとした顔をする。
だが、彼らが驚いたのは、俺が追放されたことではない。俺の背後に、うっすらと黄金色の靄のようなものが付き従っているように見えたからだ。
精霊の姿が見える者には、それが無数の小さな水の精霊たちの行列に見えたかもしれない。
「り、リュカ様……? その後ろの……」
「ああ、気にしないでくれ。ただの湯気だ」
俺は力なく笑って答えた。
自分でも、それが何なのかまだ分かっていなかった。
ただ、妙に背中が温かい。孤独なはずの退城の道が、まるで大勢の友に見送られているような、不思議な安堵感に包まれていた。
城門をくぐり、王都の石畳を踏みしめる。
振り返ると、夕日に染まる王城が黒いシルエットとなって聳え立っていた。十年間、全てを捧げた場所。
「……さようなら」
俺は小さく呟き、王都を背にした。
もう戻ることはないだろう。どこか静かな田舎で、本当に美味しいスープ屋でも開こうか。
そんなことを考えながら、俺は一歩を踏み出した。
その直後である。
城内で最初の「異変」が起きたのは。
厨房に残されたアレクセイ王が、リュカを追い出した高揚感と、喋りすぎたことによる喉の渇きを覚えて、近くにあった銀のグラスを手に取った。
中には、王都自慢の名水である、清冽な井戸水が注がれていたはずだった。
「ん……? なんだ、この水は」
王が口に含んだ瞬間、顔をしかめて「ぶっ!」と派手に吐き出した。
水が、腐ったような生臭さを放っていたのだ。
グラスの中を見ると、さっきまでクリスタルのように透明だった水が、灰色に濁り、ドロリと澱んでいる。
「おい! なんだこれは! 料理長、腐った水を出したのか!」
「め、滅相もございません! 汲みたての最高級の湧き水です!」
ガストンが慌てて別の水差しから水を注ぐ。
だが、注がれた瞬間、その水もまた瞬く間に灰色に変色し、耐え難い腐臭を放ち始めた。
いや、それだけではない。
洗い場の桶の水が、茹でる前の野菜を浸していた水が、すべてドス黒く変色していく。
「ヒッ……!」
下働きの少年が悲鳴を上げた。
彼の手元では、瑞々しかった野菜が、まるで水分そのものを奪われたように一瞬で茶色く変色し、しなしなに萎びていた。魚は眼の色を失い、肉は干からびていく。
「どうなっているんだ!? おい、誰か説明しろ!」
アレクセイ王が喚き散らす。
だが、誰も答えられない。厨房はパニックに陥っていた。
この城の水が、いや、水に宿る「清浄なる加護」そのものが、たった今、この城を見限って出て行ってしまったことに、気づく者はまだいなかった。
彼らが嘲笑い、追い出した「泥水」こそが、すべての水を清く保つための要石だったのだ。
混乱する城内とは対照的に、城門を出て行くリュカの持つマグカップの中だけが、黄金色に輝く清らかなスープで満たされていた。
それは、失われた祝福そのものだった。
ストーリーはどうでしたか?私の創作はまだまだ続くよ。
少しでも楽しんでいただけて、良い暇つぶしになっていたら嬉しいです!
実は、もっとみんなと作品についてお喋りしたくて、ミクチャで平日17時から19時くらいで配信をしてます。ただし、創作優先&リアル優先で、おやすみあり イベント目的じゃないからアイテムいらないよ
感想を聞かせてもらったり、創作の裏話をしたり……そんな双方向のやりとりができるのを楽しみにしています。
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ぜひ検索して覗きにきてくださいね。
それでは、また次のストーリーでお会いしましょう!




