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キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


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学園祭は戦場です 3

 そのころ駿は「サッカー部 たこ焼き 美味い!」と書かれた派手なプラカードを持って、後輩と学園内をブラブラ歩いていた。

 たこ焼きはやっぱり人気があって、こちらから声をかけなくてもプラカードを見つけた学生のほうから買いに来てくれる。


「久賀先輩。この調子じゃ、あと少しでノルマ達成っすね」


 早く自分も他のブースを回りたい後輩の声が弾んでいる。


「そうだな。残り・・・16枚?早く捌いてしまおうぜ」

「先輩、あの女子のグループ行きましょうよ」


 前方に7、8人の女子が手芸部の「占いの館」に並んでいるのが見える。


「たこ焼きどう?」


 予想的中で8枚と、その前に並んでいた男女2人、合わせて10枚を売ることに成功した。


「カップルでもたこ焼きを食うんですね」

「そりゃあ食べるだろ?」

「ブースに戻ったら、『カップルにはサービスで青のり増し増し』って…」

「あほか!」


 駿と後輩が大笑いする。


「先輩、あと6枚っすよ」


 駿は他に大きな集団がいれば、一気に売り捌けると思って辺りを見渡すと、ちょうど雫と大介が笑い合いながら歩いている光景が視界に入って来た。


ー東京に本命がいるクセに。


 プラカードを握る手に力が入り、無意識に険しい表情を浮かべている。


ー今だけだからな、雫の隣で笑ってられるのは。


 その時、先ほど言った後輩の「青のり増し増し」が頭を過った。


ー北原先輩にチケット買わそうかな。


 慌てて打ち消した。


ー雫が食べるたこ焼きはオレが持って行くんだ。・・・あ、青のり抜いてやろう。


 気持ちを鎮めて再び笑顔を作る。

 それでも2人から目を離せずに追っていると、教師が大介に近づいて何か言った。

 大介が何度か頷くと、雫に謝る仕草をしてから教師と一緒にそこから立ち去ったのだった。


 1人残された幼馴染みに「雫」と呼んで笑顔で手を振る。

 そして呼ばれたほうもそれに気付いて駆け足で来た。


「あら、チケット売り?似合ってるじゃない」

「うん。1時からのお茶席のチケットある?雫は1時の席の当番だったよな」


 雫はポケットから「13時 お茶席 300円」と書かれたチケットを1枚取り出して、「お買い上げありがとうございます」と言って渡した。


 これは朝に約束した分のチケットであり、駿に渡すつもりで持ち歩いていたのだ。

 300円をしっかり受け取ると、「じゃあ、たこ焼きをお昼にしたいから、早めに持って来てね」とそっちの分も念押しして微笑んだ。


「わかった。30分前には茶道部に行くよ」


 12時30分に茶道部にたこ焼きを届けて、13時から雫が点てたお茶と和菓子。

 「最高じゃないか」と横にいる後輩には聞こえないように呟く。

 自分のたこ焼きも持って行って一緒に食べようか、とも考えたが、ここはガツガツ行くところではない、と一歩引いて、せめて愛華の分と合わせて2つ持って行くことにしたのだった。


「残りのうちから2枚、オレが買うから」


 後輩に400円渡して、「これは雫に会うための大切な道具」と内ポケットに仕舞った。


 時計を見るとまだまだ時間があるが、絶対に12時30分には茶道部に行って、13時の席の主客をゲットしなければいけない。

 亭主が点てたお茶を口にできるのは主客だけで、残りの客はつい立ての裏で他の部員が点てたものをいただくシステムになっているのだ。 

 そうしなければ時間内に終わらないからである。


 さすがに30分前に行けば主客になれるだろう、と気楽に考えていたが、とんでもない事態に巻き込まれてしまうのだった。


 それを知るのは1時間ほどしてからのこと。


 何とかたこ焼きのチケットを捌いてサッカー部のブースに戻ると、2つ隣のあの「ベビーカステラ」のブースが黒い煙に包まれているではないか。


「どうしたんだよ、これ」


 サッカー部のブースは難を逃れているが、隣の「きつねうどん」のブースはしっかり甘い煙を被って、エライことになっていた。


 ベビーカステラを一気に大量に作るために持ち込んだ「たこ焼きプレート」のほとんどの台から、溶けたチョコレートが焦げて甘い甘い煙が上がっているのだ。

 煙を消すために、男子部員がホットケーキミックスの液を更に上から被せてしまった。

 それが悪かったのだ。

 隙間から漏れたチョコレートと混ざって更に焦げ、溢れたチョコレート混じりの液がテーブルにこぼれたりして、文字通り「地獄絵図」になっていた。


 そして、煙を被っていないはずのサッカー部のブースからも焦げた匂いがし出したのだ。

 焼き当番の安則と知世子が「ベビーカステラ」のブースの惨事に気を取られて、手元のたこ焼きを焦がしてしまったのだ。

 こちらはスルリと取り除いて何とかなったのだが、昼食にと並んでいた学生の列がどんどん長くなってしまった。


 時計を見ると、もうそろそろ茶道部に行かなければ間に合わない。

 駿は時計と、まだ焼けてないたこ焼きと、並ぶ学生の列を交互に見て、絶望の溜め息を吐いた。


 「早く焼き直さなきゃ!」と焦るサッカー部。

 「こんな焦げた甘い匂いのきつねうどんは食べにくい」と苦情の野球部。

 「返金します!」と叫ぶベビーカステラのバドミントン部。



 待てど暮らせどたこ焼きが届かない雫は、結局昼食抜きで13時からのお茶席に臨まなければならなかった。


 そして、その席に駿が来ることはなかった。

次回は、学園祭2日目。

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