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キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


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学生ですからテストは大事 3

 「伯父さん、お疲れ様です」と言ってビールを注ぐ。


 その後は父と彰が店の話を始めた。


「池尻の新店舗は地下1階のほうが良いか?」

「そうですね。地下2階は酒類と総菜ですからね。銘店の一角のほうが大河内屋としての格が合うと思うんですよ」

「じゃあ、地下1階で申請できるように図面を引いて、書類を集めとくよ」


 父と彰の話は、池尻駅前再開発に伴って建て替えられるステーションビルのことだ。

 現在のショッピングモールから高層のステーションビルになり、大河内屋も2号店を出店して、そこを彰に任せようと計画しているのだ。

 大まかな「再開発マスタープラン」は公表されて入札時期が近いため、決まり次第申請できるように、狙っている店はこうやって準備する。


 駿は3つめのコロッケを取り皿に運びながら「最近は再開発の話をよく耳にするなあ」と思って2人の会話に耳を傾けていた。


          *          *


 定期テストを3日後に控えた金曜日、サッカー部の部室にスパイクを取りに行った駿が、ドアノブに手をかけたまま動きを止めた。

 室内から美玲と知世子の会話が洩れている。


「大丈夫だって。私からパパに頼んであげるから。今はまだ市会議員だけど、次の選挙で国会議員になるんだよ?そのパパに頼めば『柳田商店』は1番良い場所に出せるって」

「ホントに大丈夫なの?」

「私と知世子の仲じゃない。新しいビルに何を入れるか、決めるのはパパなんだから。パパは私の頼みを断ったことないから、絶対に大丈夫」

「美玲大好き!美玲と友達で良かったぁ」

「でも、わかってるだろうけど、絶対に誰にも言ったらダメな話なんだからね」

「わかってる」


 そこまで聞いたところで駿はその場を離れた。


ー何なんだ、今の会話は。


 柳田商店というのは知世子の親が商店街に出しているスーパーだ。


ー柳田商店も池尻駅のステーションビルに入るってことだよな。それを知世子が美玲に頼んでたんだ。美玲の父さんがそれを決める権限を持ってるってことは、…オイオイ、「大河内屋」を締め出すこともできるってことじゃないか。


 それを頭に描いた瞬間、カシャンと駿の足に枷が嵌められ、その鎖を美玲に掴まれている気がした。


 実際、遠山議員にそんな権限はないし、娘が頼んだからと言ってどうこうできるものではないのだが、まだまだ未熟な高2男子には十分現実的に思える話だった。

 そして、常々「次の選挙で国会議員になる」と自信たっぷりに言う美玲の言葉には、妙に説得力があったのだ。


ー雫の家を守らなきゃ。大河内屋を守れるのはオレしかいないんだから。


 よくよく考えもせずに出した結論はそれだった。 

 そしてそのためにも美玲の機嫌を取って、極力雫に意識が向かないようにしなければ…と考えたのだった。


 常に「雫のためなら何でもする」と思って行動していることが、今回は裏目に出てしまう。


 定期テストの前日である日曜日は中等科の頃から毎回、雫の部屋で勉強確認と出題のヤマかけをしてきたのに、今回は駿から「ちょっと用事があって行けない」とメッセージが届いた。

 雫も深く考えずに「わかった」と返したが、後々激怒することになるとは。


 その日、駿がどこに行って、何をしていたか。

 隠したいことは意外にも簡単にバレるもので、テスト結果の順位が職員室前に張り出された時に、それは起こった。


ー駿が14位?


 上から1位、2位と名前が連なる中、「久賀俊」は14位の数字の後にその名が書かれている。

 今までどんなに悪くても4位だったのに…。


「さすが雫は1位死守だね」とか「安定の首位か!」とか口々に声をかけてもらうが、雫の中ではパニック状態だった。


ー今回はわたしから1位を獲るって言ってたのに?


 すると後方から「キャー!29位に名前があるぅー!」と喜びを爆発させたような美玲の声が聞こえてきた。


「良かったね。お父さんに褒めてもらえるんじゃない?」

「うん!」

「でも、駿くんは大きく順位を下げちゃったね。やっぱり風邪をひいた所為かな?」


 知世子のその言葉に思わず振り返る。


「駿、体調悪かったの?」


 全く知らなかったことを知世子に尋ねた。

 ところが答えたのは美玲だ。


「そう。日曜日に当日限定の『ニャッぴいのドーナツ』を買うのに並んでもらったの。雨が降ってたでしょ?濡れたまま並んでくれたみたいで…。メッチャ可愛いドーナツ、SNSに掲げたから見てよ」


 嬉しそうにベラベラと喋る姿に堪えきれなくなって、何も言わずに駿を探しに行った。


 雫の堪忍袋の緒がブチブチ切れる音が身体じゅうに響いている。

 怒り心頭でサッカー部の部室への道を走った。


 駿だ!


「駿!」


 叫ぶと同時に後ろから腕を掴む。


「あ、雫。どうした?」


 そのひと言で、雫の怒りが頂点に達したのだった。

 口を真一文字に結んで、鼻息荒く、顔は真っ赤に染まっている。


 雫のその様子で、何に腹を立てているのかすぐに察した。


「14位のこと?今回はマズったよな」

ーマズった?マズったですって??


 ひっぱたきそうになるのを抑えるために、両手を握りしめる。

 そして落ち着かせるために、大きく2度深呼吸をする。


「今日、ウチで晩御飯。わかった?」

「今日は雫の家じゃないだろ?」


 雫の鼻息が荒くなる。


「ウチで!! 今日!! 晩御飯!! わかりましたか!!」

ー雫って怒ってても可愛いな。


 目の前の幼馴染みを睨みつけ、震える声でゆっくり繰り返す。


「わかりましたよ、ね?」


 駿は怒られることすら喜びを感じて目を細める。


「承知いたしました。今晩、必ず伺います」


次回、大介の苦しい過去が少し明らかになります。

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