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キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


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学生ですからテストは大事 2

 2時間ほど勉強したところで、大介が「予備校に行く時間だから」と言って、片付け始めたので雫も同じように帰る準備をする。

 今夜は雫の家で晩御飯を食べてから一緒にテスト勉強をしようと約束しているので、焦って追いかける必要はない。

 キリの良いところまで勉強してから雫のところに行こうと決めて、今は集中する。



「夏季合宿の後はなかなか会えなくて、寂しくないですか?」


 駅まで並んで歩きながら「恋人同士には有り得ない会話」が続く。


「毎日15分だけビデオ通話してるから大丈夫」

「北原先生にはバレませんでした?」


 「北原先生」とは大介の父親で、北原歯科医院の医院長のことである。


「うん。寝泊りは予備校の寮だからね。『彼女』に会うのは夕食の時の1時間だけ。だから授業が終わったらダッシュで会いに行ってた。『彼女』の実家がこっちに近くて良かったよ。2週間毎日渋谷まで出てきてもらえたからね」

ーなるほどね。そこを駿に見られたんだ。

「わたし、ちゃんと先輩の役に立ってますか?」

「物凄く助かってる。登下校を一緒にしてくれてるおかげで、俺たちを見た患者さんが父さんの耳に入れてくれるんだ」

「良かったです」

「俺のほうは助けてもらってるけど、雫のほうは久賀くんと拗れてない?」

「わたしのほうも、美玲から嫌な思いをさせられることがめっきり減ってますから。駿は幼馴染みという感じで変わらず…ですね」


 雫と大介は2人だけの秘密の契約でつき合っていて、win-winの関係が崩れたら別れることになっているのだ。

 大介との「偽装恋人の役」は彼の大学合格と同時に終了するが、その後に美玲が再び雫を意識してくることはないだろう、と思っている。


 来年は大学受験の年であり、雫が目指す国立大学の薬学部は偏差値が高いので、美玲だけでなく駿にも構っていられない。

 余計なことに神経も時間も使えないのだ。


 ただ、駿が狙っている大学も雫と同じところだとは、まだ知らなかった。



「ただいま」


 玄関を開けると「おかえり」という久し振りの声が聞こえて来た。

 その声を聞いた瞬間に満面の笑顔で叫んだ。


(あきら)兄さん!」


 大急ぎで靴を脱いで、声の主がいる居間に飛び込む。


「帰って来てたんだ!すごい!」


 大河内彰は高校卒業後、菓子専門の学校に進み、雫の父が修行した和菓子屋を回って1年単位で技術を身につけている。

 「5年修行してこい」と父から言われ、その期間がいよいよ終わろうとしているのだ。

 修行が終わると「大河内屋」で伯父の後継として店に入ることが決まっている。


 雫と従兄の彰は9つも歳が離れていて、彼女がヨチヨチの頃から可愛がってきた。

 そして、駿も同じように可愛がってもらっていたので、彰を本当の兄のように慕っているのだ。

 今でも「俺が、雫と駿のオムツを替えてやった」と言って懐かしがる。


「雫、半年前より美人になったなぁ」

「でしょ、でしょ?…で、真琴(まこと)さんもいっしょ?」


 きょろきょろと見まわして彼女の姿を探した。

 真琴は彰と同い年の婚約者で、来年3月に入籍して式を挙げることになっている。

 今は看護師をしており、結婚と同時に辞めて店を手伝うと言っているのだ。


「真琴は年内は今の病院で働くよ。今夜は夜勤だから、挨拶をしに俺一人で来たってわけ」

「なぁんだ。真琴さんにも会いたかったな…。でも、もうすぐ帰って来るんだよね」

「ああ。飴細工の技術を5年かけて身につけてきたから、楽しみにしてて」


 彰は雫の父から、自分の専門外の「飴」を修得するよう言われていた。

 いろんなコンテストにも出品、出場して、何度か入賞するほどまでになり、胸を張って「大河内屋」に入る、ということだ。


「駿も元気か?」

「うん。今晩ここで晩御飯食べるから会えるよ」

「それは楽しみだな」


 彰は幼い頃からの雫と駿を見てきて、互いに好意を持っていることに気付いている。

 本来ならば駿のことで揶揄いたいのだが、雫が帰って来る前に、現在の2人の関係を母親から聞かされたためにそれが出来なかった。

 彰にも「そっと見守るように」と指示したのだ。


 雫が帰宅して、1時間後に駿が「ただいま」と言って「帰って」来た。

 駿が会いたがっていることを知っているので、雫は「彰兄さん来てるよ」とメッセージを送っておいたのだ。


「彰兄!お久しぶり」

「おお、こっちも半年で益々男前になったなぁ」

「彰兄は甘味の食べ過ぎで随分と恰幅が良くなったじゃん!」

「そこは気を使って『貫禄が出ましたね』って言うのが大人」


 元々陽気な彰が1人加わるだけで、いつもの雰囲気がガラリと変わる。


「そう言えば、もうすぐ定期試験だって?雫も駿もどうなんだ?」


 雫が大皿を順番にテーブルに運ぶ。

 それぞれの皿にはコロッケと野菜サラダ、ポテトとマカロニのサラダにローストビーフが山盛りにされている。

 今夜は「大河内家恒例、食べ放題スタイル」、いわゆるバイキング形式だ。


「わたしは何を出題されても大丈夫ってくらいバッチリよ」


 各自の取り皿も配っていく。

 それを彰と駿も「ありがとう」と言って受け取る。


「オレも多分、大丈夫。ついに雫を首位の座から引きずり下ろす時が来たかも。雫サン、覚悟しといてくださいよ」

「それはどうかな?首位の椅子は座り心地が良いから、誰にも渡したくないのよね」


 などと話が盛り上がったところで、仕事を終えた父が彰の隣に座ってビールの栓を抜いた。


次回、駿が雫のためにとった行動がふたたび…。

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