表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/46

学園祭は戦場です 2

 茶道部では、雫が持って来た「秋の落雁」を皆で覗き込んでいる。

 紅葉や松茸、栗や銀杏を模った和菓子が箱にびっしり詰められているのだ。

 部員たちが「可愛い」とか「食べるのもったいない」と口々に言うが、「今なら1つ、味見していいよ」と告げると、何の迷いもなく好きな物を選んで、パクッと口に放り込んだのだった。


 お茶席は一連の流れがあるために、9時から奇数時刻に各回5名定員と告知していた。

 8名の部員のうち6名が担当して、残りの2名は他のブースを見て回れるように当番制にしてある。


「さあ、今日と明日、頑張ろうね」


          *          *


 雫のおかげで気持ちが晴れた駿も、彼女が立ち去ってから数分後、学園祭会場に向かった。

 いつの間にか、あくびも止まって眠気も感じない。


 雫が考えた文章が正解かどうかはわからない。

 それでも「雫が言うのだから」と思えば、それだけで正解だと確信できた。


ーやっぱりオレを支えてくれるのは、雫しかいないよな。


 改めて雫との関係を「幼馴染み」から「恋人」にするんだ、と心に誓った。



 駿がサッカー部のブースに行くと、既に知世子の指示で材料が刻まれ始めていた。

 柳田商店では、たこ焼きの店頭販売をしているため、実際に焼いている知世子の指示は的確である。


 「キャベツはできるだけ細かく、大きさを揃えてね」とか、「ネギはもっと細かくして」とか「1パック200円のたこ焼きなんだから、タコはもっと小さく切らないと足りなくなるよ」と、日ごろ包丁を握らないであろう後輩男子に声を張り上げている。


 「たこ焼き」は毎年売り上げが大きく、事前に抽選する「模擬店争奪戦」でも1番人気なのだ。

 それを今年はサッカー部が得たので、皆張り切っている。

 売り上げが大きい分、揃える材料の量もハンパなかった。


 その時、「やっばーい!天かすが全然足りないわ」と知世子が叫んだ。


「安く~ん。藤倉Tティーチャーに車出ししてもらって、ウチに取りに行って!連絡入れておくから」

「オッケー」


 仕事をもらって生き生きしている安則は、早速藤倉先生を探しに行った。


「オレと春紀は何かすることある?」


 駿は、後輩男子の作業をただ眺めているー本人は監督のつもりらしいー美玲に尋ねた。

 ただ立っているだけでは居心地が悪いのだ。


「そうねえ。今はまだないかな?9時になったら駿と春紀は手が空いてる男子を集めて、この看板を持って学園中を歩き回って来てよ。それでチケットを全部売って来てくれると助かる」


 そう言えば、そんな役割があったような…。

 駿は春紀と「それまでは隅で大人しくしてようぜ」と頷き合った。


 隣の野球部のブースは「きつねうどん」の模擬店で、油揚げを甘く煮付けている匂いが堪らない。


 そのむこうはバドミントン部で「ベビーカステラ」である。

 ここからもまた甘い甘い匂いがもう暫くすると漂ってくるだろう。


ーベビーカステラは、ホットケーキミックスを混ぜて焼くだけだから楽だよな。


 などと安易に考えながら眺めている。

 中にあんこやチョコを入れるとは知らなかった。

 あんこのほうは良いが、チョコレートが熱でドロドロに溶けて、焦げたチョコレートの何とも言えない臭いで大惨事になるのは昼前のこと。


 そうやって周囲を観察していると、まさに匂いだけ嗅がされるのは拷問的な「やきとうもろこし」の焦げた醤油の匂いが漂ってきたのだ。

 どうやらバレーボール部の女子が、早朝から登校している自分の所の部員のためだけに朝食として焼いているようだ。

 「ズルいぞ!」「俺らにも食わせろ!」などと怒号が飛び交い出した。


 今年も賑やかな学園祭がこうして幕を開けたのだった。


          *          *


 9時から始まる第1席目のお茶席に、大介が同じ陸上部の秋本を連れてやって来た。 

 いつも部活終わりに余った和菓子を貰いに来ているので、早々にチケットを買って来てくれたのだ。

 2人とも3年生で、学園祭に積極的に参加しなくても許されるのだが、「今年最後だから」と日頃の受験勉強を忘れて後輩と楽しむ学生が多かった。


 多少の経験者である大介が主客になって正座で待つ。

 もちろん、雫が点てるとわかって来ているのだ。


 正式なお茶会ではないために制服姿ではあるが、流れるような所作は美しく、静かな空間で点てられたお茶は芸術的な産物に思えた。


 「結構なお点前でした」と言って手を突いて頭を下げる大介もまた、自然な振る舞いであった。

 雫はニコリと微笑んでつい立ての向こうに消えて、1席目が終了となった。

 この当番が終わると、13時のお茶席まで自由行動ができる雫は、約束していた大介と学園祭を回ることにした。


 この後は大介が所属していた陸上部の「体力測定」のブースに行くことが決まっている。

 運動関係の分野にはめっぽう自信がない雫は、「わたしは見るだけですよ」と言いながら付いて行った。


 すると黒板に書かれている種目は「握力」「垂直飛び」「立位体前屈」の3つだけだったのだ。


ーおや? これなら運動オンチのわたしでも全然大丈夫じゃない?


 と途端に余裕の笑みを浮かべ、「先輩、やっぱりやらなきゃ、楽しめないですよね」と言った。


「そうだよ。これは運動とは関係ないから大丈夫、大丈夫」


 安心した雫は、ひとつ目の「握力」のコーナーに向かう。

 ぎゅうっと力いっぱい握ってみたものの、バーが大きく動いた感じがしない。


「21.5キロ」


 そんなものか、と思って前の黒板に書かれた「高校生運動能力標準値」という表で高校2年生の欄を見ると、「女子 平均値26.46キロ」とある。

 そして雫に続いて器具を握った大介は「49.9キロ」と告げられた。

 高校3年生男子の平均は42.89キロなので、それを大きく上回っている。


 こんな調子であと2種目をしたが、雫が平均値をクリアできたのは「立位体前屈」だけだった。

 それでもその値が平均値を大きく上回り、見ていた周囲の学生から「おおー!」と溜め息が聞こえて、少し鼻が高かったのだ。

次回、学園祭でとんでもない大惨事が起こります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ