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キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


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謎とチョコは溶けるもの 2

「そしてこちらの男性が、雫さんの本当の想い人なのネ」


 雫はハハハと笑って誤魔化した。

 駿は自分だけが事情を把握していないことで少々戸惑っているが、目の前の「美女」が何者か探るようにじーっと見ている。


「まだわからない?」


 「植村サン」がテーブル越しに駿に顔を近づけるが、駿には「何がわかってないのか」がわからない。

 首を傾げて目の前の「美女」を見る。


 すると、「植村サン」が小さなハンドバッグからカードケースを取り出して、テーブルの上にポンッと置いた。


『京都医療大学 医学部 医学科 植村遼』


 学生証の植村遼はどう見たって「男性」の植村遼だ。

 その写真と目の前の「女性」を交互に見て、「ええっ!!」と叫んでしまった。


「うそ!」


 「植村サン」は「そういうこと」と駿にウインクして、学生証をバッグにしまった。


「この姿の時は『リオ』って呼ばれてるのヨ。だから今日も『リオさん』でお願いネ」


 東京で会うときは『リオ』でいれば、万が一父親に知られても相手が「女性」なら安全だろう、と始めた女装がすっかり自分でも気に入ってしまったのだ。

 大介は「どっちの姿でも構わない」と言う。


 駿は鳩が豆鉄砲を食らったような顔で、ポカーンと口を開け、コクリと頷いた。

 その様子を見ていた大介が堪えきれずに笑う。


「メッチャ美人だろ?」


 リオに見惚れる駿をハッとさせた。


「こ、これからどうするんですか?」


 咄嗟に口から出た言葉が偶然にも核心を突いていた。

 雫も「そうですよ」と頷く。


「先輩のお父さんにバレませんか?」


 大介とリオが顔を見合わせる。


「ワタシは来年、医師国家試験を受けて大学を卒業するの。その後アメリカの医師国家試験も受けるつもりヨ。駿もむこうの大学を受けるの」


 微笑み合う2人。

 テーブルの上で手を重ねている。


「むこうは同性婚が認められているくらい自由だから、そこで暮らしていくワ。骨を埋める覚悟でネ」


 大介とリオが確かめ合うように頷き合う。


「そうですか。もう計画を立てて、前に進んでるんですね」

「雫にはちゃんと話しておこう、ってリオとも決めてたんだ。それに、久賀くんもずっと気を揉んでただろうから、全てを打ち明けないと納得できないだろう?」


 リオが気になるのか、駿は彼女をチラチラ見ながら頷く。


「オレ的には話してもらって良かったです。雫が二股で、弄ばれてるんじゃないかって心配してたんで」


 ここで直径46センチの巨大ピザがテーブルに運ばれてきた。

 8等分しても1人2枚を食べきれるのか、不安になるサイズだ。

 同時に運ばれてきたコーラもキングサイズだった。


 それを食べながら、雫が今までのいきさつをかいつまんで駿に話した。


「そりゃあ、オレにも話せないよな」


 そして、これからのことを話し合った。

 北原の父親に将来のことを知られたら、ぶち壊されるのが目に見えるので、絶対に悟られないようにする、と大介は言う。


 一方、母親のほうは大介が幸せになれるのならば、金銭的援助は惜しまないと言い始めているらしい。

 息子と縁を切るくらいなら、「北原の家を出る」とまで考えてると大介が言った。


「そうですか。先輩が安全に京都に行けるように、卒業までわたしが彼女のままでいたほうがいいみたいですね」


 ここまで完璧にしてきたのだから、あと2週間続けようと結論付けた。 

 事情を知った駿ももちろん反対しない。



「じゃあ、俺たちは2人でバレンタインと合格祝いをするから、ここで別行動だ」


 大介が駿に親指を立てて「そっちも頑張れよ」とエールを送る。

 雫は思い出したように、リュックから小さな包みを取り出して大介に渡した。


「これ、バレンタインのチョコです。本命じゃないんで、2粒しか入ってませんけど」

「ありがとう。リオと一緒に食べるよ」


 大介とリオが幸せそうに視線を絡めた。


 秘密を共有した4人がこうして顔を揃えることは、この先ないかも知れない。

 それでもずっと連絡を取り合うことを約束して別れたのだった。



 雫と駿は、バレンタインのポップとハートのオブジェが溢れた東京の街を手を繋いで歩いた。


「ごめんね。先輩とリオさんのこと話せなくて」

「随分心配したし、オレなりに雫が話してくれない理由を、いろいろ考えたりしたんだ。雫がものすごく厄介なことに巻き込まれてるんじゃないかとも考えたよ」


 繋いでいる手をもう片方の手で擦る。


「でも、さっき聞いた内容だと、雫の判断でオレに話すことはできないよ。それに雫は絶対に約束を守るからな」

「そうでしょ。先輩が話すつもりがないのなら、わたしは一生誰にも言わなかったと思うよ」

「雫らしいな」


 2月の空気は冷たいが、繋いだ手は温かい。


「そういえば、オレにチョコは?家に帰ってから貰えるのかな?」

「ううん。持って来てる。せっかくのバレンタインデートなんだから、デート中に渡したいじゃない」


 大介に渡した物より数倍大きな包みをバッグから取り出した。


「開けていい?」

「ダメ!手紙も入ってるから、家に帰ってから開けて」


 雫からの手紙なんていつ以来だろう?

 手紙の内容を知りたくてすぐに開けたいところだが、ここはぐっと我慢する。

 バレンタインチョコと一緒に渡されたのだから、マイナスな内容ではないだろう、と解釈した。


「今年も雫の手作り?」

「うん。愛華と知世子も一緒に作ったの」

「そっかあ。じゃあ、安則と同じチョコってわけだな」


 少々不満そうな表情をするが、一緒に作ったのなら仕方がない。

 それよりも、やはり手紙が気になる。


 目的地を決めて東京に来たわけではないので、ただ手を繋いで歩くだけになっている。

 それでも全く退屈ではないのだ。

 お互いに、繋いだ手の温もりに心地良さを感じながら歩いていると、百貨店のショーウィンドウに大きなハートの風船が飾られているのを見つけた。


「ねえ、あの風船の前で写真を撮ろうよ」


 そう言うと、雫が繋いでいる手を引いて走り出した。

 斜め前を走る雫のストレートヘアが揺れる。


次回、ついに、ついに、ついに…です。

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