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キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


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学生ですからテストは大事 4

 東川北学園ではテスト期間が終わって日常が戻っている。

 駿がサッカー部の活動をするように、雫も茶道部でお茶を点てる。

 茶室の静かな空間は昂った気持ちを鎮めてくれた。


 茶筅でカシャカシャと茶を点てて、最後に「の」の字を描くようにして表面からそっと外す。

 表面に細かい泡ができ、中央が少し盛り上がった。


ー今日も綺麗に点った。


 上手く点つと気持ちが良い。


 今回の定期テストで9位だった愛華が部活終わりに隣に来て肩を寄せる。

 そわそわ嬉しそうだ。


「雫に報告。三井君とつき合うことになりました!」

「えっ!三井君って、あの?花屋の息子さんの?青蘭高校の?」


 愛華は生け花も習っていて、その練習のために花を買いに行くのだが、そこの息子に一目ぼれをしたのである。

 ところが、雫と同じで自分から異性に声をかけるなど出来る性格ではないため、挨拶するのが精一杯なのだ。

 できれば「友達になってもらえませんか?」くらいは言いたい。

 そんな愛華に、何度も雫が「がんばれ」と励ましてきたのだ。


 自分にはそんな勇気がないのに、愛華に対しては「言わなきゃ後悔するよ」とか「むこうだって、愛華のこと好きかもしれないよ」などすらすら言えるのだ。


 そしてついに、愛華が勇気を出して告白し、恋が叶ったというわけである。

 愛華の想いをずっと聞いてきたので、雫も自分のことのように嬉しかった。


「良かったね。また詳しく聞かせてよ」

「うん。私、すごく頑張ったんだから!」

「わかる、わかる。えらい、えらい」


 そう言って愛華の頭を撫でた。

 学校は離れているが、愛華の家と花屋は近いので、しょっちゅう会えるのだと言う。

 愛華の嬉しそうな顔を見ていると、家に帰ったら駿に雷を落とさなければいけないのに、すっかり温かい気持ちに包まれてしまった。



 その後、いつも通り大介を迎えに図書館に行った。

 テスト期間が終わると、図書館は大学受験を控えた3年生がほとんどになっている。

 真剣に問題を解く大介の隣で、雫は「国語便覧」を読んでいた。

 大介から、「これはどこを読んでも勉強になる」と紹介してもらったのだ。

 国語と古典の副教材であるが、中に書かれていることは「他の参考書の何冊分にも値する」と言われるだけあって、読んでみると確かに学校の勉強にも受験勉強にも役立つものだ。

 「ほとんどの人が十分に役立ててないのが勿体ない」と大介は言う。

 雫のはまだ綺麗な状態であるが、大介の便覧は既にボロボロになっている。


「わたしもそれくらい使いこなしたいわぁ」



 大介と帰る道中で、互いに定期テストが1位だったことを称え合った。

 彼は『彼女』からご褒美をもらえるのだと言って嬉しそうにしている。


「ご褒美って何でしょうね」

「1番欲しいのは写真だけど、家族に見つかるとまた迷惑をかけるから、それは強請れないんだよな」


 以前、遊園地の観覧車でキスをしている自撮りの画像を、父親に見つかってしまったことがあった。


 北原家では、父親が絶対君主であり、大介だけでなく兄も、母親でさえ口答えすることは許されないのだ。


 機嫌が悪いと、「歯科医師」の顔の時からは想像できないくらい豹変する。

 そして、父親が「検閲」と称して抜き打ちで兄と大介のスマホやパソコンのデータを見るのだ。


 上手く隠せれば良いが、万が一隠したことがバレれば、母が罵倒される。

 母を守るためにも、高校生になった時から始まった父の検閲に対して、正直に「どうぞ確認してください」ということになっているのだ。


 そして、観覧車での「自撮りキス」をもう少し見ていたいから、と言う理由で家に帰るまで消去しなかったのである。

 いつもならそんなヘマはしない。

 相手が同じ画像を持っているのだから、家に入る前には「今回も諦めるか」と言って消すようにしていたのに。

 初めて一緒に出掛けた嬉しさから、なかなか消去できなかったのだ。

 いつも貰う写真は送られてくるもの。

 それも見たらすぐに消去してきた。

 今回のは初のツーショットだ。


 運が悪かった。


 その日は父の機嫌が悪く、大介が家のドアを開けた時に、兄の成績が「少し」悪かったという理由で母が叱られていたのだ。


ーマズい。


 その予想は的中した。

 案の定、その場でスマホを取り上げられた。

 電源を入れた時に現れた画像が、「アレ」だったのだ。


 父の顔が見る見る青くなり、次に赤くなった。


ー殴られる。


 そう思って歯を食いしばったが、父が「相手をここに呼べ」とぞっとするくらい低い声で言ったのだ。


 首を振って抵抗する大介。

 しかし、父は相手の顔を覚えていた。


「大学に言うぞ」


 そのひと言が全てだった。

 泣きながら電話をすると、タクシーを飛ばして来てくれた。


「お願い。父さん殴らないで」


 目の前で土下座している相手に言った父のひと言。


「二度と大介の前に現れるな。1度だけ見逃してやる」


 相手は既に覚悟を決めていた。

 涙ひとつ見せない相手と、泣きじゃくる大介。

 父との約束は破れない。



 今、大介のスマホには雫とのツーショット写真が溢れていた。

 この前送った雫の着物の写真を待ち受け画面にしている。

 絶対に、二度と、ミスはできない。


 だから、夜中に15分だけのビデオ通話でも、相手の名前は「雫」である。


 とにかく、今は『彼女』がいる京都医療大学に合格することだけを考えて、必死で勉強しているのだ。


「もし、先輩の家に置くのが危険な物でしたら、いつも通りわたしが預かりますからね」


 雫の部屋には「彼氏の大切な物」というBOXがあって、数通の手紙と小物が大切に保管されている。


「ありがとう。すごく助かるよ」


          *          *


次回、雫が大爆発します。その時、駿は?

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