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キスと魔法と××と~幼馴染みは両片想い!【嘘の魔法で7年間お預け状態。じれ甘恋物語】  作者: 静林


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平穏の後の胸騒ぎ 4

 東京に来れば何かわかるかも知れない、と思って来たのだが、まさかこんな事実を知ることになるなんて予想もしていなかった。

 そもそも何かを予想していたわけではなかったのだ。


 早い話が、「とにかく来た」だけだった。


 駿は片手にスマホを握りしめた状態でその場から一歩も動けない。


ーどうしよう。


 今見た光景を雫に伝えたら、間違いなくショックを受けるだろう。

 それでも黙っているわけにはいかない。


ー雫は騙されているんだ。


 まさか年上の彼女がいて、雫と二股…多分、年上の彼女が本命だろう。

 そんなことになっているとは…。


 暫くその場に立ち尽くし、少し冷静になったところで「とにかく帰ろう」と思って電車に乗った。


 何度か乗り換えて、桜木駅の車内アナウンスが聞こえてきた頃には、「やはり雫には本当のことを伝えて別れさせるべきだ」という結論に達していた。


ーちゃんと話そう。雫が傷付いて泣いたら、オレが慰めれば良いじゃないか。


 それはそれで雫を取り返すチャンスになるんじゃないか、と思った。


ーきっと、驚いて泣くだろう。そうしたら、「先輩と別れてオレとつき合おう。オレはずっと雫のことが好きだったんだから」って言ってやるんだ。


 そうシミュレーションしてみるが、やはり雫の泣く姿を見るのは辛い。

 できるだけショックを与えない言い方を考えてみるが、頭に浮かんでこなかった。



「あれ?駿くん。今日はウチで晩御飯を食べるんだったっけ?」


 大河内屋の前で雫の母と出くわしてしまった。

 今、駿は深刻な顔をしているに違いない。


「ちょっと出掛けてて…。雫いるかなぁ」


 雫の母もいつもの駿と様子が違うことを察知するが、追及はしない。


「部屋にいるから、上がって」

「お邪魔します」


 雫の部屋にはいつでもアポなしで行ける間柄なので、いつも通りに階段を上がるが、気分はどんどん下がっている。


 部屋の前で大きく深呼吸をした。


「雫。入っていい?」

「駿?いいよ、どうぞ」


 いつもの明るい声で、すぐに返事が聞こえた。


 神妙な顔でドアを開けたが、考えが纏まってない駿はそのまま立ち尽くしてしまう。

 半分、勢いでここにいるのだが、果たしてそれは正解だったのだろうか?

 今になって怖くなってきたのだ。


ー引き返せない。


 意を決して1歩足を踏み入れてドアを閉めた。


「どうしたの?怖い顔して。暑かったでしょ?何か冷たいものを持ってくるから、座ってて」


 そう言って部屋を出ようと動いた雫の腕を不意に掴んだ。


「雫。北原先輩はダメだよ」


 できる限り優しい声で訴えるように言う。


 雫は振り返って20センチ上の幼馴染みの目を見上げて、大きく溜め息を吐いた。


「またその話?わたしが誰とつき合おうと、駿には関係ないでしょ?」

「北原先輩はダメだ。雫は騙されてるんだよ」


 少し語気が荒くなってしまった。


「意味わかんない」


 雫は呆れたように頭を横に振った。

 駿の腕を振り払おうとするが、離す気はないようで、少々強く掴んでいる。


「オレ今日、東京に行ってて…北原先輩を見かけたんだ」


 わざわざ大介を探るために予備校まで行ったとは、さすがに言えなかった。

 その瞬間、息を呑む雫。


「先輩を?で、先輩の何を見たって?」


 雫の顔色が明らかに変わっていく。

 血の気が退いていくように赤みが消えていった。


「年上の女の人と…身体を寄せ合って…た」


 雫が俯いた。


「・・・れて」

「えっ?何?」


 聞こえるか、聞こえないか、小さな声で言う。


「見たことを全部忘れて。わたし、ちゃんと知っててつき合ってるから」


 雫の言葉に目を見開いて、次が出てこない。


「お願い、駿。今日見たことを、絶対に誰にも…先輩にも言わないで」


 再び見上げるその顔は、縋るような悲しそうな表情をしていた。


「なんでなんだよ。・・・雫。どういうことか、聞かせてくれよ」

「今は言えない。ううん。ずっと言えない。でも、わたし、騙されてるわけでも、二股を掛けられてるわけでもないから。先輩が大学合格するまでだから。だから、それまで、お願い。駿」

「大学合格するまで?」


 雫は黙って頷いた。


「好きでつき合ってるんじゃないのか?」

「好きだよ。そりゃあ、好意がなかったら、つき合わない」


 そこはきっぱり断言する。


 駿は意志が固そうな雫の瞳の奥を見て、「わかった」と言った。


「今日見たことを忘れるのは無理だけど、二度と口にしない。もちろん、口外しない。雫との約束は守るよ」

「ありがとう。・・・心配かけてゴメン」


 駿の胸に顔を埋めて「ゴメン。何も話せなくてゴメン」と繰り返した。


次回、納得がいかない駿は手も足も出せず…。

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