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キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


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謎とチョコは溶けるもの 1

 2月14日、バレンタインデーの10時にインターネットで大介の合否が発表されると聞いていた。

 雫は、朝起きた時からスマホを握りしめ、10時までたっぷり時間があるというのに「まだかなあ」と家の中を歩きながら何度も彼からのメッセージを確認しているのだ。


「雫、スマホを見ながら歩き回るのを止めなさい。まだ8時45分でしょ?」


 娘の落ち着かない様子が気になるのか、15分ごとに母が声をかけてくる。


「うん。わかってるんだけどぉ…やっぱり気になるじゃない?もしかしたら、受験者本人には先に通知が届くかも知れないし」

「そんな話、聞いたことがないよ。お友達の合格発表でそんな風になるんだったら、来年、自分の時は前の晩から一睡もできないわね」


 今日は平日なのだが、東川北学園の入学試験が実施されるため休みなのだ。

 バレンタインが休校になって、恋人がいる学生は大喜びの一方で、「もしかしたら義理でも貰えるかも」と期待していた学生はガッカリしていた。


 雫は10時に大介から連絡をもらったらチョコを渡すために彼に会い、駿には昼食後に渡しに行くからと伝えてある。


 そして10時になって10も数えないうちに大介から「合格」と、待ちに待ったメッセージが届いたのだ。


「やったぁ!!」


 店先にまで聞こえるほどの声で喜びを爆発させた。


   ”おめでとうございます。わたしも最高に嬉しいです!”


 素早くスマホに打ち込んで気持ちを伝えると、すぐに大介から電話がかかってきた。


「雫、合格したよ!!ついに京都に行けるんだ!!」


 普段冷静な大介からは想像できないくらい声が弾んでいる。

 少し涙ぐんでいるのかも知れない。


「おめでとうございます。本当に良かったです。連絡したい人に伝えました?」


 それはもちろん、「植村サン」である。


「一番に。それで、昼から予備校の先生に報告に行きたいんだけど、一緒に行かない?雫とデートしたいし」


 これは雫と大介で事前に決めた隠語である。

 「予備校に報告するから一緒に行こう」というのは、「植村サンに会いたいから、東京に行こう」という意味だ。

 きっと大介の両親のどちらかが聞き耳を立てているだろうから、わざと大きめの声で話しているのだ。


「わたしが一緒でも良いんですか?」

「いいよ。久賀くんも一緒のほうがいいんだけど」


 駿にも「植村サン」のことを明かすのだと、雫は理解した。


「わかりました。駿も一緒に行くように声をかけますね」

「うん。早くスッキリさせてあげなきゃ、可哀想すぎる」

「もし、駿が一緒に行けなくても、わたしは先輩と一緒に東京に行きますから」


 おそらく雫が「植村サン」に会えるのは、これが最初で最後だろう。

 1度は会って話をしたいと思ってきた。


 駿には大介からの誘いのことは言わずに、「北原先輩、合格したよ。昼からわたしと東京でバレンタインデートしない?」と送った。

 2秒でスマホの通知音が鳴った。


   ”行く!”

   ”じゃあ、1時に桜木駅改札口で待ち合わせね”


 大介にも1時に駿と桜木駅で待ち合わせをすることになった旨を伝えると「俺もそこで合流する」と返ってきた。


 雫は、駿が全てを知ることで、これからは「言えない辛さ」を感じなくて済むのだと、少し嬉しかった。


ー駿、先輩のことをどう思うかなぁ。


          *          *


 桜木駅で雫を待っていた駿は、そこに大介も現れたことで明らかに不機嫌になった。

 駿の表情が曇ることは想定済みである。


「北原先輩、大学合格、おめでとうございます」


 抑揚のない言い方が可笑しかったのか、大介が吹き出した。


「ありがとう。あとちょっとだけ、我慢してよ」


 その意味がわからないまま雫と大介の後について電車に乗り込んだ。


 東京までの電車内でも、喋っているのは雫と大介で、駿はときどき「ふ~ん」とか「そうなんだ」などと興味のない相槌しか返さない。


ーデートって2人でするもんじゃなかったっけ?もしかして、オレは見せつけられるのか?


 気分は良くないが、雫が「バレンタインデート」と言ったのだから、付いて行くしかない。


 東京に着くと、お洒落なNY風ピザ屋に入った。

 ウインドウ越しに職人がピザ生地を空中で回転させているのが見える。


「あっ」


 思わず声を漏らしたのは駿である。


 目の前に座っていた女性が振り向き、それが夏に渋谷で大介と身を寄せ合っていた「あの」女性だったからだ。


「お待たせ」


 大介の声で立ち上がって「合格おめでとう」と彼に駆け寄って首に腕を回して、抱きついたのだった。


「うん、やっと京都に行けるよ」


 そんな2人を、目を細めて微笑む雫と、呆然とする駿が横に立って見ていた。


「あ、えっと…」


 2人の世界の邪魔はしたくないが、レストランで抱き合うのはどうなんだろうか、と思った駿がほとんど消えそうな声で大介に言った。


「ああ、ごめん。まあ座ろうか」


 大介の隣に「植村サン」、その向かいに雫と駿。

 「植村サン」が店員に「トッピングはベーコンとオニオン、マッシュルームで、18インチのを1枚」と注文する。


 ピザが届くまでの間、駿は正面に座る「植村サン」から品定めするかのようにジロジロ見られていた。


 改めて、大介が「こちらがあの『植村サン』です」と紹介する。


「お会いしたかったです。北原先輩から聞いていた通り、お綺麗なかたで」

「ワタシも、雫さんに会いたかったワ。大介のために『彼女役』を引き受けて、ちゃんと演じてくれてありがとう。この姿はSNSにも揚げてないから、見るのは初めてよね」


 大介の父親がチェックしても、目の前の「植村サン」には辿り着かないように、ネット上には素顔しか載せていなかったのだ。


「はい。話では聞いていたのですが、もっと…こう…わかるものだと思ってました」


 「植村サン」の横で大介がニコニコしながら聞いている。

次回、「植村サン」の正体が明かされます。

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