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キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


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学生ですからテストは大事 1

 頭の中の整理ができないまま駿は自宅に帰った。


 このところ、両親と晩御飯を一緒に食べることがほとんどない。

 住職が言っていた「池尻駅前再開発」絡みの仕事で、彼らは外食が続いている。

 大きなプロジェクトのため複数の企業が、計画案と見積もり、工期を出して入札を行うのだが、それは長期間の「戦い」であった。

 この入札によって、工事の主導権を握れるかどうかが決まるので、皆必死なのだ。

 駿は十分理解しているので、両親に「一緒に食べたい」「一緒に出掛けたい」などと言って困らせることは一切しない。


 両親が忙しくても、雫の家族がそれを埋めてくれる。

 駿にとっては大切な「家族」と同等のものだ。


 今日も、駿は雫の母親が持たせてくれた赤飯と筑前煮で晩御飯を1人で食べている。

 「駿くんも食べて行ったら?」と誘ってもらったが、今日だけは雫の負担になりそうな気がして丁重に断って帰ってきた。


「美味いな、この筑前煮」


 味が染み込んだ椎茸を口に放り込んで、思わず感想を漏らす。

 ぱくぱくと口に入れながら、ごちゃごちゃになっている脳内回路を整理していく。


ー雫につき合おうと言ったのは、北原先輩。でも先輩には、東京で見た年上の恋人がいる・・・恋人?

 どう見ても恋人だよなぁ。今にもキスしそうな感じで抱きしめ合ってたんだから、あれを「親戚です」と言われてもなぁ。


 夕方見た光景を思い浮かべた。


ーなんで恋人がいるのに、雫に告白したんだろう?公にできない関係だから? 不倫か?・・・いや、いや、相手の女性はどう見たって大学生くらいだったよな。大学生でも人妻っていう可能性はあるか…。

 凄い美人だったから、芸能人?モデル?だから公にできないっていうのは、アリか…。


 レンコンの穴に箸を差して摘まみ上げる。 

 いろんな可能性を考えてみるが、それと雫を彼女にする必要性が繋がらない。


ー雫は事情を理解した上で、つき合ってるって言ってた。二股じゃないとも言ってたなあ。大学合格まで?・・・ということは、北原先輩が合格したら、雫と別れるってことだよな?

 あと半年。卒業したら、東京の恋人とつき合うってことか?どう考えても、「半年だけ彼女でいて欲しい」なんて、雫に失礼じゃないか!


 だんだん腹が立ってきた。 

 レンコンを口に放り込み、シャリシャリと噛み砕く。


ー雫のことだから、オレが何を言っても大学合格まで付き合うだろうな。それなら、北原先輩を雫の「護衛」だと思えは良いじゃないか!

 東京に恋人がいて、それを承知で雫はつき合ってるんだから、まさか、雫に手を出そうなんてしないだろ。・・・あ、レンコンも美味いな。


 こんにゃくは少し苦手だが、今夜、雫も同じものを食べているのだと思うと、苦も無く口に入れることができた。


ーだからオレは、雫が間違って北原先輩のことを本気で好きにならないようにすれば良いんだ。・・・どうやって?


 この瞬間、遠い昔クラスメイトが言った「雫は恥ずかしがり屋だから、ガーッて肩を掴んでキスをしたらいい!」という言葉が甦った。

 今まで何度も雫にキスしたいと思ってきた。

 駿は左手を自分の唇に当ててみる。


「いやいやいやいや」


 彼女とのキスを妄想しそうになり、慌てて首を振って、その光景を霧散する。


ーそれだけはできない。


 あの時、クラスメイトの言葉を信じてシュウが雫の頬にキスをしてどうなったか?

 強烈なビンタとともに振られてしまったではないか!


 あれが、自分が事前にかけた魔法「キスした相手を雫は嫌いになる」の所為だとは信じていないが、実際に目の前でキスされた瞬間に雫の心がシュウから離れたのだから、「もしかしたら…」と恐ろしくて雫にキスなんてできない。

 駿は、あの頃にチビで貧弱な体型が、7年後にはモテるイケメンになるとわかっていたら、あんな呪いのようなことをしなかったのに…と後悔しているのである。


「クソッ」


 腹は立つが、大好物の「大河内屋の赤飯」はやはり美味しかった。


          *          *


 来週の定期試験のため、今週は全部活動禁止になっている。

 雫はいつものように図書館で勉強する大介の隣で問題集を開いた。


「雫、生物するの?」

「はい。先輩も生物ですよね。わからないところがあれば、教えてもらおうかと思って…」

「範囲は?」

「遺伝子とDNA、タンパク質の合成です」


 大介が雫の問題集を覗き見た。


「そこ、結構難しいよね。俺の復習にもなるから、遠慮なく聞いてくれていいよ」

「ありがとうございます」


 雫と大介の囁き声でのやり取りを、背中合わせの席を確保した駿が聞いている。

 雫と大介、それに彼のクラスメイト2人とでひとつの机を陣取り、駿は美玲、知世子、安則の4人でその隣の机でテスト勉強しているのだ。

 図書館ということもあって、いつもは「駿」「駿」とやたら好きな男子の名を呼ぶ美玲も真面目に勉強している。

 これ以上成績を落とすと家庭教師を雇う、と父親から脅されているらしい。


 駿もオール首席の雫に今回こそは勝ちたくて必死なのだ。

 大介が常に1位なので、自分も格好良く1位を獲りたくて仕方ない。


 東川北学園は1学年90名で、30位までが職員室前に張り出された紙に名前と点数が載せられる。

 だから皆、そこに名前が載るのを目標にして頑張っているのだ。


「ねえ、駿。ここの英語訳がわからないからノート見せて」


 隣の美玲が身体を寄せて耳元で囁く。

 「どうぞ」と言ってすっと彼女の前に差し出した。

 駿は大事なポイントを3色ボールペンで書き込んでいるので、どこがテストに出るかヤマを張りやすいのだ。

 このやり方は雫から教えてもらったものだ。

 だから、背中で勉強している彼女のノートも同じように3色で色分けされている。


 美玲はそれを3色のタックメモに写して、自分のノートにペタペタ貼っていく。

 ピンクのメモに「好き」と書いて、こっそりと駿のノートに貼ったことは、家でノートを広げた時に伝わり、あっさり剥がされたのだった。


 彼女は前回のテストで、名前が載らなかったのが理由と言うわけではなく、結果を見るのが嫌で仕方がないのだ。

 1位の雫の名前の下に2位の駿の名前が書かれているのが気に食わない。

 名前が並んでいるのは決して雫の所為ではないのに、許せないのだ。


 そんな美玲も、夏休み前から雫と駿が一緒に登校しなくなっているので、雫に対して嫌味な発言はめっきり減っていた。


 背中越しに大介が時々、雫に答えの解説をしているのを聞いて、駿に「雫と北原先輩って相変わらず仲がいいよね」とわざわざ教えるのだ。

 例の一件以来、2人が「いわく付きの恋人」であることを知っていても、気分が良いもんじゃないのに、余計なお世話だった。


「集中しろよ」


 駿にピシャリと言われて、やっとノートに目をやったのだった。

次回、懐かしい従兄が顔を見せてくれます。

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