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キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


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学園祭は戦場です 5

 各部10名が選手として登録され、雫は第1走者の愛華からバトンを受け取ることになっている。

 愛華はまだしも、雫の目標はただ「次の走者まで順位を落とさずに走ること」のみだ。

 そんな雫のもとに大介が来てくれた。


「大丈夫。俺が応援してるから」


 そう言って雫の背中をトントンと軽く叩いてキャラメル1粒と、パワーを渡してくれた。

 その様子を、目に炎を燃やした幼馴染み、そして恋のライバルが遠くから見ている。


「駿、頑張ろうね。私、ちゃんとバトン渡すから」


 美玲が駿の腕を擦りながら甘い声をかけた。


「うん。今年は絶対に優勝しような」


 去年は陸上部に優勝を奪われ、今年は大介に雫を取られているのだ。

 2つの意味で負けるわけにはいかない。


 駿は第9走者、大介は第10走者、つまりアンカー。

 できれば同じ土俵で戦いたかったが、走順は選手登録が終わってから公表されるので仕方がない。


ーまさか、3年生がアンカーかよ。


「位置について、よーい」


 パアン!!


 号砲とともに第1走者が一斉にスタートし、みるみるうちに上位グループとその他の差が広がっていった。


 中等科は半周でバトンを渡すが、高等科は1周400メートルでバトンパス、アンカーは2週800メートルを走るのだ。


「あいかぁー!あいかぁー!」


 雫は大きく手を振って愛華の名を連呼し、12チーム中9位でバトンを引き継いだ。

 バトンを受け取って最初のカーブで既に足にきている。


ーもうだめ。足がもつれる。


 雫にとって400メートルの全力疾走は拷問であり地獄以外のなにものでもない。


ーあと少し。


 最終コーナーを曲がって直線コースに入った瞬間、駿が「雫、頑張れ」と叫んでるのが見えた。

 目と目が合っても、笑顔を見せる余裕は、ゼロ。


ーきっと、今のわたし、必死の形相だろうなあ。

 

 それでも1つ順位を上げて第3走者にバトンを渡せたのは、駿の応援のおかげに違いなかった。


 そしてあれよあれよいう間に第8走者として美玲が走り出す。


 サッカー部のマネージャーだけあって、フォームも整っているし、何より速い。

 風を切って走る姿を見せつけられていると、悔しいけど「カッコ良い」と思う。

 トップの陸上部とほとんど差がない。

 ほぼ同時に駿にバトンを渡した。


 雫は茶道部の助っ人講師の応援をしながら、心の中で「駿、頑張れ!」と叫んでいた。

 その時、陸上部を抜いて1位に躍り出たのである。

 雫は握り拳を作って「よっしゃぁ!」。


 ところが、最終コーナーで悲劇が起こった。


 周回遅れの科学部の男子が駿の5メートルほど手前で転び、避けきれなかった駿も転んでしまったのだ。 

 すぐ後ろを走っていた陸上部と野球部が脇を通って抜いて行く。


 膝から出血したまま駿が立ち上がって前の2チームを追うが、少々距離ができてしまっている。


 結局その順位のままでゴールとなった。


 最後はアンカー大介が野球部をぶっちぎって、陸上部が3年連続優勝で幕を下ろすという下馬評どおりになった。


 雫たち茶道部は過去最高の5位で、来年度の部費5%アップを勝ち取ることができたのだった。


 表彰式が終わると、最後のストレッチ体操を待たずに美玲と駿が医務室のほうに歩いて行くのが見えた。

 かなり出血しているようだ。

 駿が転倒する原因になった科学部男子は擦りむくことすらなかったのに。


 雫も「これにて東川北学園中等科、高等科合同学園祭を終了する」という学園長の言葉を聞き終えてすぐに医務室に走った。


ー大丈夫かなあ。




 駿の両膝からはかなり出血しているように見えるが、傷は大したことなく、美玲が消毒液を含ませたコットンで拭き取ると、既に血は止まっていた。


「ねえ。雫と北原先輩って本当に仲が良いよね」


 2人きりの医務室で唐突に嫌な話を振って来た。


「そうみたいだな。仲は良く見えるよな」

「駿って、まだ雫のことが好きなの?」


 美玲が傷薬を塗りながら尋ねる。


「幼馴染みだからな」


 抑揚のない口調でさらりと答えた。

 ここで認めるのは危険だと頭の中で警告音が鳴っている。


「私にはわかるんだけど、幼馴染み以上の関係じゃないの?私の事より好き?」


 膝にガーゼを置いて、サージカルテープで固定する。


「生まれた時からのつき合いだからな」


 再びさらりと流す。

 まだ早い。


「じゃあ、北原先輩とつき合ってても平気なわけ?なぁんだ、結局、その程度の想いなんだ」


 これは駿が警告音を無視するに十分な挑発だった。


「平気なわけないだろ?ああ、好きだよ。大好きだよ」


 声を荒げて認めてしまった。

 ただ、もう少し我慢すれば良かったのに、この言葉を雫に聞かれてしまったのだ。


「私も好きだよ」


 美玲のこの言葉で雫の足が震えた。

 駿の「好きだよ。大好きだよ」、そして美玲の「私も好きだよ」。


 全身の力が抜けて医務室の扉から手を離した。


ーもう駿の怪我の心配をするのも、薬を塗るのもわたしの役目じゃないんだ。


 改めて思い知らされた雫は、ゆらりゆらりと空気中を漂うように、学園祭の後片付けをしている茶道部の茶室に向かったのだった。




「美玲の気持ちは知っているし、いつも世話をしてくれて有り難いと思ってる。だけど、恋愛感情はないんだ。ごめん」


 これ以上曖昧にすることはできないと、この場ではっきり告げた。


「そんなこと分かってるよ。わかってるけど、私は駿が好きだし、振り向かせる自信もあるの。

 だって、私のパパは次の選挙で国会議員になるんだよ?久賀建設にとっても、大河内屋より役に立つじゃない」


 それを言われると「久賀建設」が人質に取られているようで、何も言い返すことができない。


「だから、今、結論を出さないで、もうちょっと私にもチャンスちょうだい。いいでしょ?」


 駿はこの前聞いた両親の不穏な会話のこともあって、それ以上美玲を刺激しないほうが良いと判断した。


「わかった」


 駿のそのひと言で美玲の顔がぱあっと明るくなった。

雫の「恋人役」は順調にいくのですが…。

なにやら不穏な空気がついに!

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