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キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


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学園祭は戦場です 1

 今日と明日の2日間、学園祭で楽しいはずなのに、駿は夕べ聞いた両親の会話の所為でほとんど眠ることが出来ず、寝不足状態で自転車を漕いでいる。


 夜中トイレに起きた時、両親の寝室から話し声が聞こえたのだ。


「・・・遠山議員・・・500万円・・・入札・・・有利・・・危ない橋・・・」


 はっきり聞き取れたのは、この5つの単語。

 一瞬で尿意も吹き飛んでしまった。


ーどう考えてもヤバい話じゃないのか?


 駿は音を立てないようにその場を離れてベッドに潜り込んだ。

 そして5つの単語を並べて文章を作ってみる。

 聞こえた単語をそのまま並べるだけでも恐ろしい文が完成する。


ー『遠山議員』に『500万円』渡して『入札』価格を教えてもらって、『有利』に進めよう。ただし、これはかなり『危ない橋』だ。・・・そんなところだろう。


 一度作った文章でイメージができてしまうと、他の文が浮かんでこない。

 冷静に考えれば何とでも作れるのに、だ。


 自分が尊敬する両親が、美玲の父親に賄賂を渡しているという事実に愕然とし、情けなくて涙が出てきた。


ー恥ずかしい。・・・いや、このことが明るみに出たら、逮捕されるかも知れない。『久賀建設』はどうなる?


 そんなことを考え始めたら、どう頑張っても寝付けるはずもなく、結局その後はベッドの上で身体の向きを変えながら起きていたのだった。


 「おはよう」と言う朝の挨拶ですら返したくないほど両親が汚く感じる。

 「学園祭の準備があるから」と言って牛乳だけ飲むと、ろくに会話することなく家を出た。


 あくびをしながら自転車を漕いでいると、危うく校門にぶつかりそうになった。


ーまあ、今日と明日は学園祭だから、どこかでボーッとするか。


 一度、目を瞑ると寝てしまいそうなくらい眠い。

 とても、たこ焼きを作れそうになかった。

 取り敢えず顔だけ出して、部室でサボろうと考えた。


 東川北学園の学園祭は中等科と高等科が合同で11月の第1週に2日間開催される。

 クラス単位ではなく、クラブごとに出し物をするのだ。

 雫の茶道部はもちろん「和菓子とお茶」を振る舞い、駿のサッカー部は「たこ焼き」を、大介の陸上部は「体力測定」である。


 2日目の最後は「学園際締めくくり」としてクラブ対抗リレーが予定されていて、部員が少ない茶道部には助っ人として男性講師が3名入ってくれる。


 1日目の朝は準備のために全員始発に乗って登校してくる、という力の入れようである。

 まだ、太陽が完全に顔を出していないのに、学園は賑やかなお祭り状態になっていた。


 「たこ焼き」のブースに向かう途中、駿のスマホが震えた。


   ”今すぐ、図書館裏”


 雫からの緊急呼び出しである。

 一気に眠気が消える。

 呼び出される理由に思い当たることはないが、雫から呼ばれれば、例えシュートの体勢に入っていても駆け付けるのが駿である。


 一直線に向かった。


 図書館の裏は雑草が中途半端にしか刈り取られてなく、レンガや瓦が無造作に置かれているので誰も来ない。

 古い本が置かれている書庫に行く扉があるが、鍵がかけられていて、最後に開けられたのはいつか、きっと誰も知らないだろう。


 そこに駿を呼びつけたのは、美玲や知世子に駿と会っているところを絶対に見られたくなかったからだ。

 息を切らせて駿がやって来た。


「どうした?」

「どうした?って聞きたいのはわたしのほうよ。今朝、酔っ払いが自転車に乗ってるのかと思うくらいフラフラだったじゃない。校門に激突しそうになってたし」


 確かに。


「それで、寝てない理由は何?まさか、学園祭が楽しみで眠れなかった、なんて幼稚園児みたいなこと言わないよね」


 駿は彼女が自分を意識してくれて、心配してくれて、話を聞こうとしてくれていることが嬉しかった。

 「朝は迎えに来ないで」と言われてから数か月も経つ。

 でもこうして気にしてくれている、そう思うと、ちゃんと話すべきだと思った。


「うん。雫だけには聞いてもらいたい。実は…」


 そう言って、夜中に聞いた「遠山議員、500万円、入札、有利、危ない橋」と言う5つの単語を伝え、自分なりの推理も話した。


 それを聞いた雫は右の拳を顎に当てて、「う~ん」としばしのシンキングタイムに入った。


「ねえ、こういうのはどうかしら?『遠山議員から、500万円で入札価格を聞き出して有利になろうとした業者がいるみたいけど、そんな危ない橋を渡った業者はどこだろう』っていうのは?」


 駿の推理だと両親はクロで、雫のだとシロである。

 天と地ほどの差だ。


「わたしは久賀のおじさんとおばさんを良く知ってるけど、絶対に、絶対によ、悪いことをするような人じゃないよ」


 自信満々に雫にそう言われると、駿もそんな気がしてきた。

 何度も彼女が組み立てた文章を口に出してみる。


「なんで親を疑ったんだろう。オレが信じなくてどうすんだよ、なあ雫」


 どんどん元気になってくる。


「ただ、どっちにしても犯罪が絡んでることだろうから、駿は知らないフリをしなきゃダメ。きっと、わたしたち『子ども』が首を突っ込んでいいレベルの話じゃないよ。今はおじさんたちを信じて」


 雫が駿の目を真っ直ぐに見て頷く。


「ありがとう。雫に打ち明けて良かったよ。凄く気が楽になった」


 駿のその言葉に雫は満面の笑みを浮かべた。


「じゃあ、お礼に、たこ焼きを持って茶道部に来てね。お茶と和菓子のセットで300円だから」

「わかった」


 雫は右の手の平で駿の胸をトントンと軽く叩いて、「じゃあ先に行くね。駿も頑張って」と言って小走りで行ってしまった。


 残った駿は、雫が触れた胸に手を置いて「ありがとう」と呟いた。


          *          *

次回、学園祭スタート!

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