エピローグ ~××と
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
その後の雫と駿のお話を載せて、エンドとさせていただきます。
『クリスマスにERABLE HOTEL の最上階のバーラウンジでプロポーズをしたら100%成功する』
今、テーブルの向こうに座っているのは、生まれた時からずっと一緒に育ってきた幼馴染みであり、恋人の雫だ。
高等科卒業まで伸ばしていた前髪は、眉毛が隠れる長さに切られ、背中まであったストレートの黒髪は毛先にパーマがかけられている。
大学生らしくメイクも上手くなった。
今日はクリームイエローのカシミアのセーターにウールの膝丈タイトスカート。
濃紺のスカートと黒のショートブーツの間の肌の色がひと際白く見える。
一方の駿はブラックスーツでバシッと決めている。
茶髪のセンター分けツーブロックの髪形は高等科から変わらない。
今日は前髪がワックスで上げられ、少しワイルドさをプラスした雰囲気を醸し出している。
ウエイターがシャンパンを注ぎに来た。
「今日は運転しないから飲めるね」
雫は、テーブルに置かれたルームキーにチラッと視線を向けた。
大学は当初希望したところではなく、通学圏内にある都内の私立大学で、「毎朝一緒」に登校しているのだ。
雫は薬学部で、駿は工学部。
来春卒業の駿は大学院には進まず、卒業後久賀建設に勤めることが決まっていて、薬学部の雫はあと2年大学に通わなければいけない。
高等科2年生のバレンタインの日にお互いの気持ちを伝えあって以来、他の異性が近寄る隙もないくらいアツアツである。
雫と駿の両親もすっかり親戚としてのつき合いをしている。
母親同士は自分たちが長年思い描いてきた夢が叶って、嬉しくて仕方がない様子だ。
雫は、この日に、この場所を選んだ駿の思いを十分理解していた。
目の前のシャンパングラスに注がれた炭酸の泡が、次々と水面に上がっていくのを「綺麗だね」と言って眺めている。
「夕べ、北原先輩からメールが届いたんだ」
高等科では雫と大介が偽装恋人の関係でつき合っていて、そんな2人を横目で見ていた駿だった。
それが、大介とリオが計画通り渡米してからは、雫よりも駿と大介が親友のようになっていた。
現在、大介はアメリカの医学部に通い、リオは大学病院で医師として働いている。
今日のことも大介には伝えてあり、「ちょっと早いけど、おめでとう」とメッセージを貰っていたのだ。
「先輩とリオさん、元気にしてるって?」
「うん。プレメディカルの4年をストレートで終えたから、次の4年のメディカルスクールに通えるって。順調みたいだよ」
「むこうは8年だから、わたしのほうが先に卒業ね」
高等科の頃の話、そして大学での話を豪華なフレンチディナーを味わいながら振り返って語り合った。
その食事も綺麗に平らげてテーブルの食器が片付けられてから、ERABLE HOTEL の50代くらいの副支配人が両手いっぱいの真っ赤な薔薇の花束を、そしてバーラウンジのパティシエが花火を灯したホールケーキを運んできた。
真っ赤な薔薇の花束を駿が受け取り、テーブルにケーキがパチパチと火花を散らせながら置かれた。
準備は整った。
駿は雫に大きな花束を渡す。
「ありがとう」
雫がバラの花束を受け取って、顔を埋めると胸いっぱいにその香りを吸い込む。
それをたっぷり見てから、駿が雫の前に跪いた。
薔薇の花束をテーブルに置くと、彼のひと言を期待して少々緊張する。
駿が胸ポケットから小さなリングケースを取り出して、雫に向けてその蓋を開ける。
「大河内雫さん。オレと一緒にこれからも生きてください」
キラキラ輝く2人の瞳が重なった。
「はい。ずっと、ずっと隣にいてください」
雫が左手を差し出すと、駿がその薬指にすっと滑らせた。
「10歳の時、駿がかけた魔法は本物だったよ」
「えっ?」
「だって、あの時、わたしが願ったことはね…
『駿のお嫁さんになれますように』
ー完ー
46話という長い物語を、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。
「キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!」は、私にとって大切な挑戦の作品でした。
登場人物たちが出会い、悩み、選んだ未来を、皆さまと共有できたことを心から嬉しく思います。
この物語が、誰かの心に小さな灯りを残せていたなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。
また次の物語でお会いできる日を楽しみにしています。
本当にありがとうございました。
《ちょっと宣伝》今回の作品よりも少し大人の切なく甘い恋の物語「いつかの先に逢えるまで~神子様との同居は期間限定?」を全104話完結済みで公開してます。スッキリとハッピーエンドに仕上げてあります。覗いてくださると嬉しいです。
静林




